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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成25年9月

東日本大震災等の被災者の居住の安定確保のための災害公営住宅の整備状況等について


4 所見

(1) 検査の状況の概要

災害公営住宅の整備は、東日本大震災等からの復興に向けて、被災者の居住の安定確保につながり、被災地のまちづくりに寄与するものであることから、その進捗状況等は国民の大きな関心の対象となっており、災害公営住宅整備事業等は復興交付金事業の中でも基幹事業の一つとして位置付けられている。

そこで、会計検査院は、効率性、有効性等の観点から、災害公営住宅の整備に係る計画策定に際して、住民に対する意向調査や整備方式の採用は適切に行われているか、整備は着実に進捗しているか、整備後の募集及び入居の状況はどうなっているかなどに着眼して検査したところ、次のような状況が見受けられた。

  • ア 25年6月末現在、整備計画戸数25,067戸のうち7市町の3,514戸の整備方式が未定となっていた。また、39市町村においては、災害公営住宅を直接建設方式により整備することとしており、その中には整備計画戸数の大半を直接建設方式により整備することとしていて、職員の負担が大きくなっていると考えられる市町村もあった。一方で、東北3県管内の9市町においては、職員の負担の軽減を図るなどのため、県に整備を委託したり、UR建設譲渡方式や買取方式を積極的に採用したりしていたほか、1市においては民間借上方式による整備を採用していた。また、住民に対する意向調査については、意向調査を実施していなかったり、実施しても整備計画を策定する上で必要と考えられる調査項目が網羅されていなかったりする市町村等が見受けられた。

  • イ 25年6月末までに交付された災害公営住宅整備事業等に係る国庫補助金及び復興交付金の交付額は計4134億余円に上っている。しかし、用地交渉等のため、現段階では完成予定時期が確定していない整備計画戸数が3,842戸(全体の15.3%)見受けられたほか、地盤のかさ上げや高台への移転等の面的整備を伴う場合は、単独整備よりも事業の進捗に時間を要する傾向が見受けられた。また、災害公営住宅の整備においては、面的整備を伴う場合が全体の46.5%と相当の割合を占めていることなどから、応急仮設住宅の原則的な供与期間である3年内の整備計画戸数は3,716戸(全体の14.8%)にとどまっていた。整備の進捗が遅れているのは、地権者が特定できない、地権者の合意が得られないなどのため用地取得が難航していることなどによるものである。25年2月に復興庁に設置された「住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォース」では、住宅再建・復興まちづくりの加速化に向けた取組を取りまとめており、これを受けて各省庁では様々な施策が実施されていて、国土交通省においても手続の簡素化に係る措置、迅速な業務執行のための情報提供のほかCM方式の導入等が逐次実施されている。

  • ウ 25年7月1日現在、募集を開始した地区の中の一部には入居率が低い地区が見受けられ、全体では募集戸数計349戸に対して入居戸数は計291戸(入居率83.3%)となっていた。一部の地区で入居率が低くなっている要因としては、被災者が応急仮設住宅の退去期限になっていないので応募を見合わせたりしていることなどによるものもあるが、意向調査等による住民の意向の把握が十分でなかったり、入居者の利便性への配慮が必ずしも十分ではなかったりするなどの事態も見受けられた。

(2) 所見

東日本大震災等からの復旧・復興に係る事業のうち災害公営住宅整備事業等は、被災した市町村等が事業主体となって、応急仮設住宅等に入居していて自力での住宅再建・取得が困難な被災者に恒久的な住宅を提供する事業であり、被災者の居住の安定の確保、ひいてはその暮らしの再生につながるものであることから、その迅速かつ的確な実施が求められている。

そして、国は、財政的支援はもとより、技術的な助言や各種手続の簡素化に向けた検討を行うなど、被災した市町村等による取組を支援しているところである。

災害公営住宅の整備は、今後、27年度までの集中復興期間中に、その着工戸数等の事業量がピークを迎える見込みであるが、事業の実施に際しては、提供される災害公営住宅が被災者の意向や要望に沿ったものであることが求められるとともに、事業主体においては、人的体制等に応じた適切な整備方式を選択した上で経済的かつ効率的に整備を進めていくことが必要である。

ついては、国土交通省において、必要に応じて直轄調査を活用するとともに、次の点に留意するなどして、災害公営住宅の整備に向けた支援を実施していくことが重要である。

  • ア 市町村等が、整備計画の策定又はその見直しに際して、災害公営住宅の整備に係る人的体制、整備期間等を勘案するとともに、各整備方式の特徴を踏まえて適切な整備方式を採用したり、被災者の意向の変化を適時適切に把握したりするよう技術的な助言等を行う。
  • イ 応急仮設住宅の供与期間は限られていることから、被災者に速やかに恒久的な住宅として災害公営住宅を提供できるよう、事業着手の見込みがたっていないものについては、市町村等が、早期に完成予定時期を確定して事業に着手する方策を見いだせるよう技術的な助言等を行うとともに、災害公営住宅の整備に面的整備を伴う場合は、単独整備に比べてその完成までに時間を要する傾向がみられるので、復興庁等の関係省庁と協力するなどして整備の加速化に向けた取組を着実に実施していく。
  • ウ 募集を開始した一部の地区において、募集状況や入居戸数が低調になっているものが見受けられることから、市町村等が募集要件を適切に見直すことなどにより入居率の改善が図られるよう、他の事業主体における入居者の募集に係る取組状況等について情報を提供する。

会計検査院としては、災害公営住宅の整備が、被災者の居住の安定の確保や被災地のまちづくりに大きく寄与するものであり、その早期の提供が待ち望まれていること、事業が主として国費を原資として行われており、その額が多額に上る見込みであることなどを考慮して、今後も東日本大震災等からの復興施策の一つである災害公営住宅の整備の状況等について引き続き注視していくこととする。