防衛装備品の一般輸入による調達について、〔1〕 一般輸入を含めた防衛装備品調達全般の状況、〔2〕 一般輸入による調達の契約方法、契約手続、予定価格の算定などの状況、〔3〕 一般輸入に係る過大請求事案の状況及びこれに対する防衛省の対応策の実施状況について検査した。
検査の結果は、次のとおりである。
(1) 一般輸入を含めた防衛装備品調達全般の状況
17年度から20年度までにおける防衛装備品の調達額は毎年度約2兆円の金額で推移しており、このうち一般輸入は、5%から7%程度である。一般輸入調達の調達額は中央調達が370億円から764億円の間で、地方調達が617億円から833億円の間で推移している。また、一般輸入調達額を品目別にみると、航空機関係が過半を占めている。
(2) 一般輸入による調達の契約方法、契約手続、予定価格の算定などの状況
ア 一般輸入調達の取引態様
商社等の検査結果を基に一般輸入調達の取引態様を分類すると、〔1〕 商社等が外国製造会社との間で発注、納品及び支払をしている場合(Aタイプ)、〔2〕 商社等が外国製造会社の子会社等を経由して発注、納品及び支払をしている場合(Bタイプ)、〔3〕 商社等が外国販売代理店を経由して発注、納品及び支払をしている場合(Cタイプ)、〔4〕 商社等がその外国現地法人等を経由して発注、納品及び支払をしている場合(Dタイプ)となっている。また、21年次に会計実地検査を行った商社等9社の234件の契約について、上記の取引態様に基づいて分類すると、Aタイプ53件、Bタイプ14件、Cタイプ70件、Dタイプ93件、混合タイプが4件となっている。
イ 契約方式の状況
(ア) 契約方式については、中央調達においては、17年度は随意契約が件数で95.3%、契約金額で99.5%とほとんどを占めている。そして、財務大臣通知が発せられた18年度は、17年度と比べて件数では32ポイント低下しているものの、その後は徐々に増加して、20年度は94.6%になっている。また、地方調達においても、17年度は随意契約が件数で91.2%、契約金額で97.3%とほとんどを占めている。そして、20年度は件数、契約金額でそれぞれ15ポイント前後低下しているものの、高い割合になっている。
(イ) 随意契約の理由については、中央調達においては、17年度は契約相手方が日本における独占的販売権を有しているなどとして契約の性質等を理由としているものがほとんどであったが、18年度以降は、不落随契を理由としているものがほとんどを占めている。また、地方調達においては、契約の性質等を理由としているものが毎年度最も多くなっているが、この中には18年度以降は公募を実施したものが含まれている。
(ウ) 一般競争契約の応札者の状況については、中央調達においては、18年度以降の1者応札は67.5%から77.7%と高い割合になっている。また、地方調達においては、18年度の1者応札は44.4%であるが、19年度は80.9%、20年度は92.9%と高い割合になっている。
ウ 販売手数料等の状況
商社等の中には、外国製造会社等から品代に一定の割合を乗ずるなどして計算された販売手数料等の送金を受けているものが見受けられた。したがって、外国製造会社等が発行した見積書及び請求書の品代の金額に、商社等に別途支払われる販売手数料等相当額が実際には含まれている可能性があり、そのため品代が高く設定されている可能性がある状況となっていた。
エ 見積書の発行元の状況
防衛省に提出された一般輸入調達の見積書の発行元の状況は、中央調達については、各年度とも外国製造会社発行の見積書がある契約が7割を超えている。また、地方調達については、17年度から19年度までは外国販売代理店や商社等の外国現地法人が発行した見積書はあるものの外国製造会社発行の見積書がない契約で過半を占めていたが、20年度はその割合が低下し、外国製造会社発行の見積書がある契約が約6割となっている。
オ 請求書の発行元の状況
防衛省に提出された一般輸入調達の請求書の発行元の状況は、中央調達については、各年度とも外国製造会社が発行した請求書がある契約が7割を超えている。また、地方調達については、中央調達に比べると外国販売代理店が発行した請求書はあるものの外国製造会社が発行した請求書がない契約の割合が高くなっている。
カ 外国現地法人等の状況
商社等の外国現地法人又は商社等と資本上の関係等がある外国法人が外国販売代理店として価格設定を行い、商社等が防衛省に提出する見積書等を発行しているものも見受けられた。したがって、このような取引態様では、その価格を商社等の意向により設定することが可能な状況となっていた。
(3) 一般輸入に係る過大請求事案の状況及びこれに対する防衛省の対応策の実施状況
ア 一般輸入調達に係る過大請求事案の状況
(ア) 18年11月以降、一般輸入に係る過大請求事案が判明したことを受けて防衛省は、外国製造会社の見積書等の写しを当該会社に送付するなどしてその真正性の確認を行っている。21年7月までに公表された過大請求額は、富士インダストリーズ及び極東貿易についてそれぞれ6億円強、山田洋行について13億円強となっており、山田洋行及び極東貿易については防衛省において過大請求の調査を継続中である。
(イ) 会計検査院は、過大請求が判明した商社3社を含む16社について、会計検査院法第23条第1項第7号の規定により検査することを決定して、過大請求が判明していた契約及びその他の契約から任意に抽出した契約を対象として20年5月以降、会計実地検査を行った。
(ウ) 会計検査院が、前記の3社等に対して会計実地検査を実施したところ、防衛省において把握している山田洋行による過大請求について、支払請求額との相殺等の処置を執っていない事態が2契約について見受けられた。
(エ) 会計検査院は、防衛省による調査において未回答とされていた山田洋行に係る契約のうち外国製造会社に見積書等の真正性の確認が可能なものについて、外国製造会社に対し真正性の確認を行った。その結果、3契約について外国製造会社から、真正でないとの回答があり、合計30万米ドル以上の開差が生じていると認められた。
イ 一般輸入調達に係る防衛省の対応策の実施状況
防衛省は、一般輸入調達における過大請求事案を受けて、外国製造会社に対して、見積書等の写しを送付して、その真正性について直接問い合わせることとする通知を発出したり、特約条項の新設により見積書等の原本提出を商社等へ義務付けたりしている。また、現地価格調査の強化等を図るために輸入調達専門官の増員等の施策を実施している。
上記の検査の結果を踏まえ、防衛省においては、今後の防衛装備品の一般輸入による調達に当たっては、以下の点に留意することが必要である。
ア 調達の競争性
競争性が十分でないために、不経済な調達となることのないよう調達要求のあった製品に代替可能な他の製品があるか、当該代替品を調達した場合に運用上の支障があるかなどについて調達実施機関が調達要求元に確認を求めるなどして、競争性の拡大を図る必要がある。
イ 価格の妥当性
妥当な計算価格の算定に必要な情報が十分に得られないために、契約価格が国にとって不利なものとなることのないよう次のような措置を検討する必要がある。
(ア) 販売手数料等については、20年度から行っている商社等に対する輸入調達調査等において、商社等と外国製造会社等との間の契約に基づく業務内容及びそれに対する対価の授受の状況や見積書の品代の内容の状況把握に努め、これらを計算価格の算定において適切に反映させる。
(イ) 商社等と資本上の関係等がある外国現地法人等が価格を設定している場合については、輸入調達調査、現地商社等調査において、商社等及び外国現地法人等の業務内容を調査の上、その実態を把握し、外国現地法人等が設定した価格の妥当性を検証する。
(ウ) アメリカ合衆国その他の各国における同種装備品等の調達実績について、一層、正確な情報収集を期すことなどにより、適切な調達が行えるよう努める。
ウ 見積書等の真正性
過大請求事案について、その調査や処理を速やかに完了するよう引き続き努めるとともに、商社等が書類を改ざんすることなどによる過大請求が生じることのないよう、その再発防止のために、今後も商社等から提出又は提示された外国製造会社が発行した価格等証明資料を外国製造会社にその写しを送付して、その真正性を問い合わせるなどの対応策を着実に実施していく必要がある。
以上のとおり報告する。
会計検査院としては、今後とも、防衛装備品の一般輸入による調達が適切に実施されているかについて、多角的な視点から引き続き検査していくこととする。