独立行政法人における政府出資金、資本剰余金、利益剰余金について、正確性、合規性、有効性等の観点から、独立行政法人の設立時における政府出資金等の状況はどのようになっているか、設立時に承継した資産の状況はどのようになっているか、設立後に行われた追加出資及び政府出資金の減少の状況はどのようになっているか、資本剰余金に係る会計処理の状況はどのようになっているか、資本剰余金に見合う現金預金等の保有の状況はどのようになっているか、中期目標期間終了時における積立金の処理は適切に行われているかなどに着眼して検査を実施した。
独立行政法人において、設立時に承継した資産のうち、土地、建物等の固定資産についてはその財源が政府出資金であると把握しているのが一般的であったが、流動資産のうち現金預金等については、その財源が把握されておらず、政府出資金等に見合う現金預金等が含まれているかが明瞭ではない状況が見受けられた。さらに、政府出資金見合いとして整理している現金預金、投資有価証券等について、業務を確実に実施する上で独立行政法人が当該現金預金等を必要であるとしているにもかかわらず、これらの資金を使用することなく保有している事態や、中期計画において使用目的を定めないまま使用したり、使途等に係る規程等を整備しないまま運用したりしている事態が見受けられた。
24年度末現在で金銭出資に係る資金の全部又は一部が充当されていない事態が見受けられた。この中には、建物の完成予定時期を延期する旨の基本構想の変更を行ったことにより、延期された支払時期まで現金預金で保有しているなどの事態が見受けられた。
また、金銭出資された資金を財源として取得した資産等の管理状況について、追加出資に係るものか他の財源に係るものかが判明しなかったり、資産管理資料等では管理しておらず、資産を取得した際に作成した支出に関する資料を調査しないと追加出資に係るものかが判明しなかったりしている事態が見受けられた。
さらに、不要財産を国庫に納付したことにより政府出資金の減少を行った独立行政法人について、必ずしも政府出資金と資産との対応関係が明確ではない事態も見受けられた。
敷金及び預託金を差し入れた際の会計処理において、運営費交付金債務から資本剰余金に振り替えている場合に、当該敷金及び預託金の返戻金が独立行政法人の内部に留保されていて、不要財産となる可能性が高い状況となっている事態が見受けられた。
また、承継時に独立行政法人が資本剰余金に見合う資産と整理し、23年度末においても保有している現金預金及び投資有価証券について、保有目的や今後の使途が十分に確認できず、その財源も政府からの出資又は支出なのか自己収入なのかが明確でない事態が見受けられた。
次期中期繰越積立金のうち自己収入を財源として取得したとしている償却資産について、独立行政法人の設立時に承継され政府出資金見合いとして整理している現金預金で取得したものであったり、自己収入を財源としてリース料を支払っているファイナンス・リース取引で取得したものであったりしていて、精算対象積立金を構成しないこれらの償却資産の未償却残高に相当する額を次期中期繰越積立金としているなどの事態が見受けられた。
独立行政法人は、その行うべき業務が確実に実施されることが必要であり、そのための財産的基礎を有しなければならない。さらに、毎年度、政府から運営費交付金を始めとする多額の財政支出が充てられているが、国の財政事情が極めて厳しい状況にあることに鑑みると、各独立行政法人は、必要最小限の財務基盤で業務運営を行うことが求められている。
したがって、前記の検査の状況を踏まえ、独立行政法人及び主務府省においては、次の点に留意して対応を検討することが必要である。また、これらの独立行政法人及び主務府省の対応状況や独立行政法人改革の動向等を踏まえ、関係府省において制度全般について検討を行うことが重要である。
政府出資金に見合う現金預金等を承継時から現在まで使用することなく保有し 続けているなどの事態が見受けられたことから、独立行政法人及び主務府省にお いて、必要最小限の財務基盤で業務運営を行っているかどうかなどを検討して、 将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がないと認められる場合は、速やかに不要財産と認定して国庫納付の措置を講ずる必要がある。
そして、独立行政法人等が現金預金等を始めとする資産を承継するに当たっては、主務府省はもとより業務を引き継いだ独立行政法人においても、承継した資産の使用目的等について十分な認識を有するとともに、当該資産を有効に活用できるよう使用計画等を明確にすることが必要である。
金銭出資を受けた独立行政法人のうち、当該資金が充当されていないものについては、追加出資の資金を延期された支払時期まで現金預金で長期間保有しているなどの事態に鑑みて、資金が適時に有効に活用できるよう追加出資の時期についても検討することが重要である。
政府からの出資と保有する資産との対応関係が整理できない独立行政法人については、今後、不要財産を国庫に納付する際に支障が生ずることが懸念される。一方、不要財産と認定して国庫に納付する場合に、政府出資と保有する資産との対応関係が明確でないのに安易に政府出資金を減少すると、将来的に当該独立行政法人の財産的基盤が損なわれることも懸念される。
したがって、独立行政法人及び主務府省において、不要財産に係る国庫への納付を行う前提として、政府からの出資又は支出により取得した資産かどうか、可能な限り取得財源を明らかにできるような管理を行うよう努めるとともに、取得財源を明らかにすることが困難な場合には、国庫への納付に支障が生じないよう国庫への納付の際の指針や規則を検討するとともに、将来的に当該独立行政法人の財務の健全性に影響を与えないよう政府出資金の減少の指針等についても十分な検討を行うことが必要である。
敷金及び預託金の返戻金が独立行政法人の内部に留保されていて、その使用見込みがない場合には、不要財産となる可能性が高い状況となっている事態が見受けられたことから、独立行政法人及び主務府省において、今後の使用見込みについて十分に検討を行い、使用見込みがない場合には速やかに不要財産と認定して国庫納付の措置を講ずる必要がある。そして、今後も同様の事態が想定されることから、これらの返戻金が独立行政法人の内部に留保されない方策を検討することが重要である。
また、承継時に独立行政法人が資本剰余金に見合う資産として整理した現金預金及び投資有価証券について、この保有目的や具体的な使途を十分に確認できずその財源についても明確でない事態が見受けられたことから、承継時に現金預金等を資本剰余金に見合う資産として整理する場合には、現金預金等の財源及び保有目的を明らかにできるよう努める必要がある。
精算対象積立金を構成しない償却資産の未償却残高に相当する額を次期中期繰越積立金としている事態については、その分の国庫納付額が減少して独立行政法人の内部に留保されていることになる。独立行政法人及び主務府省において、独立行政法人の内部に留保されている償却資産の未償却残高に相当する額を速やかに国庫に納付する方策を検討するとともに、今後も同様の事態が想定されることから、次期中期繰越積立金の算定に当たっては、償却資産が自己収入を財源として取得したものかどうか、国庫に納付する現金預金がないなど繰越しをする合理的な理由があるかなどを十分に確認することが必要である。
会計検査院としては、独立行政法人が必要最小限の財務基盤で業務運営を行うことが求められていること、また、独立行政法人の制度及び組織の見直しについては、政府において引き続き検討し改革に取り組むこととされたことを踏まえて、独立行政法人における政府出資金等の状況について、今後とも多角的な観点から引き続き検査していくこととする。