航空自衛隊の事務用品等の調達に関しては、競争性、透明性及び公正性を確保し、談合の防止を図るとともに、経済的な予算執行を行うことが求められている。
今回、会計検査院は、航空自衛隊が発注するオフィス家具に係る入札談合が発生したことなどを踏まえて、入札談合が行われていたとされる17年度から20年度までの間とそれ以降の第1補給処における事務用品等の調達に係る入札・契約及び予算執行等について、特に会計経理の面からこれらが適切に実施されているか、防衛省において執られた改善の措置は適切かつ効果的なものとなっているかなどに着眼して検査したところ、次のような状況が見受けられた。
ア 17年度から20年度までの間において、装備品等の整備、維持等に係る経費の年度執行計画額と年度途中に把握された執行実績額との差額について、年度末に事務用品等の調達に毎年度継続して充てられている状況となっていた。これに関して、防衛省は、23年度予算を減額するとともに、民間競争入札により事務用品の調達を行うなど効率的、計画的に調達を実施していくこととしている。
イ 事務用品の調達には充てることができない予算科目が使用されていた事態に関して、支出負担行為の事務を委任されていた分任支出負担行為担当官である東京支処長は示達要求の事務に関与していないなど示達された限度額の内容の詳細について的確に把握しておらず、予算執行に当たって適正な予算科目を使用することについての支出負担行為による統制が必ずしも的確に行える体制とはなっていなかった。
ウ 落札率の状況については、入札談合が行われていたとされる17年度から20年度までの間のオフィス家具の平均落札率はいずれも高く、これ以降の平均落札率は著しく低下している状況が見受けられた。不自然な入札状況が見受けられたとされるOA機器については、17年度から20年度までの間に平均落札率が高い状況が見受けられたが、これ以降は新たな調達が行われていない状況となっていた。また、各メーカーごとの受注割合の状況については、入札談合が行われていたとされる各年度とも、オフィス家具における各メーカーごとの受注割合は大きな変化がない状況となっていた。OA機器のうちコピー機の受注割合に関しては、各年度とも特定の5社が全て受注している状況となっており、この5社の中には市場占有率が比較的高いとされているメーカーが含まれていない状況となっていた。
航空自衛隊は、今後、落札の状況に規則性はないか、受注シェアに顕著な傾向がないかなどの調達機関による自主点検及びこれらが適切に行われているかに重点を置いた会計監査等を行うこととしている。また、従来、各補給処の会計監査は、主として補給本部に置かれた会計監査官において実施されていたが、結果として防衛監察が行われるまでの長期間不自然な入札状況を発見できなかったことを踏まえて、実効ある会計監査を行えるよう態勢を整備することとしている。
エ 仕様書の作成に当たって、同等品とは認められない製品を同等品として記載したり、必要以上に詳細な性能諸元を記載したりするなどして、競争性、公平性等が十分に確保されていない状況が見受けられた。また、調達された製品の規格等が区々となっていて、経済性の面から検討の余地があると認められる事例が見受けられた。これらの事態に関して、航空自衛隊は、仕様書の記載要領を改正したり、民間競争入札において経済性も考慮した規格等を定めるなどして改善を図ってきている。
オ 2者以上から提出を受けることとされている見積資料について、1者のみから提出を受けている契約が多数あり、このうち見積資料を徴取した会社が実際の契約の相手方となっている契約が数多くある状況が見受けられた。
カ 違約金条項に基づく違約金の請求は現在手続中であり、損害賠償請求については損害の確定がなされておらず、入札談合により受けた損害の回復は、いまだなされていない状況となっていた。
防衛省は、今回の事案によって失われた国民の信頼を取り戻し、防衛省の使命・任務を全うしていくため、今後とも、調査報告書で明らかにした改善措置を的確に実施していくこととしている。ついては、改善措置の実施に当たっては、会計検査院の検査の状況も踏まえて以下の点についても確実に取り組むなどして、より効果的に実施していくことが必要である。
ア 任務の遂行に必要となる事務用品等の調達に当たっては、経済的な予算執行に資するため、特に、今回、民間競争入札の対象としていない事務用品等の調達についても、規格、必要数量、調達価格等について年度開始前から適切に見積もるなど計画的に執行するための調達手続等を検討し実施すること
イ 予算執行に当たって、適正な予算科目を使用することについての支出負担行為による統制が的確に機能するようにするため、支出負担行為に係る示達の内容の詳細を的確に把握した上で支出負担行為を行うこととするよう必要な体制等を改めて検討し整備すること
ウ 航空自衛隊において、会計監査等が監査を受ける者から独立した立場で効果的に実施される体制を強化することを検討するとともに、自主点検や会計監査等について実効ある取組として継続すること
エ 仕様書の作成に当たっては、改正された仕様書の記載要領を厳格に遵守するなどして入札参加者が限定されることなどがないよう競争性の確保を十分図るとともに、今回、民間競争入札の対象としていない事務用品等の調達に当たっても、省内で共有化することとしている仕様書の情報を的確に活用するなどして、調達する事務用品等の規格を合理的なものとするなど経済的な調達が行われるように十分留意すること
オ 契約部門において、調達要求部門が作成した仕様書等の妥当性等を的確に検証するためのマニュアルを作成したり、調達要求部門に仕様書の変更を求める際の基準を新たに設けたりなどして、契約事務の過程において調達要求事務をより効果的に牽制できる体制を検討し整備すること、また、予定価格の算定に当たり、見積資料による場合は2者以上から徴取することを徹底し、見積資料が1者からしか提出されない場合にはその理由等について確認するなど契約事務の過程において仕様書の内容についてより的確に検証すること
カ 違約金条項に基づく違約金の請求や損害賠償の請求を適切に行うことにより、速やかな損害の回復に努めること
会計検査院としては、上記の所見として記載した各事項や防衛省における入札・契約事務等に係る改善措置が適切に講じられ、当該措置に係る取組が効果的に実施されているかについて引き続き検査していくこととする。