独立行政法人における契約は、おおむね、各部門からの調達要求に基づき、契約担当部門が取りまとめ、各法人の会計規程等の定めるところにより法人の長又は契約を行うこととして指定された役職員(以下、両者を「契約担当役等」という。)が契約を締結することとされている。各独立行政法人における契約事務の体制については、各法人の組織、事業の特性、予算規模等により大きく異なることから、単純な比較は困難であるが、契約締結事務に携わる法人本部の契約担当役等の実員規模でみると、20年4月1日現在、最小で1人、最大で35人となっている(法人別内訳は別表22
参照)。
各法人においては、随意契約の見直しにより、これまで随意契約により締結してきた契約について原則として一般競争契約等に移行することとしているが、これに伴い、法人によっては、競争入札を行うための公告、入札等の手続に係る事務量の著しい増加が予想される。
また、独立行政法人の中には、随契限度額を国の金額基準に合わせて引き下げた法人が多いが、これらの法人では、この随契限度額の見直しにより競争契約に移行することとなる契約が多数あると考えられる。そこで、随契限度額の見直しに伴う影響をみるため、19年6月以降に随契限度額を引き下げた26法人について、18年度の契約のうち、随意契約とした適用理由を法人の規定による少額随契(国の金額基準による少額随契は除く。以下、本項において同じ。)としている契約の件数をみると、表83のとおりである。
法人名
|
対象契約(A)
|
随意契約(B)
|
(B)のうち少額随契(C)
|
(C)/(A)
|
国立公文書館
|
87
|
63
|
25
|
28.7%
|
沖縄科学技術研究基盤整備機構
|
244
|
202
|
136
|
55.7%
|
情報通信研究機構
|
1,488
|
1,199
|
255
|
17.1%
|
平和祈念事業特別基金
|
66
|
55
|
9
|
13.6%
|
国際協力機構
|
3,517
|
3,456
|
185
|
5.2%
|
国立印刷局
|
1,733
|
1,231
|
482
|
27.8%
|
物質・材料研究機構
|
1,037
|
841
|
471
|
45.4%
|
防災科学技術研究所
|
500
|
418
|
181
|
36.2%
|
放射線医学総合研究所
|
839
|
675
|
356
|
42.4%
|
科学技術振興機構
|
6,662
|
6,361
|
1,127
|
16.9%
|
理化学研究所
|
3,510
|
3,031
|
868
|
24.7%
|
宇宙航空研究開発機構
|
5,710
|
5,443
|
1,644
|
28.7%
|
海洋研究開発機構
|
818
|
708
|
146
|
17.8%
|
国立高等専門学校機構
|
1,818
|
1,164
|
547
|
30.0%
|
日本原子力研究開発機構
|
7,057
|
5,667
|
1,917
|
27.1%
|
家畜改良センター
|
240
|
202
|
121
|
50.4%
|
農業・食品産業技術総合研究機構
|
2,806
|
2,365
|
716
|
25.5%
|
農業生物資源研究所
|
598
|
570
|
280
|
46.8%
|
農業環境技術研究所
|
192
|
183
|
65
|
33.8%
|
森林総合研究所注(1)
|
539
|
505
|
255
|
47.3%
|
水産総合研究センター
|
1,241
|
1,081
|
898
|
72.3%
|
日本貿易保険
|
80
|
79
|
22
|
27.5%
|
産業技術総合研究所
|
4,965
|
4,498
|
3,209
|
64.6%
|
製品評価技術基盤機構
|
363
|
210
|
121
|
33.3%
|
原子力安全基盤機構
|
881
|
480
|
112
|
12.7%
|
国立環境研究所
|
847
|
797
|
314
|
37.0%
|
注(1)
|
統合前の林木育種センター分の契約を含む。
|
注(2)
|
少額随契の件数については、国の金額基準によるものは除いている。
|
このような状況の下、各法人は、できる限り契約事務職員を増員することなく、契約に係る事務量の増加に対処するため、次のような取組を行っている。
〔1〕 複数年契約の活用又は一括発注の推進等による契約の合理化
〔2〕 仕様書や公告に係る様式の統一、入札執行日若しくは公告日の集約化又は電子入札の実施若しくは電子データでの資料配布等の契約事務の電子化等による事務処理の効率化・省力化
〔3〕 契約権限の委譲、契約部門の再編若しくは一元化、契約事務マニュアルの作成
又は職員の研修等による事務処理体制の整備
なお、上記に関して、20年4月1日現在で電子入札システムを導入済み又は開発中の法人は、表84のとおり、6法人となっている。電子入札については、談合防止、業務の効率化、入札事務の透明性の向上等に効果があるとして、今後導入に向けて検討中であるとしている法人もあるが、特に小規模な法人においては、費用の面での負担が大きいことなどから、現時点では導入を予定していないとしている法人が多い。
法人名
|
導入年月
|
導入した契約手続
|
19年度利用実績
|
情報処理推進機構
|
平成16年1月
|
競争入札、公募、公開見積合わせ
|
競争入札52件、公募98件、公開見積合わせ12件
|
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
|
17年1月
|
競争入札、随意契約
|
競争入札430件、企画随契等98件
|
国立高等専門学校機構
|
18年10月
|
競争入札、随意契約
|
競争入札220件、企画随契11件
|
都市再生機構
|
20年1月
|
競争入札
|
競争入札2件
|
石油天然ガス・金属鉱物資源機構
|
20年4月
|
競争入札、公募、公開見積合わせ
|
-
|
宇宙航空研究開発機構
|
20年5月予定
|
競争入札
|
(20年5月運用開始)
|
随意契約等の適正化に当たっては、事前、事後のチェックを徹底するなど、監視体制の充実強化を図ることが望ましい。そこで、随意契約とした理由の妥当性に関する各独立行政法人の事前の審査体制と内部監査の状況を検査した。
随意契約とした理由の妥当性に関する事前の審査体制については、20年4月1日現在で、101法人すべてにおいて、契約担当部門が通常の契約締結事務の決裁を行う中で審査を行っている。また、これに加えて、図16のとおり、48法人においては会計規程等に基づき設置された審査委員会等(政府調達に関する協定に基づく契約のみを審査するための委員会は除く。)が、23法人においては監査担当部門等が、17法人においては契約審査担当役などその他の組織が、それぞれ審査を行っているとしており、70法人が契約担当部門の審査に加えて審査委員会等の他の部門等による事前の審査を実施している。さらに、このうち17法人では上記のうち二つ以上の部門等で審査を行っているとしている(法人別内訳は別表22 参照)。
図16 契約担当部門とともに随意契約の妥当性に関する事前審査を行っている組織の状況
注(1)
|
金額基準により審査を省略する場合があるものを含む。
|
注(2)
|
〔2〕 の監査担当部門等には監事を含む。
|
20年4月1日現在の101法人のうち、19年度の内部監査において、随意契約の妥当性の検証に係る項目を監査項目として設定している法人は、53法人となっている。
また、内部監査の結果をデータベース化しているとする法人は34法人であるが、このうち全役職員が閲覧可能としている法人は18法人にとどまっている。
内部監査の結果は、一部の関係者だけの知見にとどめず、当該法人の他部門等における執務の参考とさせて適切な会計事務処理に資するようにすることが重要であり、そのためには、監査結果をデータベース化するなどして情報の蓄積と共有化を図ることが望まれる(法人別内訳は別表22
参照)。
独立行政法人が締結する契約内容の事後の公表については、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号)、「政府調達に関する協定」等に基づいて、各法人が公表項目、公表方法等を内部規程に定めるなどして公表するとともに、「公共調達の適正化について」(平成18年財計第2017号)において国が公表することを定められている契約に係る情報についても、国に準じて公表することが要請されている。
そこで、上記の根拠法令等ごとに、契約に係る情報の公表項目を整理すると、表85のとおりである。
根拠法令等
|
「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」
|
「政府調達に関する協定」
|
「公共調達の適正化について」
|
公表対象の契約
|
公共工事
|
特定調達契約注(2)
|
すべての契約(少額随契を除く。)
|
公表時期
|
遅滞なく
|
落札者等決定日の翌日から起算して72日以内
|
契約締結後72日以内
|
公表方法\公表項目
|
公衆の見やすい場所に掲示、公衆の閲覧に供する方法又はインターネット
|
官報により公示
|
ホームページにおいて公表
|
物品役務等の名称及び数量
|
○
|
○
|
|
公共工事の名称、場所、概要及び種別
|
○
|
○
|
|
契約担当役等の氏名並びにその所属する部門の名称及び所在地
|
○
|
○
|
|
入札参加者の名称
|
○
|
||
入札金額
|
○
|
||
入札参加資格
|
○
|
||
落札決定日
|
○
|
||
落札者
|
○
|
○
|
|
落札金額
|
○
|
○
|
|
低入札価格調査制度を適用した場合の経緯
|
○
|
||
総合評価方式により落札者を決定した場合におけるその者を落札者とした理由
|
○
|
||
契約を締結した日
|
○
|
||
契約の相手方の名称及び住所
|
○
|
○
|
○
|
契約の相手方を決定した手続
|
○
|
||
契約金額
|
○
|
○
|
○
|
工期(着手・完成)
|
○
|
○
|
|
入札公告日又は公示日
|
○
|
||
随意契約の理由
|
○
|
○
|
○
|
一般競争入札・指名競争入札別(総合評価方式の実施)
|
○
|
||
予定価格
|
○
|
○
|
|
落札率
|
○
|
||
当該独立行政法人の主務省と同一の所管に属する公益法人が随意契約の相手方である場合、当該法人の役員のうち所管府省退職者の再就職者の数
|
○
|
注(1)
|
「○」は、根拠法令等において、公表すべきとされている項目である。
|
注(2)
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「政府調達に関する協定」に基づく国、独立行政法人等の機関による調達のうち、現金及び有価証券を除く物品等又は特定のサービスに係る役務を調達するための契約で予定価格が一定金額以上のものをいう。
|
また、契約情報の公表方法をみると、根拠法令等によって、公衆の閲覧に供したり、官報により公示したり、ホームページに掲載したりするなどの違いがあるが、近年インターネットが広く普及しており、これを利用した情報の入手が一般的になっている。
そこで、各法人における契約情報の公表状況(20年5月末現在)をみると、別表22のとおり、ほとんどの法人においては、おおむね適切に公表されている。
しかし、理化学研究所及び国際交流基金では、前記の(3)イ(イ)でも記述した労働者派遣契約等について、関係部門間の連携を欠いたことなどから、これを公表していなかった。