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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成25年9月

裁判所における会計経理等に関する会計検査の結果について


第2 検査の結果

2 請求書、納品書等の会計書類の管理の状況

(1) 会計書類の日付の記載

 請求書

請求書は、物品の売主や役務の提供者が、その対価としての代金の支払を相手方に対して請求するための書類であり、通常、請求相手の名前、発行年月日、発行者名及び住所のほか、物品等の明細、数量、単価、合計金額、振込先、振込期限等が記載されている。

そして、国における対価の支払の時期については、「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」(昭和24年法律第256号。以下「支払遅延防止法」という。)等により、当該時期を書面により明らかにする場合は、国が給付の完了の確認又は検査を終了した後相手方から適法な支払請求を受けた日から工事代金については40日、その他の給付に対する対価については30日以内の日としなければならないとされている。また、対価の支払の時期を書面により明らかにしない場合は、相手方が支払請求をした日から15日以内の日と定めたものとみなすこととされている。このように、国が支払請求を受けた日又は相手方が支払請求をした日がいつであるかによって支払期限が定まることから、請求書において、これらの日付を明確にすることは重要である。そこで、提出された請求書に日付の記載がない場合は、相手方に対して請求日付の記載を要請すること、また、日付の記載のない請求書を受理した場合でも支払期限が定まるように、受理した日付を記録しておくこととされている。

最高裁判所及び38高地家裁について、23、24両年度分の証拠書類として会計検査院に提出された請求書の件数を確認したところ、図表2-2-1のとおり、23年度53,124件、24年度50,390件となっていた。このうち日付の記載のない請求書の件数は、23年度12,315件、24年度は3,381件となっていて、請求書全体に対する日付の記載のないものの割合は23年度23.2%、24年度6.7%となっていた。

図表2-2-1 最高裁判所及び38高地家裁における日付の記載のない請求書の受理状況

(単位:件、%)

裁判所名 平成23年度 24年度
請求書 日付の記載のない請求書 日付の記載のない請求書の割合 請求書 日付の記載のない請求書 日付の記載のない請求書の割合
うち様式上日付欄がない請求書 うち様式上日付欄がない請求書
A B C B/A A B C B/A
最高裁判所 5,119 3,387 299 66.2 4,630 285 249 6.2
東京高等裁判所 1,130 734 38 65.0 1,041 46 45 4.4
大阪高等裁判所 1,133 407 118 35.9 1,017 89 57 8.8
名古屋高等裁判所 972 32 27 3.3 904 28 25 3.1
広島高等裁判所 768 28 163 21.2 715 12 3 1.7
福岡高等裁判所 931 305 103 32.8 1,083 79 48 7.3
仙台高等裁判所 949 204 11 21.5 782 23 9 2.9
札幌高等裁判所 827 413 82 49.9 802 78 62 9.7
高松高等裁判所 847 439 80 51.8 771 16 12 2.1
最高裁判所
東京地方裁判所 2,580 145 145 5.6 2,488 173 173 7.0
さいたま地方裁判所 1,681 302 235 18.0 1,874 179 177 9.6
水戸地方裁判所 1,489 975 208 65.5 1,424 153 142 10.7
宇都宮地方裁判 1,152 96 81 8.3 1,070 235 134 22.0
前橋地方裁判所 1,462 200 190 13.7 1,435 217 217 15.1
静岡地方裁判所 1,585 423 155 26.7 1,479 191 177 12.9
新潟地方裁判所 1,691 21 20 1.2 1,666 21 19 1.3
大阪地方裁判所 1,620 208 142 12.8 1,676 188 102 11.2
京都地方裁判所 1,179 39 39 3.3 1,073 15 9 1.4
神戸地方裁判所 1,796 426 127 23.7 1,728 172 68 10.0
名古屋地方裁判所 2,170 15 13 0.7 2,062 16 15 0.8
金沢地方裁判所 978 0 0 - 839 36 7 4.3
広島地方裁判所 1,691 198 105 11.7 1,668 71 51 4.3
山口地方裁判所 1,697 53 49 3.1 1,591 55 49 3.5
岡山地方裁判所 1,231 160 58 13.0 1,125 50 27 4.4
福岡地方裁判所 1,860 467 85 25.1 1,533 100 36 6.5
長崎地方裁判所 1,435 96 47 6.7 1,430 26 25 1.8
熊本地方裁判所 1,361 403 132 29.6 1,345 157 97 11.7
那覇地方裁判所 969 195 93 20.1 908 79 70 8.7
仙台地方裁判所 1,166 13 13 1.1 1,063 7 1 0.7
盛岡地方裁判所 1,538 73 55 4.7 1,388 26 18 1.9
札幌地方裁判所 1,929 755 127 39.1 1,808 344 98 19.0
旭川地方裁判所 1,228 163 47 13.3 1,371 64 26 4.7
高松地方裁判所 956 211 82 22.1 928 8 7 0.9
松山地方裁判所 1,450 68 63 4.7 1,281 51 50 4.0
水戸家庭裁判所 358 133 28 37.2 312 5 1 1.6
静岡家庭裁判所 557 72 54 12.9 600 10 7 1.7
新潟家庭裁判所 625 8 6 1.3 553 3 3 0.5
金沢家庭裁判所 503 141 11 28.0 425 22 1 5.2
那覇家庭裁所 511 172 57 33.7 502 51 43 10.2
53,124 12,315 3,253 23.3 50,390 3,381 2,360 6.7

(ア) 最高裁判所における請求書の日付の記載状況

最高裁判所の23年度分の請求書について、日付の記載状況を確認したところ、図表2-2-1のとおり、5,119件中3,387件の請求書に日付の記載がなく、請求書全体に対する日付の記載のないものの割合は66.2%となっていた。最高裁判所によると、このように日付の記載がないものが多いのは、提出された請求書に日付の記載がない場合は、当該請求書に受理の日付印(以下「受付日付印」という。)を押印することで請求を受けた日が明確になることから、相手方に日付の記入を求めることまではしておらず、専ら受付日付印を押印することで処理していたことによるとのことであった。

24年度分については、4,630件中285件の請求書に日付の記載がなく、その割合は6.2%となっていて、23年度分に比べて低減していた。最高裁判所によると、これは、国会等で日付の記載のない請求書等が問題となったことなどを受けて、24年4月に「請求年月日が空欄の請求書等の取扱いについて」(平成24年4月26日最高裁判所事務総局経理局監査課。以下「最高裁業務要領」という。)を各課に発して、日付の記載のない請求書等が提出された場合は相手方に対して日付の記入を求めるなどの対策を講じていることによるとしていた。

最高裁業務要領に基づく請求書の日付の取扱いが周知されたとされる24年5月以降に支払の対象となった請求書4,606件分についてみると、日付の記載のない請求書は277件であった。このうち、様式上日付欄のない請求書は249件であり、さらに、このうち241件は光熱水等といった公共料金等(以下「公共料金等」という。)に係るものとなっていた。公共料金等については、その料金が国等により認可されたものであることに加えて、その請求は毎月同じ時期に定型的な内容で行われるものであり、請求に対応する期間が明記されていて、支払期日も約款等で定まっているものである。そこで、上記の277件から公共料金等に係る241件を除いた36件についてみたところ、このうち21件は最高裁判所が日付を記入するよう相手方に要請したものの応じなかったことなどからそのまま受理したものであるとしていて、これも除くと残りは15件となり、上記の4,606件に対する割合は0.3%となる。

(イ) 下級裁判所における請求書の日付の記載状況

a 23年度の状況

38高地家裁の23年度分の請求書全体に対する日付の記載のない請求書の受理状況は、図表2-2-1のとおり、金沢地方裁判所を除く37裁判所で日付の記載のない請求書の受理が見受けられ、その割合は0.7%から65.5%までとなっていた。これらの裁判所では、日付の記載のない請求書が相手方から提出された場合には、従前から、その場で相手方に記入させたり、職員が書き入れたり、受付日付印を押印したりしていたとしていて、取扱いが区々となっていた。

また、金沢地方裁判所については、相手方から提出された全ての請求書に日付が記載されていたが、これは、日付の記載のない請求書を受理した後、相手方に日付を確認するなどした上で職員が日付の書入れを行っていたためであるとしていた。職員による書入れを行っていたとする裁判所は、金沢地方裁判所のほかに、東京高等裁判所、東京、宇都宮、静岡、新潟、名古屋、山口、仙台、松山各地方裁判所及び静岡、新潟、金沢各家庭裁判所の計12裁判所となっていた。

b 24年度の状況

38高地家裁の24年度分の請求書全体に対する日付の記載のない請求書の受理状況は、図表2-2-1のとおり、全ての裁判所で日付の記載のない請求書の受理が見受けられ、その割合は0.5%から22.0%までとなっていた。

最高裁判所は、前記のとおり、24年4月に最高裁業務要領を各裁判所に対して発しており、各裁判所はこれを参考にそれぞれ処理方針等を検討するとともに、日付の記載のない請求書が提出された際には相手方に対して日付の記入を求め]るよう周知した。そして、38高地家裁のうち神戸地方裁判所及び新潟家庭裁判所を除く36裁判所においては、24年5月から同年11月までの間に最高裁業務要領に基づいた取扱いを開始しており、日付の記載のない請求書については相手方に日付の記入を求めるなどの対策を講じていた。神戸地方裁判所は、最高裁業務要領が送付される以前の23年11月に、日付の記載のない請求書等の取扱いに関する内部規程を定めており、日付の記載のない請求書が郵送されてきた場合は受付日付印を押印することとして、相手方に日付の記入を求めることまではしていなかったが、25年1月以降は最高裁業務要領に基づきこのような場合も相手方に日付の記入を求めることにした。また、新潟家庭裁判所は、25年4月から最高裁業務要領に基づく取扱いを行うこととした。

24年度に日付の記載のない請求書を受理した割合が高い裁判所のうち、10%を超えていた水戸、宇都宮、前橋、静岡、大阪、神戸、熊本、札幌各地方裁判所及び那覇家庭裁判所の9裁判所についてみると、日付の記載のない請求書(裁判所が日付の記載を要請したが相手方が応じなかったとしているものなどを除く。)の多くは、最高裁判所と同様に公共料金等に係るものとなっていた。特に、水戸、前橋、静岡各地方裁判所については、日付の記載のない請求書における公共料金等に係るものの件数が多く、それを除くと、日付の記載のない請求書の割合は、1.1%から1.9%までとなっていた。

しかし、これら以外の6裁判所については、公共料金等に係るものを除いても日付の記載のない請求書の割合が、5.4%から17.6%までとなっていた。そこで、これら6裁判所について、各裁判所が最高裁業務要領による取扱いを開始したとしているそれぞれの時期の前後において、具体的な改善が図られているかをみたところ、日付の記載のない請求書の割合は、公共料金等に係るものを除くと取扱いの開始以前は8.1%から28.4%までとなっていたものが、開始以後は2.0%から7.4%までとなっており、依然として請求書の受理について改善に努める必要がある状況ではあるものの、最高裁業務要領による取扱いを開始する以前に比べると、日付の記載のない請求書の割合は低減していた。

なお、宇都宮地方裁判所については、日付の記載のない請求書の割合が23年度は8.3%であったのに対して24年度は22.0%と増加しているが、これは23年度までは職員による日付の書入れを行っており、24年度にはこれを改めたことにより、日付の記載のない請求書が増えたためであるとしている。

 納品書

納品書は、売主が商品等を買主に納入する際、商品等と一緒に買主に提出する書類であり、通常、納品先の名前、発行年月日及び納品年月日、発行者の名前及び住所のほか、納品物の明細、数量、単価、合計金額等が記載されている。納品書は、業者が慣習に従い又は任意に提出するものであって、履行内容を明示する性格及び給付の完了を通知する性格を有するものである。

納品書において日付が重要となるのは、それが給付を終了した旨の通知としての意味を持つ場合である。そして、契約における検査の時期は、支払遅延防止法により、国が相手方から給付を終了した旨の通知を受けた日から工事については14日、その他の給付については10日以内の日としなければならないとされていることから、検査を行う期限は、給付を終了した旨の通知を受けた日がいつであるかによって定まることとなる。

最高裁判所は、22年度に、「国の行政機関の法令等遵守(会計経理の適正化等)に関する調査結果に基づく勧告」(平成22年7月13日総務省)が全府省に出されたことを契機として、契約事務の適正化の観点から、納品書の取扱いに関して「物品調達に係る納品書等の取扱いについて(事務連絡)」(平成22年11月30日最高裁判所事務総局経理局監査課)を下級裁判所に発している。この中では、23年1月1日の納品分から、検査職員が相手方に対して納品書の提出を求めること、納品書に受付日付印を押印するなどして受理日を明らかにすること、納品書は当該年度経過後5年間保存することなどとされている。

そして、最高裁判所及び38高地家裁の会計実地検査の際に検査した範囲では、各裁判所が保存していた納品書は、23、24両年度分とも、上記の事務連絡に基づき、受付日付印が押印されるなどして給付の終了した日が明確になっていた。

 見積書

見積書は、役務や物品の納入等に関して、業者がそれを達成するためにどれくらいの価格や期間になるかを見積もり、依頼元に示す書類で、その提出は契約の申込みに当たるとされており、依頼元はその内容から発注するか否かを判断することになる。見積書には、通常、依頼元の名前、見積書を作成した日付、作成した者の名前、住所、見積金額等が記載されている。

国においては、予定価格を算定するための参考見積書を徴する場合、見積合わせにおいて発注することを前提に見積書を徴する場合等がある。この見積合わせのために徴する見積書に記載される日付は、当該見積書が相当の期間内に提出されたものであるかを確認したり、特に見積書に有効期間が表示されているような場合には当該見積行為がどの程度の期間有効かを確認したりする上で重要となる。

最高裁判所及び8高等裁判所の会計実地検査の際に検査したところ、各裁判所が見積合わせで徴した見積書のうち、日付の記載のないものの受理状況は、23年度分については1,575件のうち519件となっていて、割合にして33.0%であったのに対して、24年度分については、最高裁業務要領に基づき、見積書の提出依頼に当たって業者に作成年月日の記入を求めることとしていたため、731件のうち20件、割合にして2.7%となっていて、その割合は低減していた。

(2) 調達手続の適正性

 調達手続の適正性

裁判所においては、日付の記載のない請求書、納品書等の会計書類の取扱いについては、以上のとおり、最高裁業務要領に基づくなどして、請求日付や給付を終了した日付等を明確にするよう、改善に取り組んでいる。しかし、不適正経理を防止するためには、作成された会計書類に不備がないことに加えて、調達手続が法令にのっとって行われているかが重要となる。そこで、最高裁判所及び38高地家裁において、契約締結、発注、検査等の調達手続が適正に行われているかを検査したところ、次のような事態となっていた。

(ア) 見積合わせについて

国の契約のうち、随意契約による場合は、なるべく2者以上の者から見積書を徴することとされており、多くの裁判所では契約事務取扱基準等により3者以上の者から見積書を徴することとされている。これは、見積書を提出した者の中で最も低廉な価格を提示した者を相手方として選定するためである。

各裁判所における見積合わせの実施状況について検査したところ、さいたま、金沢両地方裁判所及び金沢家庭裁判所の3裁判所において、特定の1業者と契約することを前提として、当該業者に対して、見積書の提出の際に他の任意の2業者分の見積書も合わせて提出するよう依頼している事態が、図表2-2-2のとおり計176件、契約金額計2606万余円見受けられた。各裁判所に保管されていた当該見積書については、書面上は3者から徴したようになっていたが、実際には上記のような経緯で入手したものであり、適切な見積合わせは行われておらず、競争性が妨げられる結果となっていた。

このような事態は、随意契約においてもなるべく2者以上の者から見積書を徴することとしている会計法令の趣旨に照らして適切を欠くと認められる。

図表2-2-2 適切な見積合わせが行われていなかった契約の状況

(単位:件、円)

裁判所名 平成23年度 24年度




契約
件数
契約金額



契約
件数
契約金額



契約
件数
契約金額
さいたま地方裁判所 12 35 10,963,522 8 15 4,492,329 15 50 15,455,851
金沢地方裁判所 21 51 5,560,386 12 24 3,602,581 26 75 9,162,967
金沢家庭裁判所 12 45 1,129,701 5 6 321,475 15 51 1,451,176
40 131 17,653,609 23 45 8,416,385 49 176 26,069,994
(注)
契約業者数は、重複しているものがあるため、合計しても計欄の契約業者数と一致しない。

<事例>

さいたま地方裁判所は、平成24年1月に、熊谷支部電話交換機修繕工事をA社と434,280円で契約している。

当初は、23年6月に、修繕の対象となる電話交換機の保守を請け負っているA社のほか、B社及びC社の計3者による見積合わせを実施して、最安値であったA社を相手方としたとしていたが、東日本大震災の影響により部材の調達が困難となったことから、修繕をしばらく見合わせることとした。そして、23年12月に、改めてA社のほか、D社及びE社の計3者による見積合わせをして、最安値であったA社を相手方としたとしていた。

しかし、この2回の見積合わせは、いずれもさいたま地方裁判所が、A社に対して、見積書の提出の際に他の任意の2業者分の見積書を合わせて提出するよう依頼しており、A社が提出した計6件の見積書をそのまま受理して見積合わせをしたこととして、最安値であったA社を相手方としていた。

(イ) 会計書類の作成手続、保存等について

国の調達手続においては、支出負担行為担当官が物品管理官からの物品取得請求を受けて調達手続を開始して、相手方の選定、支出負担行為決議等を経て契約を締結している。こうした調達手続の過程における会計書類の作成手続等について検査したところ、さいたま地方裁判所等5裁判所において、次のような不適切な事態が見受けられた。

① 支出負担行為決議の前日に契約を締結していたり、仕様書で作業開始前の提出を定めていた書類を作業終了後に受け取っていたりしたもの さいたま、水戸両地方裁判所、静岡家庭裁判所3件契約金額1608万余円

② 発注の事実を示す書類が保存されていなかったため、発注した日が確認できないなどしていたもの さいたま、前橋、静岡各地方裁判所4件同773万余円

<事例2>

前橋地方裁判所は、平成23年度に、プリンタ用トナーカートリッジをF社から3,540,306円で購入(単価契約)している。

本件契約は、同裁判所が必要の都度トナーカートリッジを発注し、それを受けてF社が定められた期日までに定められた納入先に納品するものである。そして、納品の期日については、契約書において、F社は発注を受けてから7日以内に引き渡さなければならないと明記されており、違反した場合は違約条項が適用されることとなっていた。

しかし、本件契約において必要の都度行われた発注の記録が保管されていなかったため発注した日付が不明であり、納品が契約で定める期日までに行われたものであるかを検証することができない状況となっていた。

(ウ) 検査及び検査調書の作成について

国の契約のうち請負契約又は物件の買入れなどについては、給付の完了の確認に必要な検査をしなければならず、検査を完了した場合においては、検査調書を作成することとなっており、検査調書を作成した場合には、これに基づかなければ、支払を行うことができないとされている。

そこで、裁判所に納品された備品等について、物品管理簿における数量、備品等の現物及び業者等が保有する帳票類とを突合するなどして不符合はないか、給付の完了に必要な検査の手続に問題はないかなどを検査したところ、最高裁判所等9裁判所において、次のような不適切な事態が見受けられた。

① 工事完了前に工事検査調書等を作成していたり、一部の品目が検査調書に記載された納品日以後に納品されていたりなどしていたもの仙台高等裁判所、大阪、那覇、盛岡各地方裁判所

5件 契約金額1億1261万余円

<事例3>

那覇地方裁判所は、平成23年度に、消耗品の購入に係る単価契約をG社と締結している。このうち、同裁判所沖縄支部の24年3月納品分(75品目、122,421円)については、G社が同支部に提出した納品書の日付が24年3月23日となっており、同支部の同日付け検査調書においても納品年月日欄の記載は3月23日となっていた。

しかし、G社が保存していた納品書(控)の余白には、「3/8 4点未納」との記載と支部担当者の印が押印されており、その下には更に「3/27 完納」の記載と同支部担当者の印が押印されていた。そして、実際は一部の品目が検査調書の納品検査日である3月23日よりも後の3月27日に納品されていた。

② 検査職員に任命された者が実質的な検査を行うことなく、物品を受領した者から納品の報告を受けて確認していたり、検査職員が納品された物品の外観検査をしただけで動作確認を怠ったため、作動しない物品があるのに検査を完了したとしていたりしていて、検査の方法が徹底していなかったもの
最高裁判所、静岡、新潟両地方裁判所、新潟家庭裁判所

5件 同1108万余円

③ 仕様書で定めた内容が示されていない業務完了報告書が繰り返し提出されていたにもかかわらず、業者から毎月提出される請求書に対して検査に合格したとしていたもの
盛岡地方裁判所、静岡家庭裁判

2件 同86万余円

(エ) 会計検査院による業者等に対する検査

裁判所において調達手続が適正に行われているかを検証するために、23年度又は24年度に最高裁判所及び38高地家裁と契約の実績のある業者等の中から、契約金額等を勘案して14業者等を選定して、業者等が保有する総勘定元帳等の帳票類と各裁判所が保存している会計書類とを突合するなどして不適正経理が行われていないかを会計検査院が検査したところ、事例3のように検査調書上の納品年月日と実際の納品年月日が異なるなどの事態は見受けられたものの、各裁判所に納品された物品等の数量が業者等が保有する帳票類に記載された数量と異なる事態は、検査した範囲では、見受けられなかった。

イ 最高裁判所及び各裁判所が執った処置

ア(ア)から(ウ)までの事態についての会計検査院の指摘を受けて、最高裁判所は、「公共調達の適正化について(通知)」(平成25年8月6日最高裁経監第959号)等を下級裁判所に発するとともに、監査事務担当者会議等において、同様の事態が起こらないよう各裁判所に周知徹底を図るとともに、内部監査において、調達手続についての指導を徹底するなどして再発防止に取り組んでいる。

また、ア(ア)から(ウ)までの事態が見受けられた各裁判所においても、発注関係の書類を一定期間保管するなどの取扱いに改めるなど、再発防止に取り組んでいる。