福島県における東日本大震災による被災及び復旧・復興の状況、被災者に対する支援等はどのように実施されているか、特に、福島県では、原子力災害による影響が甚大で、復興の妨げともなっていることから、除染及び放射性物質汚染廃棄物の処理並びに健康管理等の事業の実施状況はどのようなものとなっているかなどに着眼して調査を実施した。
調査に当たっては、被災の状況や管内市町村の状況等を総合的に考慮して、県各部局等より説明を受けるなどの方法による実態調査とし、管内市町村の状況についても県から説明を受けることとした。調査対象事業については、被災状況及び国から福島県に交付された原子力災害関係の経費項目に係る事業に限定することとした。
また、会計検査院は24年報告において、国は、「復興施策の推進及び支援に当たっては、被災した地方公共団体の意向や要望、取り組んでいる復興施策を踏まえた経費の配分や事業費の積算を行うこと」との所見を掲記したことなどから、福島県の意向等についても聴取した。なお、本報告の件数、金額等の計数等については、本院が実態調査を実施した25年7月時点において福島県が把握している数値等であり、一部の数値は概数となっている。
東北地方太平洋沖地震により、福島県では白河市等10市町において震度6強を観測したほか、福島市等37市町村において震度5強以上の揺れを生じ、人的被害、建物への甚大な被害を被るなどした。また、東京電力福島第一原子力発電所において発生した事故(以下「原発事故」という。)による放射性物質の拡散に伴い、多数の県民が長期にわたる避難を余儀なく強いられたり、風評被害を被ったりなどしている。
福島県における東日本大震災による地震・津波による被害(24年3月23日現在)についてみると、県及び市町村所管の公共施設等被害報告額だけでも、公共土木施設約3162億円、農林水産施設等約2753億円、文教施設約379億円、計5994億円と多額に上っている。なお、この報告額には、南相馬市の一部及び双葉郡管内8町村の各市町村の被害額は含まれていないこと、福島第一原発から30㎞圏内の県所管分の被害報告額は航空写真による推計額であること、また、原子力災害による被害額は含まれていないことから、これらの被害額よりもはるかに甚大な被害を被っているものと考えられる。
これらの被害及び支援等の状況について、福島県各部局等より説明を受けた事項は次のとおりである。
人的被害の状況についてみると、25年6月28日現在、死者数3,246人、行方不明者5人、負傷者182人であり、その内訳は、津波や建物の倒壊等の地震による直接死が1,599人、避難生活での体調悪化や過労等による震災関連死が1,426人、いまだ行方が不明であるものの死亡届等が出されている者が221人となっていて、市町村別では、南相馬市1,055人、相馬市479人、浪江町453人、いわき市446人等となっている。
福島県では、避難生活の長期化等の影響により、震災関連死者数が他の被災都道県と比較して突出しており、特に、避難指示区域に指定されている10市町村のうち9町村では、長期間の避難生活による心労等により震災関連死が852人と、直接死309人を大幅に上回っている。
福島県では、全域の市町村が特定被災区域に指定され、また、原発事故により大量の放射性物質が放出されたため、国は、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)に基づき、23年3月12日、半径20㎞圏内の住民等に避難するよう指示するなどし、その後、警戒区域等の避難指示区域が設定された。避難指示区域については積算線量等に応じて順次見直しが行われ、25年8月8日現在、2市6町3村が避難指示解除準備区域に、1市4町3村が居住制限区域に、1市4町2村が帰還困難区域に設定されている。
福島県の避難者数は、発災直後の23年3月末に85,629人、その後、24年5月末の164,207人をピークとして減少に転じているが、25年6月6日現在においても150,146人が避難を余儀なくされている。
上記150,146人の避難者の内訳は、県内避難者96,044人、県外避難者53,960人、避難先不明者142人であり、これらの避難者には、原発事故による放射能汚染により自主的に避難している者も多数含まれている。
県内避難者の避難先についてみると、福島市476人、郡山市1,604人、いわき市7,690人等となっており、県内市町村は、自らも被災する中、多くの被災者を受け入れている。また、県外避難者は、24年3月の62,831人をピークに減少に転じているが、避難先は全都道府県に及んでおり、主な避難先は、山形県8,549人、東京都7,274人、新潟県5,045人等となっている。
福島県では、県外への避難者について、避難の長期化や経済的負担、精神的疲労等への不安や、避難先である民間賃貸住宅の契約更新時期を契機として帰還の動きが進んでいると考えており、今後も引き続き故郷への帰還に結びつくよう、受入市町村と連携して避難者に対する支援を行うなどして、帰還に向けた環境整備に取り組んでいくこととしている。
福島県では、災害救助法(昭和22年法律第118号)に基づき、応急仮設住宅の供与や災害公営住宅の建設等を実施している。また、県民健康管理事業や避難者の心のケア事業等を実施するとともに、避難者の多い近隣13都県へ職員を派遣して避難者からの相談対応や避難者受入市町村との連絡調整に当たるなど様々な支援を実施している。
県内避難者96,044人の居住の状況についてみると、民間賃貸仮設住宅が56,383人と最も多く、このうち賃貸借契約を県との契約に切り替えた賃貸住宅への避難者が53,524人とその大部分を占めており、次いで建設型応急仮設住宅30,692人、公務員宿舎等4,420人、親戚・知人宅等3,226人等となっている。
民間賃貸仮設住宅については、民間賃貸住宅等の居室の借上費の一部について、1世帯当たり4人以下の場合は月額6万円、同5人以上の場合は同9万円をそれぞれ上限として支援しており、25年6月末現在の借上住宅戸数は24,301戸であり、このうち自主避難者に係るものは374戸となっている。
建設型応急仮設住宅は、災害救助法に基づき、福島県知事が供与するもので、16,890戸の建設が計画され、25年6月末現在、16,800戸が完成し14,443戸が入居済みとなっている。
県外避難者53,960人の居住の状況についてみると、民間賃貸仮設住宅が27,786人、公営住宅等14,960人等となっており、震災後唯一残された避難所である埼玉県加須市の旧高等学校は双葉郡双葉町の住民118人の避難先となっている。
福島県におけるこれらの応急仮設住宅に係る借上費及び建設費等の実績額についてみると、民間賃貸仮設住宅に係るものが、23年度185億余円、24年度211億余円、建設型応急仮設住宅に係るものが、23年度1309億余円、24年度171億余円と多額に上っており、これらの経費に対しては、厚生労働省所管の災害救助費等負担金により、その約9割に相当する額が福島県に交付されている。
福島県では、原子力災害という特殊性から避難生活が長期化する中、家族の就学・就労等の事情により被災者の置かれている状況が多様化しつつあり、特に5万人を超える県民が県外に避難し、県内外に多数の県民が自主的に避難しているなどの事態は、県及び市町村の業務量の増加を含め、災害救助法等の従来の制度の想定を超えているなどとして、国に対し、応急仮設住宅の供与期間の延長や避難者支援を行う受入自治体や民間団体等に対する継続的な財政支援等を強く要望している。
災害公営住宅(復興公営住宅)は、25年6月末現在、地震・津波被災者向け住宅として、いわき市の1,469戸を含む10市町計2,544戸が計画され、相馬市の3団地計80戸が既に完成している。また、原発避難者向け住宅として、いわき市の約1800戸を含む約3700戸が第1次分として計画されており、そのうち500戸については既に着手され、26年度当初より順次入居が開始される予定となっている。
福島県では、原子力災害の発生を受け、全県民を対象とする様々な健康調査・支援等を行う県民健康管理事業を実施している。また、ストレスを抱える被災者のケアを実施するため、厚生労働省からの障害者自立支援対策臨時特例交付金により、23年度に「ふくしま心のケアセンター」の基幹センターを、24年度に県内6か所に方部センターを開設し、心の専門職員等による相談等を実施するとともに、安心こども基金を活用した「子どもの心のケア事業」を実施するなどしている。
25年3月末現在における東日本大震災の被害に係る災害弔慰金、災害障害見舞金のそれぞれの支給人数及び交付額についてみると、災害弔慰金は2,952人に対して85億余円、災害障害見舞金は29人に対して4375万円が交付されている。また、災害援護資金は、貸付済件数2,763件、貸付済額50億余円となっている。
建物への被害は、全壊21,145戸、半壊72,875戸、一部破損166,186戸、床上浸水1,061戸、非住家被害29,931戸となっている。
住宅が全壊するなど、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対しては、被災者生活再建支援制度により支援金が支給されることとなっており、25年7月末現在の支給状況は、基礎支援金27,504世帯(216億余円)、加算支援金16,009世帯(210億余円)となっている。なお、加算支援金は、建設・購入等住宅の再建方法に応じて支給されるものであることから、基礎支援金の支給を受けた上記世帯の58.2%にとどまっている。
庁舎、公舎等への被害は、津波による全壊が水産種苗研究所等9施設、壁面崩落や基礎地盤の変形等による半壊が庁舎等6施設、地盤沈下、浸水等による一部損壊等の被害を含めた計39施設となっている。
公立学校、社会教育施設等の教育施設への被害は、県、市町村合わせて581件となっている。このうち被災した県立学校は75件、市町村立学校等は359件、その被害額は約379億円と推計されている。
また、病院、保健衛生施設、老人福祉施設等の福祉施設への被害は、県、市町村合わせて306件、被害額約148億円と推計されている。
河川、道路、港湾等の公共土木施設への被害は、県、市町村合わせて4,949か所、被害額約3162億円と推計されている。施設別では、海岸199か所、約791億円、漁港284か所、約706億円、港湾204か所、約444億円等とされており、地域別では、浜通りが2,097か所、約2788億円と、津波により沿岸部の施設に甚大な被害を生じている。また、中通りにおいても下水道及び公園施設102か所、約140億円等地震の揺れに伴う被害を受けている。
避難指示区域において被災した公共土木施設の復旧状況についてみると、避難指示解除準備区域内では、年間積算線量が20mSv以下である区域から順次、災害査定、復旧工事を実施しており、居住制限区域内では除染等により線量が低減された箇所から順次災害調査を実施するとしているが、帰還困難区域内については未定であるとしている。
上水道施設への被害は、管路等7,665件、管路総延長132,323mで損傷、変形等が発生し、震災直後の断水戸数は443,928戸(断水率約65%)、被害額約173億円と推計されている。25年3月末現在、これらはおおむね復旧しているものの、津波被害地域、避難指示区域等の断水戸数は23,109戸となっており、警戒区域内の調査は実施できない状況であることから復旧時期は未定となっている。
県営の工業用水道への被害は、5工業用水道において108か所で管路本体の損傷、水管橋のたわみなどが発生し、被害額は約11億円と推定されているが、24年度末までに全ての災害復旧を完了している。なお、工業用水を受水する企業の状況についてみると、東日本大震災の影響で受注及び生産量が激減し、現在もその影響が続いている企業や、風評被害等により生産再開の見通しが立っていない企業もあるとのことである。
福島県では、23年3月の東日本大震災の発生後も同年7月の新潟福島豪雨及び同年9月の台風15号と度重なる災害を受け、県が所管する土木部関連公共施設等の被害報告額(第1報)は2700億余円と多額に上っている。
これらの被災箇所における災害復旧事業の実施状況についてみると、会津方部、中通りではほぼ100%の箇所が着手され、中通りでは、25年6月末現在、92%の箇所で実施した事業が完成している。
一方、浜通りについてみると、被災を受けた道路、河川、海岸、漁港等の公共施設等の復旧に当たっては、避難指示区域の再編に併せて順次災害査定を実施することとされ、避難指示解除準備区域の指定を受けた9市町村及び隣接する広野町では、24年7月より災害査定を実施し、25年8月2日現在、189か所が災害復旧事業の対象とされ、復旧工事に着手するなどしているが、町の大部分が居住制限区域や帰還困難区域とされた大熊町、双葉町の2町の管内では、高線量の放射性物質のため正確な被害状況の把握に至っておらず、災害査定を実施している箇所がいまだ1件もない状況である。
福島県によれば、原子力災害により立入りが制限されていたり、津波等による被害が甚大であったりしていることにもよるが、今後、事業を円滑に実施するためには、現在、国が直轄で実施している除染の迅速な執行や、工事に当たって必要となる用地の速やかな買収等が不可欠であり、これらについては、東京電力と被災者との財物賠償等の話合いの進展等が待たれることなどから、国において速やかな解決を図られることを要望している。
福島県における災害廃棄物等の推計量は、25年3月末現在、災害廃棄物345万t、津波堆積物184万t、計530万tとされており、災害廃棄物は震災前の年平均排出量の5倍に相当する量が発生している。なお、上記の345万tには、避難指示区域見直し前の警戒区域及び計画的避難区域の各区域内の災害廃棄物47万tが含まれており、これらは国が直接処理・処分を行うこととされている。
上記災害廃棄物345万tのうち、国が直接処理・処分を行うとされた47万tを除く298万tについてみると、236万tが仮置場に搬入され、このうち144万tについて処理・処分が行われている。一方、津波堆積物は92万tが仮置場に搬入され、処理・処分が行われたのは2万tにとどまっている。
福島県及び管内市町村等が実施している災害廃棄物等の処理状況について調査したところ、次のとおり、仮置場の確保や廃棄物処理施設での処理等の遅れなどの事態が見受けられた。
仮置場の確保については、放射性物質による汚染の懸念や仮置場での保管の長期化等に対する不安、また、搬入する災害廃棄物を仮置場の所在する地区等の範囲にとどめることなど、周辺地域の住民等との合意形成に時間を要したことなどにより、必要とされる仮置場の確保が困難となっている。
災害廃棄物等は、仮置場から廃棄物処理施設に搬入され、焼却や破砕処理が行われることとなるが、廃棄物処理施設の周辺の地域では、環境の悪化や地下水の汚染への懸念、最終処分場の確保の遅延等による焼却灰等の廃棄物処理施設内での保管の長期化等に対する不安等により、周辺地域の理解を得るのに時間を要している。
現在、焼却灰等については、施設敷地内に一時保管している状況であるが、他の場所を確保することは困難な状況となっており、福島県では、国において速やかな解決を図られることを要望している。
農林水産業への被害は、被害額約2753億円と推計されており、主な内訳は農地・農業用施設の被害が4,358か所、約2302億円で、このうち農地の崩壊・流出等が1,283か所5,991ha、約935億円、林地の崩落等が103か所、約106億円と推計されている。また、水産の被害額は約263億円で、このうち水産関連施設が1,341か所、約190億円、漁船873隻、約66億円等と推計されている。
上記の農地、林地、漁業等農林水産業の被害は、原子力災害による被害額は含まれておらず、また、避難指示区域内の被害状況の把握が困難であることなどから、これらの被害額よりもはるかに甚大な被害を被っているものと考えられる。
福島県では、農林水産業の生産基盤の被害に加え、多くの農林漁業者が避難生活を余儀なくされる中、放射性物質による出荷制限や作付制限、作付自粛、更には県全域が風評被害に苦しめられ、今なお多くの品目が震災前の価格水準に戻っていない。このため、23年の農林水産業産出額は震災前と比べ、農業で20.6%減、林業で30.1%減、海面漁業で52.2%減と大きな打撃を受けている。
また、長期にわたる経営休止は、農地の荒廃や野生獣による農山村環境の破壊、水産業にあっては操業再開の見通しが立たずいまだ試験操業にとどまるなど、生産意欲の低下や生活再建が困難になることが懸念されている。
福島県では、福島県原子力災害等復興基金に営農再開勘定として231億8500万円を積み立て、営農再開支援事業として除染後に農業者が円滑に営農活動を再開できるよう様々な対策が講じられているが、県双葉農業普及所が24年11月に実施した双葉郡管内8町村の認定農業者等318人を対象としたアンケート結果によると、23年11月の調査では、回答者の69.8%が帰還後に営農再開するなど農業に従事する意向を示していたものが、同46.6%に減少し、生産者が将来に不安を持ち生産意欲を失いかけているとして、浜通りの現地での営農実証研究や技術支援、先端技術の調査研究等を担う研究拠点の早期の整備等を強く要望している。
このほか、県土面積の7割を占め、林産物の生産はもちろんのこと、山間部における地域住民の生活等の一部となっている森林の除染が懸案となっている。国においても、住居等の近隣に所在する森林を除染対象範囲とするとともに、森林における除染等の実証事業を実施するなどしているが、福島県では、住民の安心・安全のためにも、森林全体の除染方針を早期に決定し推進する必要がある旨の要望書を国に提出している。また、農業用ダム、ため池の底質等に蓄積した放射性物質が豪雨等で流出して水田等に流入することが懸念されているとして、これらを除染対象に位置付ける必要がある旨の要望書を提出している。さらに、水産業は、現在、操業再開の見通しが立たない状況であり、放射性物質汚染地下水の漏えい防止対策の徹底や、多様な検体を迅速に検査できる非破壊型検査機器の開発、放射性物質低減技術の研究、漁業担い手の確保等に対する国の十分な指導・支援を求める旨の要望書を国に提出している。
商工業への被害額は、約3597億円と推計されており、主な内訳は、製造業の建物・設備、在庫等が約2198億円、商業の建物及び在庫が約1399億円となっている。地震・津波により浜通り地域に大きな被害が生じたが、福島県の商工業は、東北新幹線や東北自動車道等の交通網の整備により首都圏との近接利便性が高いことなどから、産業集積度が高い中通り地域の被害が最も大きくなっている。
原発事故は、多くの事業者の事業休止や移転を余儀なくさせ、風評被害は県産業全般に及んでおり、福島県では、全県域を対象に、被災事業者の事業再開・継続支援、雇用の場の確保及び風評払拭のための施策を総力を挙げて取り組んできている。
雇用機会創出等については、厚生労働省からの緊急雇用創出事業臨時特例交付金により創設された基金を活用し、震災等緊急雇用対応事業や事業復興型雇用創出事業(県事業名:ふくしま産業復興雇用支援事業)等を実施し、23、24両年度において47,094人の雇用を創出(事業費360億円)している。
被災企業の事業再開支援については、経済産業省からの「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」の補助金交付決定額約803億円により、計2,777者の支援を実施し、新規企業の立地や既存立地企業の新増設等については、「ふくしま産業復興企業立地補助金」により計363件、投資額3900億余円の新増設を図っている。
福島県によれば、25年6月20日現在、原子力災害による旧警戒区域等に所在する双葉郡内の商工会会員事業者2,053者のうち、事業を再開できたのは969者(47.2%)であり、そのうち地元での事業再開は200者(9.7%)にすぎない。このため、住民の帰還等に向けた短期的な雇用対策を講じつつ、産業復興と一体となった雇用支援の継続が特に重要であり、上記事業の来年度以降の継続実施及び必要な予算措置を国に要望している。
福島県では、地震及び原子力災害により、多くの児童生徒が転校を余儀なくされ、25年5月1日現在、県内での転校4,916人、県外への転校9,299人となっている。福島県によれば、県外に転校した児童生徒は、少しずつ福島県に戻りつつあるが、いまだに1万人に近い児童生徒が県外へ転校したままであり、多くの児童生徒が仮設住宅等の自宅以外での生活を強いられている。また、帰還困難区域等が指定されたことなどにより、臨時休業中の学校が10校、仮設校舎等、本来の場所以外で学習を余儀なくされている学校が45校に上っているなど、生活環境及び学習環境が震災前と大きく変化している状況にあり、一部の児童生徒には、学習への不安や意欲の低下等の兆候も現れており、長期的な視野を踏まえた支援が必要となっている。
福島県では、国からの支援等により、毎年度500人前後の教職員の加配を受けている。また、心のケアや学習支援等のため、23、24両年度に延べ767人のスクールカウンセラーの派遣やスクールソーシャルワーカーとの連携を図るなどしており、両年度の緊急スクールカウンセラー等派遣事業(事業費6億6611万余円)による相談件数は計101,633件となっている。しかし、児童生徒の生活が元通りになるまでには相当長期の期間が予想されること、県内に在住するスクールカウンセラー有資格者が不足していることなどから、県では、長期にわたる財政及び体制の支援を要望している。
このほか、国の「被災児童生徒就学支援等臨時特例交付金制度」による幼稚園児の入園料・保育料及び小中学生の学用品費等に対する補助を実施しており、その実績は、幼児への就園支援が23年度31市町村、1,873人、計1億5650万余円、24年度24市町村、1,780人、1億9141万余円、児童生徒への就学支援が23年度53市町村、11,127人、9億8181万余円、24年度50市町村、8,220人、11億2085万余円となっている。また、就学が困難となった高等学校の生徒に対しては、奨学資金の返還を免除する制度を新設し、その実績は、23年度に1,545人、貸与額3億6132万余円、24年度に1,334人、同3億2648万余円となっている。
福島県では、東日本大震災、特に、原発事故により、深刻な放射能汚染が引き起こされ、15万人に及ぶ県民が県内外に避難するなどの甚大な被害をもたらしたことから、避難者に対する支援や県民に対する健康福祉等を実施するとともに、東京電力が行う廃炉に向けた取組に対する監視や除染等を実施している。
そこで、福島県における復旧・復興に係る予算の状況、原子力災害関係の経費項目に係る事業の実施状況について、基金事業及び補助事業に区分して調査した。
福島県における東日本大震災の発生後の一般会計歳出予算の推移についてみると、3月11日の東日本大震災発生時には、既に23年度当初の歳出予算9000億余円が決定されていたが、避難者支援や災害復旧のほか、除染対策や県民健康管理等に要する費用等に対応するため同年度に12度の補正予算を編成した。補正後の歳出予算の累計額は2兆3715億余円と、当初予算の約2.6倍となり、そのうち震災関連予算は1兆4619億余円と補正予算による増額の大半を占めることとなった。
24年度は、当初の一般会計歳出予算として1兆5764億余円を編成していたが、警戒区域の一部見直しにより実施可能となった災害復旧事業や県民の健康を守るための事業等に要する費用等に対応するため23年度と同様12度の補正予算を編成した。補正後の歳出予算の累計額は1兆8068億余円となり、そのうち震災関連予算が9328億余円と多額に上っている。
福島県では、上記予算を編成するに当たり、国より交付された多額の地方交付税、国庫支出金等を財源として受け入れているが、原子力災害の長期化等により、今後とも除染等、多額の経費が必要となることが予想されるとして、その財源の確保が喫緊の課題となっており、国に対して長期的、安定的支援を求めている。
福島県では、原子力災害関係の経費項目に係る国庫補助金等により3基金を設置造成し、1基金を積み増しており、これらの4基金(24年度末造成及び積増し額計5824億余円)の中で実施されている原子力災害関係の主な事業は次のとおりである(表1参照)。
この基金は、原発事故による災害及びその影響から県民の健康を守るために実施する県民の健康管理に資する事業に要する資金を積み立てることを目的として設置された基金(24年度末造成額4666億余円)である。主な事業についてみると、次のとおりである。
① 内閣府から交付された補助金により、放射性物質の除染の推進、農業系汚染廃棄物の処理、避難者の帰還支援、環境放射線のモニタリングに係る事業等(以上、表1中のa)及び校舎や保育施設の空調設備等の導入等の事業等(以上、表1中のb)を実施している。
② 経済産業省から交付された交付金(表1中のc)に、東京電力からの賠償金250億円を基金に繰り入れた計1031億余円により、県民の健康状態を把握し、疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、もって、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図るため、様々な健康調査・支援等を行うことを目的に、全県民を対象とした健康管理調査や内部被ばく測定機器の整備等を実施している。
③ 環境省から交付された補助金(表1中のd)により、市町村に対する除染対策支援事業及び県有施設に関する除染対策事業等を、また、環境省から交付された交付金(表1中のe)により、県民の健康管理の拠点としての放射線医学県民健康管理センターの整備や人材育成等を実施している。
この基金は、平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律(平成23年法律第91号)に規定されている「原子力被害について応急の対策に関する事業等に要する経費を支弁するための基金」として設置された基金(24年度末造成額403億余円)であり、内閣府から交付された補助金(表1中のf)により、給食施設のある学校に対する放射線検査機器の購入、地域ブランドイメージの回復へ向けた取組を行う市町村や地域住民等への活動の支援等の風評被害対策関係の事業等を実施している。
この基金は、原子力災害等の被災者の生活の再建の支援、放射線医学に関する研究機関の整備、企業の立地の支援その他の原子力災害等からの復興に資する事業及び原子力災害等から復興するために市町村が行う事業に要する資金を積み立てることを目的として設置された基金(24年度末造成額752億余円)である。主な事業についてみると、次のとおりである。
① 文部科学省から交付された補助金により、福島県立医科大学が行う放射線医学最先端診断に係る研究開発拠点の整備(表1中のg)及び放射線医学総合研究所が行う放射線核種の生態系における環境動態調査等(表1中のh)を実施している。また、農林水産省より交付された補助金により、放射性物質対策の研究拠点の整備に向けた計画等を策定するための調査(表1中のk)を実施している。
② 経済産業省から交付された補助金により、医療福祉機器・創薬産業拠点整備事業(表1中のl)及び医療機器の開発・安全性評価、事業化支援を行う医療機器産業支援拠点の整備を行う事業(表1中のm)を実施している。また、文部科学省から交付された補助金により、放射線医学研究開発拠点整備事業(表1中のj)を実施している。
従来、福島県において設置されている基金であり、内閣府(消費者庁)から交付された交付金により、消費生活相談に係る体制の強化その他の消費者行政の活性化を図るとともに、福島県及び管内市町村において消費者から持ち込まれた食品の放射性物質検査を行うための放射能簡易分析装置の整備等(表1中のn)が実施されている。
各基金では、一部の補助金を除き、各所管省庁から交付された補助金等ごとに区分してその執行状況が管理されている状況となっていたことから、各所管省庁の補助金等ごとに24年度末の基金事業の執行状況をみると、表1のとおり、国から交付された補助金等の額は、23、24両年度で計5824億7710万余円、取崩額計3377億8127万余円、基金事業執行率は57.9%となっている。
各基金による主な事業の実施状況等について調査したところ、次のとおりとなっていた。
表1 福島県における原子力災害関係の補助金等に係る基金事業の実施状況
(単位:件、百万円、%)
基金名 | 予算年度 | 所管 | 補助金等名 | 平成24年度末現在 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
造成又は積増額(A) | 累計取崩額(B) | 24年度末に保有する国庫補助金等相当額 | 基金事業執行率(B/A) | |||||
福島県民健康管理基金 | 23 | 内閣府 | 放射線量低減対策特別緊急事業費補助金(2次補正予備費) | 199,999 | 170,945 | 29,054 | 85.4 | a |
放射線量低減対策特別緊急事業費補助金(2次補正) | 17,981 | 7,467 | 10,514 | 41.5 | b | |||
経済産業省(環境省) | 原子力被災者健康確保・管理関連交付金 | 78,182 | 16,219 | 61,963 | 20.7 | c | ||
環境省 | 放射線量低減対策特別緊急事業費補助金(3次補正) | 164,463 | 100,676 | 63,786 | 61.2 | d | ||
24 | 環境省 | 原子力災害健康管理施設整備費交付金 | 5,980 | 30 | 5,949 | 0.5 | e | |
計 | 466,607 | 295,339 | 171,268 | 63.2 | ||||
福島県原子力被害応急対策基金 | 23 | 内閣府 | 放射線量低減対策特別緊急事業費補助金(応急対策事業) | 40,385 | 35,079 | 5,305 | 86.8 | f |
福島県原子力災害等復興基金 | 23 | 文部科学省 | 放射線医学研究開発拠点整備費等補助金(放射線医学最先端診断に係る研究開発拠点の整備) | 11,362 | 2,582 | 8,780 | 22.7 | g |
放射線医学研究開発拠点整備費等補助金(放射線核種の生態系における環境動態調査等) | 2,245 | 76 | 2,169 | 3.3 | h | |||
放射線医学研究開発拠点整備費等補助金(低線量域における被ばく線量モニターの開発) | 625 | 238 | 387 | 38.1 | i | |||
放射線医学研究開発拠点整備費等補助金(福島県環境創造センター整備) | 8,042 | 230 | 7,812 | 2.8 | j | |||
農林水産省 | 農林水産再生研究拠点整備費等補助金 | 100 | 2 | 97 | 2.7 | k | ||
経済産業省 | 医療福祉機器・創薬産業拠点整備事業費補助金 | 39,493 | 4,144 | 35,348 | 10.4 | l | ||
24 | 経済産業省 | 医療機器産業拠点整備等事業費補助金 | 13,390 | - | 13,390 | - | m | |
計 | 75,259 | 7,274 | 67,985 | 9.6 | ||||
福島県消費者行政活性化基金 | 24 | 内閣府(消費者庁) | 地方消費者行政活性化交付金 | 224 | 88 | 136 | 39.2 | n |
合計 | 582,477 | 337,781 | 244,695 | 57.9 |
汚染状況重点調査地域に指定された県内40市町村が実施する除染については、内閣府及び環境省から交付された「放射線量低減対策特別緊急事業費補助金」により造成された「除染対策基金(福島県民健康管理基金の一部)」(24年度末までの積立額計3644億余円。表1中のa及びd)を活用して実施することとされ、24年度末までの取崩額は計2716億余円(執行率74.5%)と多額に上っており、除染実施計画を策定した36市町村が除染を実施している。
福島県では、除染事業が今後も長期間継続されることから、国に対して十分な財源の確保を要望するとともに、除染対策基金の活用に当たり、各市町村の実情や除染対象物の種類や状況等に応じて、除染手法を柔軟に決定できるようにするなどの要望が市町村より多数寄せられているとして、併せて国に要望している。
放射性物質に対する県民の不安を解消するなどのため、ゲルマニウム半導体検出装置等の機器を購入(23年度の購入費計1億余円、24年度の購入費計4億余円)したり、移動モニタリング(23年度計3億余円、年間延べ2万2千箇所測定、24年度計2億余円、年間延べ2万箇所測定)を行うなどして空間線量の測定を実施したり、23年度に新たに購入した放射能簡易分析装置352台(購入費計13億余円)等による自家消費野菜等の放射性物質の測定を実施(24年度検査実績約19万6千件)し、その測定結果をホームページに公表するなどしている。
これらの機器の購入や測定費等については、福島県民健康管理基金、除染対策基金(福島県民健康管理基金の一部)(表1中のa)や福島県消費者行政活性化基金等を活用しており、今後も多額の維持経費等が必要となることが予想されている。
震災時におおむね18歳以下であった全県民を対象とした甲状腺検査(23、24両年度の検査実施済人数175,499人、24年度事業費約3億円)や、内部被ばく線量を測定するためにホールボディーカウンター検査機器(WBC)を使用した内部被ばく線量検査(同123,050人、約9億円)、健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査等を実施している。
これらの検査費等については、経済産業省から交付された「原子力被災者健康確保・管理関連交付金」(24年度末までの積立額計781億余円。表1中のc)及び東京電力からの賠償金を財源とする「県民健康管理基金(福島県民健康管理基金の一部)」を活用して実施することとされ、24年度末までの取崩額は計162億余円(執行率20.7%)と多額に上っている。
福島県では、これらの事業を今後も長期にわたって実施していくとの認識から、国による十分な財政措置を望むとともに、市町村が住民等に対して実施するWBC検査等の健康管理事業に対しても十分な財政支援を要望している。
福島県の観光産業は、原子力災害による風評被害等により、23年の観光客入込数(3521万人)が、22年と比べ2197万人(38.4%)減少し、同じく県内における旅行・観光消費額(約2333億円)が、22年と比べ約691億円下回るなど厳しい状況に置かれている。県産品についても、いまだに多くの農林水産物が震災前の市場価格水準を割り込んでおり、加工食品についても取引停止等により約7割の事業者が震災前よりも売上が減少している。
福島県では、風評被害の払拭には、観光客や消費者、流通業者等に対して安全性確保の取組や放射性物質検査情報、観光地の魅力等の正しい情報を繰り返し発信するとともに、実際に福島の観光地を訪れたり、食したりして安全性を実感してもらうことが極めて重要であるとして、内閣府より交付された放射線量低減対策特別緊急事業費補助金(応急対策事業)(表1中のf)等により造成された「福島県原子力被害応急対策基金」を活用した市町村が実施する地域ブランドイメージの回復へ向けた事業を支援するための交付金の交付や観光復興キャンペーン事業等、様々な風評対策、誘客対策等を実施している。
一方、管内市町村からは、県に対して、市町村の実情に応じた観光風評対策への取組に対しての財政的な支援を求められており、福島県は国に対して、市町村に対する助成についての早期の制度化や、観光客の増加に極めて効果のあるインセンティブ補助等にも活用できるよう制度の弾力的な運用を要望している。
福島県では、文部科学省より交付された「放射線医学研究開発拠点整備費等補助金」(24年度末までの積立額計222億余円。表1中のg、h、i及びj)、経済産業省より交付された「医療福祉機器・創薬産業拠点整備事業費補助金」(同394億余円。表1中のl)等により造成された「福島県原子力災害等復興基金」を活用した医療福祉機器・創薬産業拠点整備事業等を実施している。
これらの基金事業の執行状況についてみると、24年度末現在、取崩額が72億余円(執行率9.6%)と低くなっているが、これは、研究施設の本体工事が25年度以降に実施される予定となっていたり、研究拠点の選定が遅延していたりしているためである。
福島県では、原子力災害関係の経費項目に係る国庫補助金等により、23、24両年度に、森林における除染等実証事業や保育所等の社会福祉施設の災害復旧事業及び公立学校の各種施設、設備等の復旧事業を実施しており、その補助金交付決定額は、表2及び表3のとおり、23年度計8億0482万余円、24年度計4億6029万余円となっている。
このうち、森林における除染等実証事業は、原発事故により、放射性物質に汚染された地域の約7割を占める森林の除染について、全体を除染することが極めて困難であるが、森林の持つ公益的機能を維持しながら、避難住民の帰還等を促し、林業・木材産業の活動を可能にするためには、放射性物質の拡散を防止しつつ、徐々に低減させていくことが重要であり、そのための技術の検証・開発を行うとともに、被災自治体や民有林において当該技術の実証を行うものとして、24年度以降も引き続き農林水産省所管の補助事業として実施されるものである。
また、社会福祉施設及び公立学校施設等の復旧事業は、園庭又は校庭の空間線量率が1µSv/h以上となった土壌処理を行うことなどを目的として、23年度に、厚生労働省及び文部科学省の補助事業として実施されたものである。24年度は、23年度事業の繰越事業のみの実施となっている。
表2 福島県における補助事業の実施状況(平成23年度事業)
(単位:千円、%)
所管省庁 | 補助事業名 | 平成23年度末の状況 | 24年度末の状況文 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
交付決定額 | 受入額 | 繰越額 | 不用額 | 補助事業執行率 | 補助事業繰越率 | 補助事業不用率 | 受入額(累計) | 補助事業執行率 | ||
(A) | (a) | (b) | (c) | (a/A) | (b/A) | (c/A) | (a´) | (a´/A) | ||
農林水産省 | 森林における除染等実証事業費補助金 | 30,864 | 12,042 | 18,822 | - | 39.0 | 60.9 | - | 30,864 | 100.0 |
厚生労働省 | 社会福祉施設等災害復旧費国庫補助金 | 176,627 | 144,922 | 31,705 | - | 82.0 | 17.9 | - | 175,728 | 99.4 |
文部科学省 | 学校給食検査設備整備費補助金 | 4,991 | 4,965 | - | 26 | 99.4 | - | 0.5 | 4,965 | 99.4 |
公立学校施設災害復旧費国庫負担金 | 16,797 | 16,797 | - | - | 100.0 | - | - | 16,797 | 100.0 | |
公立学校施設災害復旧費国庫補助金 | 575,547 | 575,547 | - | - | 100.0 | - | - | 575,547 | 100.0 | |
計 | 597,335 | 597,309 | - | 26 | 99.9 | - | 0.0 | 597,309 | 99.9 | |
合計 | 804,826 | 754,273 | 50,527 | 26 | 93.7 | 6.2 | 0.0 | 803,901 | 99.8 |
表3 福島県における補助事業の実施状況(平成24年度事業)
(単位:千円、%)
所管省庁 | 補助事業名 | 平成24年度末の状況 | ||||||
交付決定額 | 受入額 | 繰越額 | 不用額 | 補助事業執行率 | 補助事業繰越率 | 補助事業不用率 | ||
(A) | (a) | (b) | (c) | (a/A) | (b/A) | (c/A) | ||
農林水産省 | 森林における除染等実証事業費補助金(23年度繰越予算からの交付分) | 116,863 | 76,348 | - | 40,514 | 65.3 | - | 34.6 |
森林における除染等実証事業費補助金(24年度予算からの交付分) | 343,432 | 106,207 | 233,019 | 4,205 | 30.9 | 67.8 | 1.2 | |
合計 | 460,295 | 182,556 | 233,019 | 44,719 | 39.6 | 50.6 | 9.7 |
これらの事業の執行状況についてみると、23年度における社会福祉施設及び公立学校施設等の復旧事業はいずれも高い執行率となっている。森林における除染等実証事業は、専門家による調査方法の検証、事業実施箇所及び対象面積の確定に不測の日数を要したため、23年度に事業を実施できずに繰り越したものなどであるが、24年度末現在の実施状況をみると、補助事業執行率は100%となっている。
24年度の森林における除染等実証事業は、国庫補助金の交付決定額4億6029万余円、受入額1億8255万余円、補助事業執行率は39.6%となっている。これは、積雪の影響や地権者との調整に時間を要するなどしたため、2億3301万余円を25年度に繰り越すとともに、落ち葉等の除去物の仮置場の確保が困難となり事業実施箇所数が減少したことなどにより、4471万余円が不用となったものである。24年度の森林における除染等実証事業は、国庫補助金の交付決定額4億6029万余円、受入額1億8255万余円、補助事業執行率は39.6%となっている。これは、積雪の影響や地権者との調整に時間を要するなどしたため、2億3301万余円を25年度に繰り越すとともに、落ち葉等の除去物の仮置場の確保が困難となり事業実施箇所数が減少したことなどにより、4471万余円が不用となったものである。
23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに引き続く大津波、その後発生した原発事故による深刻な放射能汚染は、福島県浜通りを中心とする県内全域及び福島県民に甚大な被害をもたらした。
福島県では、県及び市町村が中心となって避難者に対する支援や県民の健康福祉、除染等、様々な施策を懸命に実施しているが、今なお多くの県民が県内外に避難し、県人口の減少や、農林水産業のみならず製造業を含めたあらゆる産業が大きな打撃を受け、さらに、風評被害に苦しめられているなど、その克服は、県や市町村等の力の範囲を超えている。
会計検査院は、福島県における被災状況、復旧・復興事業等の実施状況等について各部局等より説明を受けるなどしたが、各部局等からは、原子力災害からの復興再生については長期にわたることが予想され、いまだに風評被害に苦しんでいるなど、被災地の社会経済の再生や生活の再建に向けた課題は数多く、これらを解決するには多くの困難があるとして、国による長期的かつ確実な財源の支援や各種制度の支援を望む声を受けた。
特に、膨大な予算を執行しながら、復興・再生を着実に推進していくためには、一層の業務量の増加と人員不足が見込まれることから、県、市町村ともに正規職員の採用増や任期付職員の採用、全国自治体への職員派遣要請を行うなど必要な人員の確保に努めているが、県、市町村の取組のみではその確保が困難な状況であるため、国に対して更なる人的支援の強化を求めており、国は引き続き福島県の意向や要望等を踏まえるなどして、必要な支援に努める必要がある。