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  • 平成25年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 役務

国民経済計算システムに関する設計・開発作業に係る請負契約において、システムの構築に必要な情報が受注者に適切に提供されなかったなどのため、契約が履行途中で解除となり、所期の目的が達成されなかったもの[経済社会総合研究所](1)


会計名及び科目
一般会計 (組織)内閣本府 (項)経済社会総合研究所
部局等
経済社会総合研究所
契約名
国民経済計算システムに関する設計・開発作業
請負契約の概要
国民経済計算システムの構築を行うもの
契約の相手方
日本アイ・ビー・エム株式会社
契約
平成20年5月 一般競争契約
支払額
94,449,140円(平成22年度)
不当と認める支払額
82,623,088円(平成22年度)

1 契約等の概要

内閣府経済社会総合研究所(以下「研究所」という。)は、国民経済の活動状況を多面的・総合的に表す指標である国民経済計算を、各種の基礎統計を利用して推計する国民経済計算推計業務(以下「推計業務」という。)を実施している。研究所は、複雑かつ人的要素に依存するところの大きい推計業務について問題を解消し、効率性・合理性の向上等を図るために、新しい情報システムとして国民経済計算システムを構築することとし、平成20年5月に、同システムに関する設計・開発作業を、総合評価落札方式による一般競争入札を行った上で、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下「会社」という。)に契約金額632,100,000円で請け負わせ、その後、21年3月に契約金額を590,455,932円に変更していた。そして、研究所は、21年4月までに計208,255,932円を会社に支払っていた。

総合評価落札方式による調達を行う場合、「情報システムの調達に係る総合評価落札方式の標準ガイド」(平成14年7月調達関係省庁申合せ)において、発注者は、入札参加者に提案書により申込みをさせ、性能等について、仕様書等に記載された要件を満たしているかなどを判定し、評価を行うこととなっている。また、「情報システムに係る政府調達の基本指針」(平成19年3月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)において、発注者は、限られた提案依頼の期間内で事業者がなるべく同等の条件で提案可能となるように、仕様書及びその添付書類等の提案依頼の際に提供する文書において、提案に不可欠な情報を全て記載することとなっている。

そして、「共通フレーム2007(注)」(平成19年9月独立行政法人情報処理推進機構編)において、情報システムの開発に当たり発注者及び受注者が行うこととして、責任の分担を明確にしたり、発注者が受注者に必要な全ての情報を適切な時期に提供し、全ての未決定項目を解決できるように、受注者に協力したりすることなどが示されている。

(注)
共通フレーム2007  ソフトウェアの開発及び取引を明確化し、市場の透明性を高め、取引の更なる可視化を実現することを目的として策定された、ソフトウェアを中心としたシステムの企画、要件定義、開発、運用、保守等の作業内容に関する発注者及び受注者共通の規格

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性、有効性等の観点から、調達手続は適正に行われているか、研究所は発注者として国民経済計算システムを構築するために必要な情報を受注者に提供しているかなどに着眼して、本件契約を対象として、研究所及び会社において契約関係資料等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

研究所は、本件契約の仕様書において、国民経済計算システムの構築に必要となる、これまで大型電子計算機と職員のパソコン上の表計算ソフトウェアによる処理との組合せなどで行ってきた推計業務に関する複雑な計算処理等(以下「基礎情報」という。)について整理するなどしたものを受注者に対して提供することは、研究所が責任を持って行うことにしていた。そして、研究所は、国民経済計算システムを構築するために必要となる基礎情報の解析作業は既に実施したとして、基礎情報の一部を、仕様書の別紙に一例として添付し、入札参加者に提供していた。

これを受けて、会社は、入札に際して、研究所から基礎情報の提供を受けて国民経済計算システムの構築を行うこととする提案書を研究所に示していたが、研究所に対して、仕様書に記載されている基礎情報の提供形式等について十分に確認していなかった。そして、研究所は、会社が作成した提案書を総合的に評価し、会社を受注者として決定する際に、会社に対して、提案書において研究所が基礎情報の提供を行うこととなっていることなどについて十分に確認していなかった。

その後、契約の締結後に、研究所は、前記仕様書の別紙に一例として添付したもの以外の基礎情報については、入力する情報、処理過程及び出力される情報の詳細が記載されておらず、会社においてシステム化の対象となる推計業務の現状を理解できない形式で提供していた。一方、会社は、仕様書の別紙に一例として添付されていたものと同様の形式で全ての基礎情報が研究所から提供されるものと想定していたため、契約締結の2か月後の20年7月に、研究所に対して、残りの基礎情報についても仕様書の別紙と同様の形式で提供するよう求めるとともに、同年9月の関係者間の打合せなどの場において、残りの基礎情報について解析作業を実施するためには、263人月の追加作業が別途必要になるなどの申入れを行った。

しかし、会社は、研究所が残りの基礎情報を仕様書の別紙と同様の形式では提供しなかったため、21年2月以降作業を中断した。研究所は、作業の中断後も会社との協議を行ったが事態は改善されず、22年5月に、会社と合意した上で、本件契約を解除した。この合意に基づき、研究所は、既に支払っていた208,255,932円のうち113,806,792円について会社から返還を受けたが、残りの94,449,140円は返還されないこととなった。

その後、23年度に、研究所は、国民経済計算システムの構築を複数のシステムに分割して別の業者に発注するなどして再開しており、本件契約において会社から納入された成果物の一部をこれに利用していた。

したがって、研究所において会社が想定していた基礎情報を提供しなかったため、本件契約は履行途中で解除となり、推計業務の効率性・合理性の向上等という同契約の所期の目的が達成されなかったことから、会社から返還されなかった本件契約代金94,449,140円のうち、再開後の国民経済計算システムの構築に利用している成果物部分に相当する金額11,826,052円を差し引いた82,623,088円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、会社において契約の締結前における仕様書の内容の確認が十分でなかったことにもよるが、研究所において、受注者との責任分担等について総合評価の際に示された会社の提案内容の確認が十分でなかったこと、仕様書において発注者が責任を持って提供すると会社が想定していた国民経済計算システムの構築に必要な基礎情報を適切に提供しなかったことによると認められる。