23年3月11日、三陸沖を震源とする国内観測史上最大のマグニチュード9.0の巨大地震(以下「東北地方太平洋沖地震」という。)が発生した。この地震により、宮城県北部で震度7を観測したほか、東日本を中心に北海道から九州地方にかけて広い範囲で震度6強から1を観測した。また、福島県で9.3m以上の津波を観測するなど、東北地方から関東地方北部までを中心に、太平洋沿岸の広い範囲で津波を観測した。さらに、同日、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)においては、全ての交流電源が失われ、冷却機能を喪失したことにより、大量の放射性物質が放出されるという重大な事故が発生した。政府は、東北地方太平洋沖地震による災害及びこれに伴う原子力発電所事故による災害について、閣議において「東日本大震災」と呼ぶことに決定した。
東北地方太平洋沖地震の発生以降も、岩手県沖から茨城県沖にかけての余震活動地域(長さ約500km、幅約200km)において多数の余震が発生しており、余震活動地域でこれまでに発生した余震の回数は、最大震度6強が2回、最大震度6弱が2回、最大震度5強が11回、最大震度5弱が37回、最大震度4が193回(24年6月4日現在)となっている。また、地震活動は長野県北部(最大震度6強)や静岡県東部(最大震度6強)等余震活動地域の外側でも発生している。
東日本大震災は、岩手県、宮城県及び福島県(以下「東北3県」という。)を中心に広い範囲で甚大な被害をもたらした。東日本大震災による被害は、以下のとおりである。
死者、行方不明者等の人的被害は、いまだ全容の把握に至っていないが、死者15,868人、行方不明者2,848人(24年8月15日現在)等、7年の阪神・淡路大震災の死者6,434人、行方不明者3人(消防庁による18年5月19日付けの確定報)を大きく上回る被害となっている。都道県別の人的被害は、表1 のとおりである。
都道県名 | 死者 | 行方不明者 | 負傷者 |
北海道 | 1 | 3 | |
青森県 | 3 | 1 | 109 |
岩手県 | 4,671 | 1,207 | 201 |
宮城県 | 9,525 | 1,426 | 4,136 |
秋田県 | 12 | ||
山形県 | 2 | 29 | |
福島県 | 1,606 | 211 | 182 |
茨城県 | 24 | 1 | 709 |
栃木県 | 4 | 134 | |
群馬県 | 1 | 38 | |
埼玉県 | 42 | ||
千葉県 | 20 | 2 | 252 |
東京都 | 7 | 117 | |
神奈川県 | 4 | 134 | |
新潟県 | 3 | ||
山梨県 | 2 | ||
長野県 | 1 | ||
静岡県 | 3 | ||
三重県 | 1 | ||
高知県 | 1 | ||
計 | 15,868 | 2,848 | 6,109 |
建物への被害については、津波により水没し壊滅した地域があり、全容の把握には至っていないが、全壊129,319戸、半壊263,925戸、一部破損725,935戸(24年8月15日現在)等となっている。都道県別の建物への被害は、表2のとおりである。
都道県名 | 全壊 | 半壊 | 一部破損 | 非住家被害 |
北海道 | 4 | 7 | 469 | |
青森県 | 306 | 701 | 835 | 1,362 |
岩手県 | 19,199 | 5,012 | 8,671 | 4,776 |
宮城県 | 85,211 | 151,015 | 223,961 | 34,531 |
秋田県 | 3 | 3 | ||
山形県 | 37 | 80 | ||
福島県 | 20,775 | 70,261 | 159,361 | 1,116 |
茨城県 | 2,694 | 24,296 | 185,958 | 18,662 |
栃木県 | 260 | 2,108 | 71,163 | 295 |
群馬県 | 7 | 17,246 | ||
埼玉県 | 24 | 194 | 1,800 | 33 |
千葉県 | 798 | 10,010 | 51,604 | 660 |
東京都 | 15 | 198 | 4,847 | 1,101 |
神奈川県 | 39 | 445 | 13 | |
新潟県 | 17 | 9 | ||
山梨県 | 4 | |||
静岡県 | 13 | 9 | ||
三重県 | 9 | |||
計 | 129,319 | 263,925 | 725,935 | 63,048 |
(注) | 非住家は、住家以外の建築物(官公署、学校、病院等)である。 |
出典:警察庁(平成24年8月15日公表) |
海岸や河川の堤防等への被害については、表3 のとおり、東北3県の海岸堤防護岸で全壊・半壊、国の直轄管理河川や県・市町村管理河川における堤防決壊や大規模崩落等の被害が確認されている。
項目 | 主な被害 |
海岸 | 東北3県の海岸堤防護岸延長約300kmのうち約190kmが全壊・半壊 |
河川 | 堤防決壊や大規模崩落等により、北上川、利根川等の直轄管理河川で2,115か所、県・市町村管理河川で1,360か所の被害 |
交通への被害については、表4 のとおり、高速道路や国の直轄国道等が被災により通行止めとなったのを始め、新幹線や在来線等の運転が休止となり、空港や港湾の使用が不可能になるなどした。
項目 | 主な被害 |
道路 | 高速道路15路線、直轄国道69区間、都道府県等管理国道102区間、県道等540区間で通行止め |
鉄道 | 22事業者64路線で運転を休止(震災から48時間後の時点) |
空港 | 仙台、花巻、福島及び茨城の4空港が被災 |
港湾 | 11の国際拠点港湾及び重要港湾を含む、青森県八戸市から茨城県までの太平洋側の全ての港湾において防波堤等の港湾施設に被害 |
バス事業 | 東北3県の被災地の事業者において合計219車両の滅失、流出等 |
農林水産業への被害については、表5 及び表6 のとおりである。このうち、農業については農地、農業用施設、農作物等の被害が、林野関係については山腹崩壊等の林地荒廃の発生や木材加工・流通施設等の被害がそれぞれ確認されている。また、水産関係については、全国の漁業・養殖業生産量の5割を占める三陸地域を中心に、漁船2万8000隻以上、漁港施設319漁港等の被害があった。さらに、津波により流失、冠水等した田畑の面積は、約2万3600haと推定されている。
区分 | 主な被害 | 被害数等 |
農地・農業用施設 | 農地の損壊 | 18,174か所 |
農業用施設等の損壊 | 17,502か所 | |
農作物等 | 農作物、家畜、農業・畜産関係施設 | 13県に主な被害 |
林野関係 | 山腹崩壊等の林地荒廃 | 458か所 |
海岸防災林等の治山施設 | 275か所 | |
法面の崩壊等の林道施設等 | 2,632か所 | |
林野火災等の森林被害 | 1,065ha | |
木材加工・流通施設 | 115か所 | |
特用林産施設等 | 476か所 | |
水産関係 | 漁船 | 28,612隻 |
漁港施設 | 319港 | |
養殖施設・養殖物 | 17道県に被害 | |
市場・加工施設等共同利用施設 | 1,725施設 |
県名 | 耕地面積 (平成22年) | 流失・冠水等被害推定面積 | |
(ha) | (ha) | 被害面積率 (%) | |
青森県 | 156,800 | 79 | 0.1 |
岩手県 | 153,900 | 1,838 | 1.2 |
宮城県 | 136,300 | 15,002 | 11.0 |
福島県 | 149,900 | 5,923 | 4.0 |
茨城県 | 175,200 | 531 | 0.3 |
千葉県 | 128,800 | 227 | 0.2 |
計 | 900,900 | 23,600 | 2.6 |
ライフライン(電気、ガス、水道、通信等)への被害については、表7 のとおりである。地震発生直後より、東北電力株式会社管内や東京電力株式会社管内等広範囲にわたって停電が発生し、都市ガスについても多くの地域において供給停止となるなどしたほか、水道施設の被災による断水や通信施設の被災による固定電話と携帯電話の不通等の被害があった。
項目 | 主な被害 |
電気 | 東北電力管内において約466万戸、東京電力管内において約405万戸の停電(地震発生直後) |
ガス、石油 | 8県16事業者で都市ガスが供給停止となり、復旧対象戸数は約40万戸 簡易ガス事業では7県にて供給停止となり、復旧対象戸数は約1万8000戸 東北・関東地方にある9製油所のうち東北地方で唯一の製油所を含め6製油所で被災 東北各県及び茨城県のLPガス供給基地9基地のうち7基地で被災 |
水道 | 19都道府県の水道施設が被災し、少なくとも累計で230万戸が断水 |
通信 | 固定通信網(加入電話+ISDN)は3社で最大約190万回線が被災 携帯電話及びPHS基地局についても5社で最大約2万9000局が停波 |
東北地方太平洋沖地震に伴い、東北地方の太平洋沿岸地域において顕著な地盤沈下が確認されており、国土地理院が行った地盤沈下の調査によると、東北3県の太平洋沿岸の観測点全てにおいて、最小20cm、最大84cmの沈降が確認されている。
また、国土交通省による地盤高の調査によると、表8
及び表9
のとおり、海抜0m以下の面積が大幅に増加し、特に宮城県では沿岸部を中心に地盤が沈下して、海抜0m以下の面積が地震前の3.4倍の56km2
に及ぶことが確認されており、沿岸部の漁港、農地、市街地等に深刻な影響をもたらしている。
区分 | 地震後の面積 (km2 ) | 地震後増加した割合 (推定値) |
海抜0m以下 | 0.6 | 1.8倍 |
大潮の満潮位以下 | 3.5 | 3.2倍 |
過去最高潮位以下 | 8.1 | 2.3倍 |
区分 | 地震後の面積 (km2 ) | 地震後増加した割合 (推定値) |
海抜0m以下 | 56 | 3.4倍 |
大潮の満潮位以下 | 129 | 1.9倍 |
過去最高潮位以下 | 216 | 1.4倍 |
東日本大震災における建築物、ライフライン施設、社会基盤施設、農林水産関係等への被害額は、内閣府によれば、表10 のとおり、約16兆9000億円と推計されている。
項目 | 被害額 |
建築物等(住宅・宅地、店舗・事務所、工場、機械等) | 約10兆4000億円 |
ライフライン施設(水道、ガス、電気、通信・放送施設) | 約1兆3000億円 |
社会基盤施設(河川、道路、港湾、下水道、空港等) | 約2兆2000億円 |
農林水産関係(農地・農業用施設、林野、水産関係施設等) | 約1兆9000億円 |
その他(文教施設、保健医療・福祉関係施設、廃棄物処理施設、その他公共施設等) | 約1兆1000億円 |
計 | 約16兆9000億円 |
(注) | 各県及び関係省庁からのストック(建築物、ライフライン施設、社会基盤施設等)の被害額に関する情報に基づき、内閣府(防災担当)が取りまとめたものであり、今後、被害の詳細が判明するに伴い変動することがある。なお、この推計には、福島第一原発の事故に伴う放射能汚染被害は含まれていない。 |
出典:内閣府(防災担当)「東日本大震災における被害額の推計について」(平成23年6月24日公表) |
国は、東北地方太平洋沖地震が発生した23年3月11日に、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)に基づく緊急災害対策本部と原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)に基づく原子力災害対策本部をいずれも内閣総理大臣を本部長として設置した。そして、翌12日には、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和37年法律第150号)に基づき、今回の震災について激甚災害の指定を行う政令を閣議決定した。
国は、地方公共団体と緊密に連携して、被災者の救援・救助を始めとする災害応急活動に取り組むとともに、国民生活及び経済活動が早期に回復するよう全力を尽くすこととした。そして、被災者の救援・救助活動等のため、都道府県警察の広域緊急援助隊等、消防本部の緊急消防援助隊、国土交通省の緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)、海上保安庁の特殊救難隊等、防衛省の自衛隊、厚生労働省の派遣要請による災害派遣医療チーム(DMAT)等が、被災地に派遣された(表11
参照)。
省庁 | 派遣状況 |
警察庁 (平成24年6月25日現在) |
広域緊急援助隊等 総数(累計)約99,700人 ヘリ運用(延べ)566機 |
消防庁 (24年3月13日現在) |
緊急消防援助隊 派遣部隊・人員の総数 8,854隊 30,684人 延べ31,166隊、109,919人 (派遣期間 23年3月11日〜6月6日(88日間)) |
国土交通省 (24年6月4日現在) |
緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE) 延べ18,115人派遣 災害対策機材(照明車、排水ポンプ車、衛星通信車、対策本部車等) 延べ30,128台派遣 |
海上保安庁 (24年6月25日現在) |
艦艇23隻(巡視船9隻、巡視艇14隻) 航空機8機(固定翼2機、回転翼6機) 延べ巡視船艇等15,934隻、航空機4,956機、特殊救難隊等2,492人 |
防衛省 (23年12月26日現在) |
自衛隊の大規模震災災害派遣 派遣規模 延べ約10,580,000人(1日の最大派遣人員約107,000人) 派遣期間 23年3月11日〜8月31日(174日間) 自衛隊の原子力災害派遣 延べ約80,000人 派遣期間 23年3月11日〜12月26日(291日間) |
厚生労働省の派遣要請による派遣 | 災害派遣医療チーム(DMAT) 最大193チーム(23年3月11日〜19日) DMAT以外の医師等 医療チーム 累計12,385人(2,720チーム) (24年3月22日現在) 薬剤師 累計1,915人(23年8月5日現在) 看護師 累計1,394人(23年8月2日現在) 歯科医師等 累計307人(23年8月5日現在) 理学療法士等 累計223人(23年10月7日現在) 保健医療の有資格者等 累計11,267人(230チーム) (24年3月23日現在) 心のケアチーム 累計3,498人(57チーム) (24年3月23日現在) 介護職員等 2,573人(24年1月25日現在) |
東日本大震災の発生により、多くの被災者は自宅等を離れ、公民館、学校等の公共施設や、旅館・ホテル等に設置された避難所、親族・知人宅等へ避難することとなった。復興庁等によれば、避難者数は震災発生直後のピーク時において約47万人とされ、震災から1週間を経過した時点では、約38万人が避難所2,182か所に避難していたとされている。その後、東北3県においては、避難所等から自宅へ帰宅したり、仮設住宅へ移ったりなどして、学校等に設置された一次避難所は23年12月末までに解消されているものの、依然として、24年7月末においても埼玉県の一次避難所で多くの避難者が生活しているほか、親族・知人宅等や仮設住宅等に移って生活している避難者は、全国に約34万3000人いることが把握されている。このうち、原子力発電所の事故等により、長期避難を余儀なくされた福島県から県外への避難者は、約6万人と多数に上っている。
東日本大震災により多数の人が生命又は身体に被害を受けたり、避難したりすることとなったことから、関係する都県は、23年3月11日に、被災した地域に災害救助法(昭和22年法律第118号)の適用を決定した。同法は、災害により市町村の人口に応じた一定数以上の住家が滅失した場合等に適用されるもので、同法の規定に基づき、都道府県知事が救助を行い、市町村長が救助の補助を行うこととされている。この救助には、避難所、応急仮設住宅の設置、食品等の給与、医療、助産、被災者の救出等が含まれている。そして、都道府県が支弁する救助に要する費用に対し、国は、都道府県の普通税収入見込額の割合に応じて、50%から90%までの負担を行うこととされている。なお、東日本大震災への災害救助法の適用については、避難所として民間の旅館等を借り上げる場合や応急仮設住宅として民間賃貸住宅を借り上げる場合も国庫負担の対象となるなど災害救助法の弾力運用が措置されている。
また、国は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対して、生活の再建を支援して、住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的とする被災者生活再建支援制度を適用することとした。同制度は、被災した世帯主に対して、その居住する住宅の被害の程度と住宅の再建方法等に応じて、支援金を支給するもので、国は、都道府県が拠出した基金が支給する支援金の2分の1に相当する額を補助することとなっている。
東日本大震災により、多くの人が、住む場所を失い、避難生活を送ることとなった。国は、被災者に対する当面の住宅を提供するため、表12
のとおり、応急仮設住宅の設置を推進した。応急仮設住宅は、東北3県において53,951戸、その他4県を含めて計54,266戸の設置が必要とされ、24年8月1日時点で必要戸数の97.8%が完成している。
また、応急仮設住宅は、設置によるもの以外にも、前記のとおり、民間賃貸住宅の借上げによるものや、雇用促進住宅、公営住宅等が避難者に供与されている。
県名 | 必要戸数 | 着工済戸数 | 完成戸数 |
岩手県 | 13,984 | 13,984 | 13,984 |
宮城県 | 22,095 | 22,095 | 22,095 |
福島県 | 17,872 | 16,775 | 16,695 |
茨城県 | 10 | 10 | 10 |
千葉県 | 230 | 230 | 230 |
栃木県 | 20 | 20 | 20 |
長野県 | 55 | 55 | 55 |
計 | 54,266 | 53,169 | 53,089 |
大規模な地震及び津波により、東北3県の沿岸市町村を中心として大量の災害廃棄物等(がれき)が発生した。その量は、表13
のとおり、災害廃棄物として2162万t、津波堆積物として959万t、計3121万tに上ると推計されている。
災害廃棄物等3121万tのうち、仮置場へ搬入されているものは、災害廃棄物に係るもの1726万t、津波堆積物に係るもの503万t、計2229万tとなっており、また、3121万tのうち処理・処分が行われたものは、災害廃棄物に係るもの598万t、津波堆積物に係るもの43万t、計641万tとなっている。なお、災害廃棄物等の推計量については、処分が進むにつれて、より正確な数値へと見直しが行われている。
災害廃棄物等推計量 (千t) |
災害廃棄物推計量 (千t) |
仮置場搬入済み量 | 処理・処分量 | 津波堆積物推計量 (千t) |
仮置場搬入済み量 | 処理・処分量 | ||||
量 (千t) |
率 (%) |
量 (千t) |
率 (%) |
量 (千t) |
率 (%) |
量 (千t) |
率 (%) |
|||
A | B | B/A | C | C/A | D | E | E/D | F | F/D | |
31,210 | 21,620 | 17,262 | 79.8 | 5,984 | 27.6 | 9,591 | 5,032 | 52.4 | 434 | 4.5 |
東日本大震災により、沿岸部に所在する水産加工業等の事業所等や農業等の田畑等が壊滅的な被害を受けるとともに、これらの産業の従事者自らも津波の被害に遭遇するなどした。また、津波の直接の被害を免れた内陸部等においても、地震の影響等により、多くの工場、事業所、店舗等において操業停止や事業の継続が困難な状況となり、これらの事業所等に就労していた従業員等が、失業又は一時解雇となるなど、就労の機会を奪われている。さらに、原子力発電所の事故が発生した福島県の沿岸部では、長期間の避難が予想される中、地域の経済、産業が多大な影響を受ける事態となっている。
東北地方における雇用情勢は、東日本大震災直後には被災した沿岸部を中心に離職者及び求職者が急増した。その後、災害復旧工事等のための求人が増加しており雇用情勢は持ち直した状況ではあるが、離職者の再就職が進んでいない状況もみられる。
国は、復旧・復興事業による確実な雇用創出のため、求職者と仕事とのマッチング体制の構築や被災者の雇用の維持・確保に係る様々な施策を継続的に講ずるなどしている。
福島第一原発における事故により、大量の放射性物質が放出され拡散した。国は、23年3月12日に、原子力災害対策特別措置法に基づき、福島第一原発から半径20km圏内の住民等に対して避難するよう指示し、同月15日に、福島第一原発の半径20kmから30km圏内の住民に対して屋内に待機するよう指示した。
そして、同年4月21日に、国は、原子力災害対策特別措置法第28条第2項の規定において読み替えて適用される災害対策基本法に基づき、福島第一原発から半径20km圏内を警戒区域(災害応急対策に従事する者以外の者に対して当該区域への立入りの制限・禁止を実施し、又は当該区域からの退去を命ずることができる区域)に設定するとともに、同月22日に、福島第一原発から半径20kmから30km圏内の住民に指示していた屋内への退避の指示を解除する一方、計画的避難区域(1年間の積算線量が20ミリシーベルト(注1)
に達するおそれのある区域)及び緊急時避難準備区域(緊急時に退避のため立ち退き又は屋内への退避をする必要がある区域)を設定した。
また、国は、24年3月末までに上記の警戒区域等としていた地域について、2市1町2村を避難指示解除準備区域(避難指示区域のうち、年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であると確認された地域)に、1市2村を居住制限区域(避難指示区域のうち、年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがあり、住民の被ばく線量を低減する観点から、引き続き避難の継続を求める地域)に、1市1村を帰還困難区域(5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれがある、現時点で年間積算線量が50ミリシーベルト超の地域)にそれぞれ見直し、4町1村を警戒区域として、2町1村を計画的避難区域として引き続き設定している(24年8月10日現在。図1
参照)。
図1 避難指示区域等の設定状況(概念図)
国は、前記のように、応急対応や仮設住宅の建設等を実施する一方、甚大な被害を受けた被災地の復旧・復興のため、「東日本大震災復興構想会議の開催について」(平成23年4月11日閣議決定)に基づき、有識者からなる東日本大震災復興構想会議を開催し、復興に向けた指針策定のための復興構想について幅広く議論を行うこととし、同会議の結果を復興に関する指針等に反映させることとした。
東日本大震災復興構想会議の下には、諸分野の専門家を擁する検討部会が設置され、23年6月25日に「復興への提言〜悲惨のなかの希望〜」が取りまとめられた。
この中で、市町村の能力を最大限引き出し、被災地経済を再生するため、特に復興支援の手法として、〔1〕 地方分権的な規制・権限の特例、手続の簡素化、経済的支援等、必要な各種の支援措置を具体的に検討し、区域・期間を限定した上で、これらの措置を一元的(ワンストップ)かつ迅速に行える「特区」手法を活用することが有効であること、〔2〕 復興の主体である地方公共団体が、自ら策定する復興プランの下、効率性や透明性を確保しながら真に復興に役立つ事業を進めることが求められることから、使い勝手のよい自由度の高い交付金の仕組みが必要であること、〔3〕 現行制度の隙間を埋めて必要な事業の柔軟な実施を可能とする基金の設立を検討すべきことなどが提言された。
東日本大震災復興基本法(平成23年法律第76号)(以下「復興基本法」という。)は、23年6月24日に施行され、東日本大震災からの復興の基本理念、復興のための資金の確保、復興特別区域制度の整備等に併せて、東日本大震災復興対策本部の設置及びその機能を引き継ぐ復興庁の設置に関する基本方針が定められた。
東日本大震災復興対策本部は、復興基本法に基づく国による復興のための取組の基本方針として、「東日本大震災からの復興の基本方針」(以下「復興基本方針」という。)を23年7月29日に決定した。復興基本方針の主な内容は、次のとおりである。
復興基本方針は、被災した地方公共団体による復興計画等の作成に資するため、国による復興のための取組の全体像を明らかにするものであり、東日本大震災からの復興を担う行政主体は、住民に最も身近で、地域の特性を理解している市町村が基本となることとされている。
そして、国は、復興基本方針を示しつつ、市町村が能力を最大限発揮できるよう、現場の意向を踏まえ、財政、人材、ノウハウ等の面から必要な制度設計や支援を責任を持って実施するものとされている。また、県は、被災地域の復興に当たって、広域的な施策を実施するとともに、市町村の実態を踏まえて、市町村に関する連絡調整や市町村の行政機能の補完等の役割を担うものとされている。
復興期間は10年間とし、被災地の一刻も早い復旧・復興を目指す観点から、復興需要が高まる当初の5年間を「集中復興期間」と位置付け、一定期間経過後に事業の進捗等を踏まえて復旧・復興事業の規模の見込みと財源について見直しを行い、集中復興期間後の施策の在り方も定めることとされている。なお、福島における原発事故から深刻な影響を受けた地域への対応については、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)及び原子力損害賠償支援機構法(平成23年法律第94号)の執行状況等を踏まえつつ、事故や復旧の状況に応じ、所要の見直しを行うこととされている。
国は、国家的な危機である東日本大震災を乗り越えて復興を実現し、現在及び将来の国民が安心して豊かな生活を営むことができる経済社会を構築するため、被災者及び被災した地方公共団体の意向等を踏まえつつ、各府省一体となって、以下の施策を実施するとされている。
・ 被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生のための施策
・ 被災者の避難先となっている地域や震災による著しい悪影響が社会経済に及んでいる地域等、被災地域と密接に関連する地域において、被災地域の復旧・復興のために一体不可分のものとして緊急に実施すべき施策
・ 上記と同様の施策のうち、東日本大震災を教訓として、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災等のための施策
a 国の総力を挙げた取組
国の取組としては、〔1〕 地域が主体となった復興を強力に支援するため、オーダーメードで地域における創意工夫を活かし、旧来の発想にとらわれず、区域限定で思い切った規制・制度の特例や経済的支援等の被災地からの提案を一元的かつ迅速に実現する復興特区制度を創設すること、〔2〕 (a)地方公共団体が、自ら策定する復興プランの下、復興に必要な各種施策が展開できる、使い勝手のよい自由度の高い交付金を創設すること、(b)地域において、基金設置等により、制度の隙間を埋めて必要な事業の柔軟な実施が可能となる資金を確保できるよう、必要な支援を実施することとされている。
b 事業規模と財源確保
(a) 事業規模
平成23年度第1次補正予算(以下「1次補正」という。)及び平成23年度第2次補正予算(以下「2次補正」という。)を含む27年度末までの5年間の「集中復興期間」に実施する施策・事業の事業規模について、国は、国と地方(公費分)とを合わせて、少なくとも19兆円程度と見込んでおり、10年間の復旧・復興対策の規模(国と地方(公費分)とを合わせたもの)については、少なくとも23兆円程度を見込んでいる。
なお、この規模の見込みには、原則として、原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償支援機構法に基づき事業者が負担すべき経費は含まれていない。
(b) 「集中復興期間」中の復旧・復興事業に充てる財源確保の方法
5年間の「集中復興期間」中の復旧・復興事業に充てる財源は、1次補正等及び2次補正における財源に加え、歳出の削減や国有財産売却のほか、特別会計、公務員人件費等の見直しや更なる税外収入の確保及び時限的な税制措置により13兆円程度を確保することとされている。
(c) 復旧・復興事業に充てる財源確保の道筋とその使途の明確化
先行する復旧・復興需要を賄う一時的なつなぎとして発行する復興債については、その発行の在り方について十分検討するとともに、従来の国債とは区分して管理することとされている。
復興債の償還財源となる時限的な税制措置は、償還期間中に行い、その税収は、全て復興債の償還を含む復旧・復興費用に充て、他の経費には充てないことを明確化するため、他の歳入とは区分して管理することとされている。
(d) 地方の復興財源の確保
今後の復旧・復興に当たっては、国費による措置を講じてもなお、地方負担が地方債の償還や地域の実情に応じた事業を含めて生ずることを踏まえて、前記のとおり、国と地方(公費分)とを合わせて少なくとも19兆円規模の施策・事業に充てる財源を確保するとともに、地方負担分について地方交付税の加算を行うことなどにより確実に地方の復興財源の手当を行うこととされている。
国は、各府省一体となって、復興施策を総合的かつ計画的に実施することとされていて、その際、各府省は、被災した地方公共団体の意向等を踏まえつつ、所管する復興施策についての当面の事業計画や業務の工程表を可能な限り速やかに策定し、公表することとされている。また、各府省は、事業の進度に合わせて、これらの改定を適時に行い、公表するとともに、被災した地方公共団体の求めに応じて各府省担当者による横断的な支援を行うこととされている。復興庁は、各府省が公表したものについて、被災者及び被災した地方公共団体が一覧することができるよう、必要な調整及び取りまとめを行うこととされている。
復興施策の主な項目は、次の4項目となっている。
a 災害に強い地域づくり
〔1〕 高齢化や人口減少に対応した新しい地域づくり、〔2〕 「減災」の考え方に基づくソフト・ハードの施策の総動員、〔3〕 土地利用の再編等を速やかに実現できる仕組み等、〔4〕 被災者の居住の安定確保、〔5〕 市町村の計画策定に対する人的支援、復興事業の担い手等
b 地域における暮らしの再生
〔1〕 地域の支え合い、〔2〕 雇用対策、〔3〕 教育の振興、〔4〕 復興を支える人材の育成、〔5〕 文化・スポーツの振興
c 地域経済活動の再生
〔1〕 企業、産業・技術等、〔2〕 中小企業、〔3〕 農業、〔4〕 林業、〔5〕 水産業、〔6〕 観光、〔7〕 コミュニティを支える生業支援、〔8〕 二重債務問題等、〔9〕 交通・物流、情報通信、〔10〕 再生可能エネルギーの利用促進とエネルギー効率の向上、〔11〕 環境先進地域の実現、〔12〕 膨大な災害廃棄物の処理の促進
d 大震災の教訓を踏まえた国づくり
〔1〕 電力安定供給の確保とエネルギー戦略の見直し、〔2〕 再生可能エネルギーの導入促進及び省エネルギー対策等の推進、〔3〕 世界に開かれた復興、〔4〕 社会的包摂の実現と「新しい公共」の推進、〔5〕 今後の災害への備え、〔6〕 震災に関する学術調査、災害の記録と伝承
国は、地方公共団体と調整を行い、できるだけ速やかに、原子力災害からの復興のための協議の場を立ち上げ、地域再生、損害賠償措置を始め復興に向けた十分な対策を講ずるため、法的措置を含めた検討を行い、早急に結論を得るとともに、応急対策、復旧対策、復興対策及び政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進の3項目について、その迅速な対応を図ることとしていて、各項目は以下のとおりとなっている。
a 応急対策、復旧対策
〔1〕 応急対策、各種支援、情報提供等、〔2〕 安全対策・健康管理対策等、〔3〕 賠償・行政サービスの維持等、〔4〕 放射性物質の除去等
b 復興対策
〔1〕 医療産業の拠点整備、〔2〕 再生可能エネルギーの拠点整備
c 政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進
東日本大震災からの復興を図ることを目的として復興基本法に定める基本理念に基づき、23年度から27年度までの間に実施する復興施策に必要な財源を確保するための特別措置として、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号。以下「復興財源確保法」という。)が23年12月2日に施行された。
復興財源確保法では、5年間の集中復興期間における19兆円程度の財源から1次補正等見合いの歳出削減等6兆円程度を差し引いた残り13兆円程度の財源確保については、歳出削減及び税外収入による財源確保が5兆円程度であることを前提に、時限的な増税措置を行う内容となっている。そして、先行する復旧・復興事業を賄う一時的なつなぎとして発行する復興債についても定められていて、集中復興期間の復旧・復興対策の財源内訳を示すと、図2
のとおりである。
復興特別区域制度は、復興基本法等を受け、23年12月7日に制定された東日本大震災復興特別区域法(平成23年法律第122号)に基づく制度である。同制度は、震災により一定の被害を生じた区域である227市町村の区域(以下「特定被災区域」という。巻末別図1
参照)において、その全部又は一部の区域が特定被災区域である地方公共団体が特例、事業等を活用又は実施するなどのための復興推進計画、復興整備計画又は復興交付金事業計画の作成を行うことができるものであり、各地方公共団体が自らの被災状況や復興の方向性に合致し、活用等が可能な特例等を選び取る仕組みとされている。
上記の復興推進計画、復興整備計画及び復興交付金事業計画の概要については、以下のとおりである。
復興推進計画は、個別の規制・手続の特例や税制上の特例等を受けるために、道県、市町村が単独又は共同で作成する計画である。そして、当該計画について、復興庁の長である内閣総理大臣の認定を受けることにより、〔1〕 住宅、産業、まちづくり、医療・福祉等の各分野にわたる規制・手続の特例、〔2〕 雇用の創出等を支援する税制上の特例、〔3〕 利子補給金制度の適用を受けることができるものである。
復興推進計画の作成等について協議するため、特定被災区域の地方公共団体、事業実施主体、地域の関係者等を構成員とする地域協議会を組織することができることとなっており、地域協議会が組織されている場合は、復興推進計画の作成等に当たり、地域協議会において協議をすることが必要となっている。
復興整備計画は、土地利用の再編を図りながら復興に向けたまちづくり・地域づくりを進めることが必要な地域等において、土地利用の再編に係る特例許可・手続の特例等を受けるために、市町村が単独又は道県と共同して作成する計画である。
そして、公聴会の開催や復興整備協議会での協議・同意を経るなどして、当該計画を公表することにより、復興を図るための事業に必要な許可の特例が適用されるとともに、手続の一括処理や、被災地域の実態に即した事業制度が適用される。また、上記の復興整備協議会は、被災関連市町村、道県、許認可権者等から構成され、同協議会での協議・同意を経ることにより、事業の実施に必要となる許認可や設定区域の変更等の手続を一括して処理することができることとされている。
復興交付金事業計画は、相当数の住宅、公共施設その他の施設の滅失又は損壊等の著しい被害を受けた地域の市町村が単独又は市町村と道県が共同で作成する計画である。
そして、当該計画は、復興庁の長である内閣総理大臣に提出することができることとされており、その提出を受けた国は、復興交付金事業計画に基づく事業又は事務(以下「復興交付金事業」という。)の実施に要する経費に充てるための東日本大震災復興交付金(以下「復興交付金」という。)を予算の範囲内で、交付することができることとされている。
復興交付金事業には、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省及び環境省(以下「関係5省」という。)が所管する40事業(以下「基幹事業」という。巻末別表1
参照)と、基幹事業と一体となってその効果を増大させるために実施する事業又は事務(以下「効果促進事業」という。)とがあり、復興交付金事業計画を作成する市町村等は、東日本大震災復興交付金制度要綱に基づき、基幹事業及び効果促進事業のうち、復興交付金事業計画に定めた目標を実現するために必要となる事業を復興交付金事業計画に記載することとされている。
復興庁は、復興庁設置法(平成23年法律第125号)に基づき、内閣に設置され、24年2月10日に開庁した。同庁は、復興基本法の基本理念にのっとり、復興に関する内閣の事務を内閣官房と共に助けること及び主体的かつ一体的に行うべき東日本大震災からの復興に関する行政事務の円滑かつ迅速な遂行を図ることを任務としている。
復興庁には、図3
のとおり、復興庁設置法に基づき、復興庁の長、復興大臣、副大臣及び大臣政務官並びに復興推進会議、復興推進委員会及び復興局が設置されている。
このうち、復興庁の長は、内閣総理大臣とし、復興庁の事務を統括することとされている。また、復興大臣は、内閣総理大臣を助け、復興庁の事務を統括することとされているほか、事務の遂行のため特に必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、勧告することができるとされ、この場合、関係行政機関の長は、当該勧告を十分に尊重しなければならないとされている。
復興推進会議は、復興のための施策の実施を推進すること及び復興のための施策について必要な関係行政機関相互の調整をすることを目的に、内閣総理大臣、復興大臣を含む全ての国務大臣等で組織されている。また、復興推進委員会は、〔1〕 復興のための施策の実施状況を調査審議し、必要があると認める場合に内閣総理大臣に意見を述べること、〔2〕 内閣総理大臣の諮問に応じて、復興に関する重要事項を調査審議し、必要と認める事項を内閣総理大臣に建議することなどのために設置されており、その委員長及び委員は、関係地方公共団体の長及び優れた識見を有する者が内閣総理大臣により任命されることとされている。さらに、地方機関として、東北3県に当該県を管轄区域とする復興局をそれぞれ設置し、復興庁の所掌事務のうち一部を分掌することとされている。
なお、同庁は、33年3月31日までに廃止することとされている。
復興庁は、その任務を達成するため、関係地方公共団体が行う復興事業への国の支援その他関係行政機関が講ずる復興のための施策の実施の推進及び総合調整に係る事務を行うこととされている。また、図4 のとおり、復興に関する行政各部の事業を統括して監理することとし、関係地方公共団体の要望を一元的に受理するとともに、当該要望への対応に関する方針(以下「対応方針」という。)を定め、これに基づき事業の改善又は推進等の措置を講ずることとされている。そして、事業実施に当たっては、復興に関する事業に必要な予算を一括して要求し確保するとともに、事業実施に関する計画(以下「実施計画」という。)を定めた上で、当該事業を自ら執行するか、又は関係行政機関に予算を配分して、対応方針及び実施計画等を通知することにより、支出負担行為の実施計画に関する書類の作製を含め、当該事業を執行させることとされている。さらに、関係地方公共団体の求めに応じて、政府全体の見地から、情報提供、助言その他必要な協力を行うこととされている。
復興庁は、毎年度、復興基本方針の実施状況についてフォローアップを行い、その結果を公表するとともに、その公表結果について被災者及び被災地方公共団体の意見を聴取することとなっている。
また、各府省の協力を得て、復興に関する国の予算を把握し、被災地方公共団体等が一覧することができるよう公表することとなっている。
原子力災害からの福島の復興及び再生の推進を図り、東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生に資することを目的として、福島復興再生特別措置法(平成24年法律第25号)が24年3月30日に成立した。この法律では、原子力災害からの福島の復興及び再生の基本となる福島復興再生基本方針の策定、避難解除等区域の復興及び再生のための特別の措置、原子力災害からの産業の復興及び再生のための特別の措置、原子力災害からの福島復興再生協議会等について定めている。
国は、原子力災害からの福島復興再生協議会における協議等を経て、同年7月13日に、福島復興再生基本方針を閣議決定した。今後、福島復興再生基本方針に即して、避難解除等区域の復興及び再生を推進するための計画(避難解除等区域復興再生計画)、原子力災害による被害を受けた産業の復興及び再生の推進を図るための計画(産業復興再生計画)、再生可能エネルギー源の利用、医薬品及び医療機器に関する研究開発を行う拠点の整備を通じた新たな産業の創出及び産業の国際競争力の強化に寄与する取組その他先導的な施策への取組の重点的な推進に関する計画(重点推進計画)の作成、認定等が実施され、復興再生のための措置が実行されるとともに、放射線による健康上の不安の解消その他の安心して暮らすことのできる生活環境の実現のための措置が実行されることとなっている。