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  • 平成25年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 内閣府(内閣府本府)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2) 沖縄県内の市町村が実施する特産品の開発等による地域活性化等を目的とした補助事業について、補助事業完了後に事業効果を検証するためのフォローアップ等が適切に行われるとともに、同様の目的で実施している交付金事業について、事業効果を検証するための継続的なフォローアップが行われるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)内閣本府 (項)内閣本府 (項)沖縄特別振興対策事業費
部局等
内閣府本府
補助の根拠
予算補助
補助事業者
(事業主体)
(1) 沖縄県(平成17年度~19年度)
(2) 8市町村(平成19年度~22年度)
間接補助事業者
(事業主体)
(1) 15市町村(平成17年度~19年度。17年9月30日以前は19市町村)
補助事業
(1) 離島地域資源活用・産業育成モデル事業
(2) 沖縄離島振興特別対策事業
補助事業の概要
(1) 沖縄県の離島地域の資源を活用した特産品の開発等を支援することにより、離島活性化を図るなどの事業
(2) 沖縄県の離島地域を対象に、地域の活性化に資する特産品の加工施設整備等への支援を行うことにより、産業の振興や雇用の確保等を図る事業
事業完了後のフォローアップ等が十分に実施されていなかった事業
(1) 15事業
(2) 8事業
上記に対する事業費
(1) 4億0217万余円(平成17年度~19年度)
(2) 6億4081万余円(平成19年度~22年度)
計 10億4298万余円
上記に対する国庫補助金交付額
(1) 2億6810万円
(2) 5億1174万円
計 7億7984万円(背景金額)

1 制度の概要

(1) 離島地域資源活用・産業育成モデル事業

離島地域資源活用・産業育成モデル事業(以下「一島一物語事業」という。)は、沖縄の離島地域が地元のアイディアをいかした離島活性化を図ることを目的として、平成17年度から19年度までの間に、農林水産物等の地域資源を活用した特産品の開発の可能性を検討したり、その開発を実施したりなどする市町村に補助金を交付する沖縄県(以下「県」という。)に対して、内閣府が国庫補助金を交付して実施したものである。

沖縄離島活性化特別事業実施要領(平成17年府政沖第71号)等によれば、補助の対象となる経費は、検討委員会経費、試験研究費、試作品製作費等とされていた。そして、市町村は、交付申請を行う際に、補助事業完了後1年、5年及び10年時点の売上げの目標値等を記載した中長期的な事業計画を県に提出することになっていた。また、県は、沖縄振興特別事業関係補助金交付要綱(平成14年府沖振第127号。以下「一島一物語交付要綱」という。)に基づき、補助事業完了後に事業の効果等を内閣府に報告することとなっていた。

(2) 沖縄離島振興特別対策事業

沖縄離島振興特別対策事業(以下「特別対策事業」という。)は、県の離島地域における産業の振興や雇用の確保等を図ることなどを目的として、19年度から22年度までの間に、一島一物語事業で開発した特産品や新たに本事業で開発した特産品等の事業展開に必要な加工施設整備等を行う沖縄離島地域の市町村に対して、内閣府が国庫補助金を交付して実施したものである。

沖縄離島振興特別対策事業実施要領(平成19年府政沖第99号)によれば、補助の対象となる経費は、施設整備等のための建設工事費、機械機器費、委託費等とされていた。そして、市町村は、補助事業完了後1年、5年及び10年時点の売上げの目標値等を記載した中長期的な事業計画を作成し、県を経由して内閣府に提出することとなっていた。

(3) 沖縄振興特別推進交付金事業

(1)及び(2)のとおり、一島一物語事業及び特別対策事業(以下、両事業を合わせて「特産品の開発等に係る補助2事業」という。)は既に完了しているが、特産品の開発等に係る事業は、24年度に創設された沖縄振興特別推進交付金の対象となって実施されている(以下、このような事業を「特産品の開発等に係る交付金事業」という。)。

沖縄振興特別推進交付金は、県及び市町村が沖縄の振興に資する事業等を自主的に選択して実施できるようにするために創設されたものである。そして、同交付金の交付申請に対する審査については、沖縄の特殊性に基因する事業の円滑かつ迅速な実施を図る必要があることから、沖縄振興特別推進交付金交付要綱(平成24年府政沖第149号)に定められた対象外事業の確認等にとどめられている。

一方、事業の成果目標に対する達成状況の事後評価は、対外的な説明責任を果たすために重要なものと位置付けられている。すなわち、事業のフォローアップの仕組みとして、県及び市町村は、沖縄振興特別推進交付金交付要綱等に基づき、事業計画において、活動目標(取り組む内容を指標化したもの)及び成果目標(取り組む内容の成果を指標化したもの)を設定した上で、目標年度における成果目標値を定め、事業完了後の達成状況等について自ら評価を行い、その結果を沖縄振興特別推進交付金検証シート(以下「検証シート」という。)にまとめて公表するとともに、県が内閣府に報告することとなっている。そして、内閣府は、この報告を受けて、県に対して必要な助言をし改善を求めることができることとなっている。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

特産品の開発等に係る事業は、実施体制の整備、試作品の製作、商品化等のように段階的に実施されるため、事業効果が発現するまでに複数年を要するものが多くなっている。前記のとおり、特産品の開発等に係る補助2事業は既に完了しているが、補助事業で開発された特産品の製造、販売等が継続しているものが少なくなく、また、24年度から、特産品の開発等に係る交付金事業が実施されており、24、25両年度に、19市町村の34事業(事業費計10億8525万余円)に対して交付金計8億6819万余円が交付されている。

そこで、本院は、有効性等の観点から、特産品の開発等に係る補助2事業について、補助事業完了後に各市町村が実施した事業の実績を把握し、効果を検証するなどのフォローアップ等が適切に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

内閣府、県及び市町村において、15市町村の一島一物語事業15事業(市町村合併前は19市町村の19事業。事業費計4億0217万余円、国庫補助金計2億6810万余円)及び8市町村の特別対策事業8事業(事業費計6億4081万余円、国庫補助金計5億1174万余円)を対象として、事業計画、実績報告書等により、また、現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 一島一物語事業の事業効果及びフォローアップの状況

一島一物語事業について、一島一物語交付要綱に基づく補助事業完了後の事業効果等の報告状況を確認したところ、内閣府は、県から報告させる項目、内容、報告時期等を定めておらず、県は、内閣府に対して事業効果等についての報告を行っていなかった。

そこで、一島一物語事業を実施した前記の15市町村のうち、試作品の製作を経て完成させた特産品の売上高を目標として設定していた10市町村について、25年度の売上高の実績を検査したところ、いずれも実績が目標を下回っていた。このうち、2市村は、商品の販売を中止するなどしており、5市村は、商品の販売は行っているものの目標に対する実績が30%未満となっていた(表1参照)

表1 特産品の売上高を目標として設定していた市町村の実績

市町村名 国庫補助金
(千円)
国庫補助金 売上目標
(A)
(千円)
平成25年度
売上実績
(B)
(千円)
割合
(B)/(A)
(%)
南城市 19,736 イラブー粉末、ノニ茶 32,500 中止
粟国村 10,698 一口黒糖、トビウオ干物 51,500 試作のみ
渡嘉敷村 7,374 黒米玄米茶、ノニジュース他 9,000 418 4.6
多良間村 9,432 ヤギ汁、ヤギハム・ソーセージ他 34,935 1,683 4.8
石垣市 23,802 ヨモギカステラ、黒糖リーフパイ、パパイヤ菓子他 163,000 8,951 5.4
伊平屋村 11,488 もずく加工品、トコブシ加工品、黒糖菓子他 19,500 1,324 6.7
宮古島市
(旧5市町村合併)
80,506 マンゴー加工品、ジャム、ハーブティー他 56,775 10,650 18.7
北大東村 13,700 月桃菓子、じゃがいもそば、自然化粧品他 87,000 38,400 44.1
渡名喜村 11,300 島にんじんジャム、漬け物他 5,000 2,312 46.2
与那国町 10,162 カジキ干物、カジキ激辛ジャーキー他 4,100 3,203 78.1

そして、これら10市町村が製作した試作品157件のうち、商品化されなかったもの及び商品化されたものの販売を中止又は休止していたもの106件について、その主な原因を確認したところ、消費者の需要がなかったとしているものが41件と最も多く、次いで生産体制の整備や人材の確保が十分でなかったとしているものが16件などとなっていた。

また、15市町村のうち上記の10市町村を除いた残りの5町村は、演劇の上演、陶芸家の育成、企画する離島ツアー利用者数等、特産品の売上高以外のものを目標として設定していたが、1村を除く4町村は、実績がその目標に至らず、このうちの2町村は、事業そのものを休止していた(表2参照)

表2 特産品の売上高以外のものを目標として設定していた市町村の実績

市町村名 国庫補助金
(千円)
目標 実績
伊是名村 12,866 演劇を村の文化芸能として定着させるため、毎年村内外で上演 平成18年度から上演開始、21年度以降休止
久米島町 21,538 陶芸家の育成、NPO等運営会社の設立 陶芸家育成休止、運営会社未設立
竹富町 11,614 離島ツアー年2回(40名)実施 離島ツアー利用者 25年度 22名
座間味村 12,126 島内観光プログラム参加者2,000人 18年度参加者1,247人、25年度参加者1,360人
伊江村 11,764 島内物産センターでの販売額490万円増加
販売額 18年度
6279万余円
    25年度
1億2535万余円
対初年度増加額
6255万余円

(2) 特別対策事業の事業効果及びフォローアップの状況

特別対策事業について、内閣府による事業完了後の事業効果の把握状況を検査したところ、内閣府は、特産品の販売状況等を調査するなどしていたが、売上目標に対する実績等について詳細に把握していなかった。

そこで、特別対策事業を実施した前記の8市町村が事業計画で設定していた25年度の特産品の売上目標に対する実績を検査したところ、いずれも実績が売上目標を下回っていた。このうち、6町村は、売上高の実績が目標の30%未満となっていた(表3参照)

表3 特産品の売上高の目標に対する実績

市町村名 国庫補助金
(千円)
国庫補助金 売上目標
(A)
(千円)
平成25年度
売上実績
(B)
(千円)
割合
(B)/(A)
(%)
粟国村 33,210 トビウオ干物、カマボコ、マグロの角煮他 45,200 2,276 5.0
多良間村 116,323 ヤギ汁レトルト、ヤギハム・ソーセージ他 25,950 3,001 11.5
渡名喜村 10,612 島にんじん羊かん、もちきびちんすこう他 10,764 1,787 16.6
竹富町 19,771 もちきび粉、もちきび粒 18,900 3,586 18.9
伊江村 139,789 ハイビスカス酒(ラム酒)、スパークリングウォーター他 59,692 13,605 22.7
南大東村 79,872 マグロ・サワラジャーキー、イカくんせい他 (注) 10,350 2,592 25.0
与那国町 94,816 カジキの干物、たこめんたい、カジキくんせい他 20,000 8,214 41.0
南城市 17,353 イラブー粉末、イラブー汁他 9,350 4,889 52.2

(注) 南大東村については、平成25年度が同村の事業計画における売上目標の設定年度ではなかったため、事業計画で設定していた22年度の売上目標で比較している。

<事例>

渡名喜村は、平成21年度に、特別対策事業として、特産品の開発・製造等に係る施設整備事業を補助対象事業費13,265千円(国庫補助金10,612千円)で実施している。同村は、村の特産である島にんじんなどを原材料として菓子、スープ等を製造するための回転釜や、製造した食品を包装するためのトップシール機等を購入していた。

しかし、島にんじんを原材料として製造した菓子は、色や舌触りが良くないなどの課題が残り、他の食品も完成度が低いなどのため、いずれも商品化に至らなかった。このため、トップシール機については、島にんじん羊かんなどの試作品を製作する際の利用にとどまっていた。

前記のとおり、特産品の開発等に係る補助2事業において、特産品の販売実績等が目標を下回るなどして事業計画で目指していた状況とはなっていなかったのに、内閣府は、指導及び助言を十分に実施していなかった。

一方、交付金事業は24年度から開始されたばかりであり、特産品の開発等に係る交付金事業における事業効果の検証は今後行われることになる。

そこで、検証シートにより24、25両年度に19市町村が実施した特産品の開発等に係る交付金事業34事業における事業のフォローアップの方法等をみたところ、いずれの事業も、事業効果が発現するまでに複数年を要するのに、成果目標の設定が事業を実施した年度のみとなっていたり、成果目標の設定が、「加工機械の導入」のように活動目標と同一の内容となっていて、生産した特産品の売上高のように、事業に取り組んだ活動の結果から得られる効果が成果目標として設定されていなかったりしていた。このため、中長期の事業実績に基づくフォローアップが実施できないものとなっていた。

(1)及び(2)のとおり、特産品の開発等に係る補助2事業において、特産品の販売実績等が目標を下回るなどしていたのに、補助事業完了後に、フォローアップが十分に行われていなかったり、指導及び助言が十分に行われていなかったりなどしている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、内閣府において、特産品の開発等に係る補助2事業の完了後に、事業計画で定めた中長期の目標及びこれに対する実績を確認して適時適切にフォローアップを行うことの必要性を十分に理解していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、内閣府は、26年9月に、県及び市町村に通知を発して、次のような処置を講じた。特産品の開発等に係る補助2事業については、内閣府においてフォローアップを行って、市町村が現状を踏まえた改善計画を作成するよう指導及び助言を行った。また、特産品の開発等に係る交付金事業のうち、事業効果が発現するまでに複数年を要する事業については、市町村が事業の実現可能性を十分に検討した上で、特産品の生産量、売上高等の中長期の成果目標等を設定し、目標年度まで継続的にフォローアップを行うとともに、内閣府及び県が市町村によるフォローアップの結果を継続的に把握できるようにするために、県に対して、検証シートの記載方法を見直すよう助言した。