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  • 平成25年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 法務省|
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  • 予算経理

在勤官署を離れた場所における超過勤務を命ぜられた警備指導官に対して、当該超過勤務が公務とは認められなかったり、現に勤務したことを証明できるものがなく超過勤務手当を支給する要件を欠いていたりしていたのに同手当を支給していたため、その支給が過大となっていたもの[大阪矯正管区](17)


会計名及び科目
一般会計 (組織)矯正官署 (項)矯正官署共通費
部局等
大阪矯正管区
超過勤務手当の概要
正規の勤務時間を超えて勤務することを命ぜられた職員に、その勤務した時間に対して、勤務1時間につき支給する手当
超過勤務手当の支給を受けていた警備指導官の数
2名
上記の2名に支給された超過勤務手当の額
4,283,608円(平成23年5月~25年11月)
上記のうち過大となっていた超過勤務手当の支給額
4,246,081円

1 警備指導官の概要等

(1) 警備指導官の概要

矯正管区は、全国8か所に設置されている法務省の地方支分部局であり、矯正管区組織規則(平成13年法務省令第9号)により、管轄区域内の刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院(以下、これらを合わせて「矯正施設」という。)の被収容者の規律、警備その他矯正施設の保安に関する事務を所掌している。そして、矯正管区は、管内矯正施設の規律及び秩序の維持に関する職務に従事する刑務官、法務教官等に対する柔道、剣道(以下、柔道と剣道を合わせて「武道」という。)及び矯正護身術(注)の訓練、指導等を行うために、武道を専門とする警備指導官2名(柔道担当、剣道担当各1名)を配置している。

警備指導官は、管内矯正施設を巡回して、矯正施設において刑務官、法務教官等の武道訓練の指導に従事したり、矯正護身術訓練の成果を確認し術技の向上を図ることなどを目的として刑務官、法務教官等を対象に行われる矯正護身術に係る検定業務に従事したりするなどしている。

(注)
矯正護身術  矯正施設において、被収容者による職員暴行事案等が発生した際に、当該被収容者を適正に制圧するとともに、その攻撃から身を守るための術技

(2) 超過勤務手当の概要

警備指導官には一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。以下「給与法」という。)、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成6年法律第33号。以下「勤務時間法」という。)等が適用されている。

そして、勤務時間法によれば、各省各庁の長は、公務のため臨時又は緊急の必要がある場合に、正規の勤務時間以外の時間において職員に勤務をすることを命ずることができることとされている。

また、給与法によれば、正規の勤務時間を超えて勤務することを命ぜられた職員には、正規の勤務時間を超えて勤務した全時間に対して、勤務1時間につき、勤務1時間当たりの給与額に100分の125から100分の150までの範囲内で人事院規則で定める割合を乗じて得た額を超過勤務手当として支給することとされている。

(3) 在勤官署を離れた場所における超過勤務に対する超過勤務手当の支給

一般職の職員の給与に関する法律の運用方針(昭和26年給実甲第28号。以下「給与法運用方針」という。)によれば、公務により旅行(出張及び赴任を含む。)中の職員は、その旅行期間中正規の勤務時間を勤務したものとみなすこととされている。ただし、旅行目的地において正規の勤務時間を超えて勤務すべきことを職員の所轄庁の長があらかじめ指示して命じた場合において現に勤務し、かつ、その勤務時間につき明確に証明できるものについては超過勤務手当を支給することとされている。

そして、職員が公務のため一時その在勤官署を離れて勤務する場合は、その移動距離にかかわらず旅行に当たると解されている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、警備指導官に対する超過勤務手当の支給は適正に行われているかなどに着眼して、大阪矯正管区(以下「管区」という。)において、平成23年4月から25年10月までの間の超過勤務実績に対して23年5月から25年11月までの間に警備指導官2名に支給された超過勤務手当計4,283,608円を対象として検査した。

検査に当たっては、超過勤務命令簿、職員別給与簿等の関係書類を確認したり、警備指導官の上司から超過勤務の実施状況等を聴取したり、管区の職員を通じて超過勤務の実施場所における超過勤務の実施状況を確認したりするなどして会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

管区は、警備指導官2名に対して、23年4月から25年10月までの間、両警備指導官から提出された武道訓練計画に基づき、管区での正規の勤務時間に係る勤務が終了した後、引き続き、民間団体が運営する大阪市内の武道場(以下「武道場」という。)において、自己の武道の技量の維持向上を目的とした武道訓練を行うことを命じたなどとして、超過勤務手当を支給していた。

しかし、管区は、超過勤務の実施場所である武道場が、管区の庁舎から徒歩10分程度と離れた場所にあることなどから、警備指導官2名の武道場における超過勤務の内容、勤務時間等の超過勤務の実施状況について全く確認していなかった。

そこで、本院が管区の職員を通じて、武道場から警備指導官2名の超過勤務の実施状況を確認するなどしたところ、警備指導官1名は、超過勤務手当が支給されている時間のうち一部の時間に、武道場において、民間団体が主催する武道の稽古で謝礼金を受けて講師として一般参加者の指導を行っていた。また、警備指導官2名は、この民間団体の監事を務めており、武道場で開催された民間団体の理事会に監事として出席し謝礼金を受けていた。

また、警備指導官2名は、上記以外の超過勤務手当が支給されている時間の武道訓練の実施状況について、民間団体が主催する武道の稽古に参加者として参加したなどとしているが、参加の事実を示す記録は全くなかった。

以上のように、民間団体が主催する武道の稽古において、一般参加者の指導を行うこと及び民間団体の理事会に出席することは、勤務時間外における職員の私的な活動であって、公務であるとは認められず、また、これら以外の武道訓練に係る超過勤務は、在勤官署を離れた場所における超過勤務であるのに、現に勤務したことを明確に証明できるものが全くないことから給与法運用方針に定める支給要件を欠いており、それぞれにおいて超過勤務手当を支給すべきでなかったと認められる。

したがって、警備指導官2名が超過勤務を行ったとする時間から、武道訓練に係る時間を控除して、超過勤務手当の額を修正計算すると計37,527円となることから、前記の超過勤務手当支給額計4,283,608円との差額計4,246,081円が過大に支給されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、警備指導官2名において国家公務員の服務規律を遵守することの認識が欠けていたこと、管区において超過勤務を適切に行うよう警備指導官に対して十分な指導を行っていなかったこと、在勤官署を離れた場所における超過勤務については、現に勤務したことを証明できるものがなければ超過勤務手当を支給できないとの認識が欠けていたことなどによると認められる。