国は、法人等に国庫補助金(注1)等を交付して基金を設置造成させ、単年度では完結しない特定の目的を持つ公益性の高い事業を継続して行わせている。国庫補助金等の交付を受けた法人等は、国の補助金交付要綱等に基づき、設置造成した基金を他の事業の財源と区分して経理し、それぞれ、補助、利子助成、債務保証、貸付け等の財源として事業を実施している。
基金については、基金の運営形態及び使途ごとに複数の態様に分類できる。なお、一つの基金の中に、複数の運営形態又は使途が併存しているものもある。
設置造成された基金の運営形態は、以下の4種類に分類できる。
基金を補助、利子助成等の事業の財源に充てることによって費消していくもの
基金を繰り返し回転させて使用するもの
基金を債務保証等の信用力の基盤となる財源として保有するもの
基金を運用元本として、その運用益を補助等の事業の財源に充てていくもの
設置造成された基金を財源として実施する事業(以下「基金事業」という。)の種類は、以下の6種類に分類できる。
各種事業への補助金等を交付する事業の財源として基金を使用するもの(農産物等の価格差に対する補塡金を交付したり、不慮の事故による被害者等に対して給付金を支給したりする事業を含む。)
借入金に係る利子の一部を助成するなどの事業の財源として基金を使用するもの
法人等が自ら行う調査、研究等の事業の財源として基金を使用するもの
借入金に対する債務を保証するなどの事業の信用力の基盤となる財源として基金を使用するもの
貸付けや一時立替えの事業の財源として基金を使用するもの
①から⑤まで以外の事業の財源として基金を使用するもの
会計検査院は、従来、国庫補助金等により設置造成された基金について検査を行っているところである。
会計検査院法(昭和22年法律第73号)第30条の3の規定に基づき、平成17年10月に参議院に報告した「国が公益法人等に補助金等を交付して設置造成させている資金等に関する会計検査の結果について」(以下「17年報告」という。)において、国庫補助金等により国所管の公益法人等に設置造成された基金について、必要に応じて基金事業の終了も含めた所要の措置を積極的に講ずるほか、基金事業に係る定期的な見直し時期の設定や目標達成度を測るための基準の策定等の見直し体制を整備することが重要と考えられるとの所見を記述している。そして、同条の規定に基づき、21年10月に同院に報告した「各府省所管の公益法人に関する会計検査の結果について」(以下「21年報告」という。)において、国庫補助金等により国所管の公益法人に設置造成された基金等について、基金の事業実績及び保有倍率を考慮に入れて利用条件や基金規模の検討を常に行うとともに、定量的な目標の策定とこれに基づく適切な目標達成度の評価及び基金事業の見直しに努める必要があるとの所見を記述している。
また、同法第30条の2の規定に基づき、23年10月に国会及び内閣に報告した「国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金について」(以下「23年報告」という。)において、国庫補助金等により都道府県、市区町村、都道府県所管公益法人その他団体(以下「都道府県等」という。)に設置造成された基金について、単に全国一律の配分方法により国庫補助金等を配分することなく、事業の実施状況に見合った国庫補助金等の配分等を行うとともに、20、21両年度の補正予算により新規に設置造成された基金については事業期間内での執行に留意して、執行残が多額に生ずると見込まれる場合は基金規模の見直しを行い、資金を有効に活用する必要があるとの所見を記述している。
これらのほか、会計検査院は、個別の基金について、同法第34条及び第36条の規定に基づき意見を表示し又は処置を要求するなどして、基金の一部を国庫へ返納させるなどしている。
政府は、17年報告の後、18年8月に「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(以下「基金基準」という。)を閣議決定し、国庫補助金等の交付を受けて設置造成した基金を保有する法人(独立行政法人、特殊法人、認可法人及び共済組合を除く。以下、この基金基準の対象となる法人を「基金法人」という。)が当該基金により実施している事業に関して、当該国庫補助金等を交付した府省(以下「所管府省」という。)が国庫補助金等の交付要綱等に基づく指導監督を行う場合の基準を定めている。なお、内閣官房は、国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金については基金基準の対象ではないとしている。
基金基準によると、所管府省は基金基準に基づき指導監督を行う旨を補助金交付要綱等に明記すること、基金法人及び所管府省は少なくとも5年に1回は定期的に見直しを行うこと、新たに基金を設置造成した場合には速やかに基金の名称、基金額等の基本的事項を公表することなどとされている。また、定期的な見直しの際には基金事業に要する費用に対する基金保有額等の割合(以下「保有割合」という。)を算出して、使用見込みの低い基金についてはその取扱いを検討することとされている。そして、保有割合は、基金事業の今後の見通し又はこれまでの実績からみて、基金規模が過大となっていないかなどの状況を客観的に把握するために算出するものであり、運営形態及び使途の組合せにより例示された算出式を参考として、合理的な事業見通し又は実績を用いて算出することとされている。また、事業を終了した基金については、事業を終了した時点(新規申請の受付が終了した後も既採択分の支払等の後年度負担が発生する事業においては、新規申請の受付を終了した時点)で直ちに国庫への返納等の検討に着手することとされ、このうち、後年度負担が発生する事業については、新規申請の受付が終了した年度以降、毎年度、支払財源等として必要のない額を国庫へ返納するなど、基金法人及び所管府省は、その基金の取扱いを検討し、公表することとされている。
そして、基金法人及び所管府省は、基金基準に基づき、18、20両年度に定期的な見直しを行っており、内閣官房の行政改革推進本部事務局がその取りまとめを行っている。これにより、基金法人及び所管府省は、基金規模の見直しをするなどして、不要となった国庫補助金等により設置造成された基金の全額又は一部を国庫へ返納したり、基金事業の内容等の変更を行ったりなどしている。
政府の行政刷新会議は、21年11月に、「事務事業の横断的見直しについて」の一環として「公益法人及び独立行政法人等の基金の見直し」を挙げて、「専ら又は大宗が国の資金で造成されたもの(被害救済等のためのものを除く)」について、「運用益で事業を行っているものについては、基金相当額を国に返納し、必要額を毎年度の予算措置に切り替えるべき」としたり、「取り崩して複数年度にわたる事業を行っているものについては、利子助成をはじめ、基金の形態で事業を行う必要性や事業実施期間のうち当面の所要額等を厳しく見直し、必要性が十分に見込めないものや当面の所要額を超えるもの等については、国への返納等を行うべき」としたりしている。また、同月以降に行われた事業仕分けにおいても、多数の基金について、全額又は一部を国庫返納するなどの評価結果を受けたものが見受けられた。
20年度の基金基準による見直し以降、政府は、20年9月の世界的な金融危機を受けて、同年10月以降、緊急経済対策等の一環として、20、21、22各年度の補正予算により、多額の国庫補助金等を交付して、2か年から3か年の短期間の事業実施を前提とした基金を新規に設置造成するなどした。
そして、財務省は、平成21年度第1次補正予算による基金の設置造成に当たり、21年6月に、「平成21年度補正予算において設けられた基金等の執行状況等の公表について(連絡)」により、所管府省に対して、予算の適切かつ効率的な執行とその透明性の確保の観点から、基金の執行状況等を把握し、積極的な公表に努めるよう求めている。
また、政府は、23年3月の東日本大震災を受けて、復旧・復興に資する施策等を行っており、23年度の補正予算により、国庫補助金等を交付して、基金を新規に設置造成するなどした。