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  • 平成25年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 内閣府(内閣府本府)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1) 地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金等による地方単独事業の実施状況を踏まえ、同種の交付金であるがんばる地域交付金について、貸付金や保証金に交付金を充当しないよう明確にすることにより、交付金がその交付の目的に従って活用されるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)内閣本府 (項)地域活性化・緊急安心実現総合対策推進費 (項)地域活性化・生活対策推進費 (項)地域活性化・経済危機対策推進費 (項)地域活性化・公共投資推進費
部局等
内閣府本府
交付の根拠
予算補助
交付先
都、県1、市4、町1、計7地方公共団体
貸付金や保証金に係る事業費
81億4210万余円(平成20、21両年度)
上記に対する交付金交付額
 34億3736万円

1 制度の概要

(1) 交付金の概要

国は、平成20年度から22年度までの間、地域活性化等の速やかかつ着実な実施を図ることを目的として、地方公共団体が作成した実施計画に基づく事業に要する費用のうち地方公共団体が負担する経費に充てるために、表1のとおり各年度の補正予算により七つの交付金を交付している(以下、これらの交付金を「7交付金」という。)。

表1 7交付金の名称、予算計上年度及び予算額

(単位:千円)
交付金名 予算計上年度 予算額
地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金(以下、本文において「安心交付金」という。) 平成20年度
一般会計第1次補正予算
26,000,000
地域活性化・生活対策臨時交付金(以下、本文において「生活交付金」という。) 平成20年度
一般会計第2次補正予算
600,000,000
地域活性化・経済危機対策臨時交付金(以下、本文において「経済交付金」という。) 平成21年度
一般会計第1次補正予算
1,000,000,000
地域活性化・公共投資臨時交付金(以下、本文において「公共交付金」という。) 平成21年度
一般会計第1次補正予算
1,379,000,000
地域活性化・きめ細かな臨時交付金(以下、本文において「きめ細かな臨時交付金」という。) 平成21年度
一般会計第2次補正予算
500,000,000
地域活性化交付金(きめ細かな交付金)(以下、本文において「きめ細かな交付金」という。) 平成22年度
一般会計補正予算
250,000,000
地域活性化交付金(住民生活に光をそそぐ交付金)(以下、本文において「光をそそぐ交付金」という。) 平成22年度
一般会計補正予算
100,000,000
7交付金の計 3,855,000,000

7交付金の対象となる事業(以下「交付対象事業」という。)は、既存の国の補助事業の対象とはならない地方単独事業又は7交付金の各制度要綱で定められた国の補助事業となっている。

内閣府は、7交付金の予算について、地方公共団体から提出を受けた実施計画において交付対象経費とされていた額に基づき配分計画を作成して、これにより、各省に予算を移し替えている。そして、地方公共団体は、移替えを受けた各省から交付金の交付を受けて、各種の地域活性化事業を実施計画に基づき実施することとなっている。

(2) 7交付金に関する内閣府の事務連絡

前記のとおり、7交付金は、既存の国の補助事業の対象とはならない地方単独事業も交付対象となることから、内閣府は、7交付金が創設される都度、地方公共団体に対して各制度要綱の解釈を示した事務連絡等を発して、交付対象事業のうち地方単独事業に関する留意点を周知するなどしている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

前記のとおり、7交付金は地方単独事業にも充当できることから、その事業内容は多岐にわたっており、その事業期間も様々である。また、平成25年度一般会計補正予算に7交付金と同種のがんばる地域交付金(地域活性化・効果実感臨時交付金)に係る予算(予算額870億円)が計上されており、7交付金と同様に地方単独事業が同交付金の交付対象になることが見込まれている。

そこで、本院は、有効性等の観点から、7交付金がその目的に従って活用されているかなどに着眼して、3都県及び管内の47市区町村において、20年度から22年度までの間に交付された7交付金に係る事業(事業費計676億9637万余円、交付対象事業費計664億8557万余円、交付金交付額計605億5323万余円)を対象に、実施計画等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

内閣府が地方公共団体に対して発した7交付金に係る事務連絡における地方単独事業に関する留意点についてみたところ、生活交付金、経済交付金、きめ細かな交付金及び光をそそぐ交付金は、貸付金や繰上償還による当該保証金の過払い相当分の返金を生ずる保証金(以下「保証金」という。)には交付金をその財源として充当しない取扱いとすることが望ましいこととなっていた。また、安心交付金、公共交付金及びきめ細かな臨時交付金については、貸付金や保証金への交付金の充当についての取扱いが明示されていなかった。
このため、1県1町(注1)は、安心交付金又は公共交付金を貸付金に充当していた(2事業、事業費計1億0150万円、交付対象事業費同額、交付金交付額同額)。そして、上記のうち1町は、返済された貸付金の全額を町の歳入に受け入れていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

鹿児島県熊毛郡屋久島町は、平成20年度に総務省から安心交付金の交付を受け、商工業運営費貸付金事業を事業費1,500,000円(交付対象事業費同額)で実施していた。同事業において、同町は、条例等に基づき、町内の3商工業者から借入申請書の提出を受けてそれぞれ500,000円、計1,500,000円を貸し付けた貸付金に対して、同交付金1,500,000円を充当していた。そして、同町は、22年度に3商工業者から償還された計1,500,000円の返済金を同町の歳入に受け入れていた。

また、1都4市(注2)は、安心交付金、生活交付金又は経済交付金を中小企業者に対する信用保証協会の保証料(注3)への補助金等に充当していた(6事業、事業費計80億4060万余円、交付対象事業費計37億6075万余円、交付金交付額計33億3586万余円)。そして、上記の1都4市において、保証料の対象とした貸付金には貸付期間が長期にわたるものがあり、貸付金の繰上償還等により保証料の一部の返金を受けて、それぞれの歳入に受け入れるなどしていた(表2参照)

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

新潟県長岡市は、平成20年度に総務省から安心交付金及び生活交付金の交付を受け、中小企業緊急経営対策資金融資事業を事業費計1,103,369,810円(交付対象事業費同額)で実施していた。同事業において、同市は、中小企業者に代わって負担した信用保証料1,103,369,810円に対して、両交付金計683,723,000円を充当していた。そして、同市は、融資を受けた中小企業者からの繰上償還に伴い生じた信用保証料の過払い相当分として、25年度末までに計134,733,155円の信用保証料の返金を受けて、これを同市の歳入に受け入れるなどしていた。

表2 貸付金や保証金への交付金交付額

(単位:千円)
区分 事業費 交付対象事業費 交付金交付額 返済額又は返金額(平成25年度末現在)
貸付金 101,500 101,500 101,500 1,500
保証金 8,040,607 3,760,751 3,335,868 2,234,352
8,142,107 3,862,251 3,437,368 2,235,852

このように、貸付金や保証金に交付金が充当され、返済された貸付金や繰上償還に伴い返金された保証金が地方公共団体の歳入に受け入れられている事態は、最終的に交付金が実施計画に基づかない事業に要する経費に充当されることにもつながることから適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(注1)
1県1町  鹿児島県、屋久島町
(注2)
1都4市  東京都、新潟、長岡、新発田、胎内各市
(注3)
信用保証協会の保証料  信用保証協会は、信用保証協会法(昭和28年法律第196号)に基づき、中小企業の金融の円滑化を図るために、中小企業者の金融機関からの借入れについてその債務を保証する信用保証を行っており、信用保証委託契約に基づき、保証金額に、保証料率、保証期間等を乗じて算定される保証料を中小企業者から徴している。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、内閣府が、制度要綱の解釈を示した事務連絡において、7交付金を貸付金や保証金に充当しない取扱いとすることを明確に示していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、内閣府は、返済された貸付金や繰上償還に伴う保証金の返金が地方公共団体の歳入に受け入れられ、最終的に交付金が実施計画に基づかない事業に要する経費に充当される事態が生ずることのないよう、7交付金と同種の交付金であるがんばる地域交付金(地域活性化・効果実感臨時交付金)について、貸付金や保証金に交付金を充当しない取扱いとすることを明確にした事務連絡を26年6月に地方公共団体に対して発して、周知徹底する処置を講じた。