本四公団は、度重なる工事実施計画の追加、変更等により事業費が増加し、また供用後の料金収入の低迷等から、多額の繰越欠損金を抱えていた。このことについて会計検査院は平成10年度決算検査報告に特定検査状況として掲記したが、本年次は本四道路に係る債務の返済等の状況及び本四会社の経営状況について検査を実施した。その状況は以下のとおりである。
そこで、会計検査院において、26年度以降の国及び10府県市からの出資が停止又は10府県市からの出資が停止されたとして債務の返済について試算を行ったところ、機構の収支差が減少することにより毎年度の返済額が減少し、増加する支払利息等を収支差で賄うことができなくなった後、収支差がマイナスに転ずることから、以降は債務が増加して、62年度(2050年度)の債務残高は2兆4508億余円又は8169億余円になり、計画どおり債務を返済することは極めて困難になると認められる。また、上記の試算において出資が停止された分を貸付料収入で賄うこととすると、現行の約1.62倍又は約1.21倍の貸付料が必要となる。そして、これを本四会社の料金収入で賄うこととすると、約1.56倍又は約1.19倍の料金収入が必要となり、さらに、これを通行料金に反映させた場合には、約1.88倍又は約1.27倍の料金水準になると想定される。
本四会社の決算は、民営化以降黒字が続いているが、これは、前記のとおり、本四公団時代に多額の財政支援を受けたことなどによるものである。また、機構の本四道路に係る債務の返済が計画を上回っているのは、機構に対する国及び10府県市からの多額の出資金を債務の返済に充てていることによるものである。しかし、26年度以降に出資が停止された場合、料金水準を変更するなどしない限り、料金収入の増加は見込めず、出資分を料金収入で賄うことはできなくなることから、債務返済計画の見直しが必要となる。
ついては、国土交通省、機構及び本四会社において、本四道路に係る債務の返済等は道路の利用者による受益者負担が基本であることに留意するとともに国の財政状況が一層厳しくなっていることにも留意して、次のような対応を執ることにより、本四道路に係る債務の返済等を確実に行うことが重要である。
会計検査院としては、本四道路の債務の返済等の状況及び本四会社の経営状況について、引き続き注視していくこととする。