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  • 平成25年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 法務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(3) ガスの調達契約を締結するに当たり、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、一般競争に付するなどの協定等及び特例政令等に基づく契約手続を実施することにより、内外無差別原則の確立と手続の透明性等を確保するよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)地方入国管理官署 (項)地方入国管理官署共通費
部局等
名古屋入国管理局
契約の概要
庁舎等で使用するガスの調達を行うもの
件数及び支払額
2件 1744万円(平成24、25両年度)

1 特定調達に係る契約手続の概要等

(1) 契約事務等の概要

法務省名古屋入国管理局(以下「管理局」という。)は、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)等に基づき、管理する庁舎等で使用するガスの調達契約に係る事務を行っている。

(2) 政府調達に関する協定等の概要

近年、我が国のガスの小売市場は自由化が進められており、一般の需要者に導管を敷設してガスを供給する事業者(以下「一般ガス事業者」という。)以外の事業者も広く小売市場に参入できるような状況となっている。

政府調達に関する協定(平成7年条約第23号(平成26年条約第4号による改正前のもの)。以下「協定」という。)は、世界貿易機関(WTO)の下で運用されている協定の一つで、各加盟国の中央政府、地方政府及び協定が定める機関による調達の分野における、国内外のいかなる事業者でも参入を可能なものとする内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保を目的として、各国が遵守すべき調達手続上の義務等を規定している。そして、我が国政府は、「物品に係る政府調達手続について(運用指針)」(平成6年アクション・プログラム実行推進委員会)等を我が国の自主的措置として決定している(以下、協定及び我が国の自主的措置を合わせて「協定等」という。)。また、協定その他の国際約束を実施するために、「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令」(昭和55年政令第300号。以下「特例政令」という。)が制定されている。

協定等及び特例政令の対象となる機関が、協定等及び特例政令等の対象となる調達契約を締結する場合には、会計法、予決令等に加えて、協定等、特例政令等に基づき事務を行う必要がある。

協定によれば、適用対象となる機関は、中央政府の機関、地方政府の機関及びその他の機関に区分され、それぞれ具体的な機関名が明示されていて、中央政府の機関としては、会計法の適用を受ける全ての機関が協定の適用対象とされている。

適用対象となる調達については、産品及びサービスの調達とされていて、産品については、全ての産品の調達を適用対象とすることとされている。そして、ガスについては上記の適用対象になる産品の例外ではないとされている。

また、協定等によれば、適用対象となる調達額については、機関の区分、調達する産品及びサービス、契約締結時期等ごとに、それぞれ基準額が定められており、当該基準額以上の価額の産品及びサービスの調達契約が協定等の適用対象とされている。そして、特例政令では、調達契約に係る予定価格が財務大臣の定める区分に応じ財務大臣の定める額以上の額であるものに関する事務について特例政令の適用があると定められており、平成24年4月1日から26年3月31日までの間に締結される物品等の調達契約に係る財務大臣の定める額は1200万円とされている(平成24年財務省告示第25号)。この額は、協定等において定められているこれと同一の時期に締結される産品の調達契約に係る基準額の邦貨換算額と同一である(以下、協定等及び特例政令等の適用対象となる調達を「特定調達」という。)。

(3) 特定調達に係る契約手続

協定の適用対象となる機関は、特定調達を行うに当たり、協定等及び特例政令等に基づき、原則として一般競争に付することとなっており、緊急の必要により競争に付することができないなどの場合に限って随意契約によることができることとなっているが、随意契約によることができる場合は、予決令等に定められている場合に比べて限定されている。そして、一般競争に付する際には、予決令に定められている期間よりも長い公告期間を設け、また、契約期間等に関する情報等を官報で公告することとなっており、随意契約の際には、契約前に契約相手方等を官報で公示することとなっている。さらに、いずれの場合も、契約の相手方を決定したときは、契約の相手方、契約額等を官報で公示することとなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、従来、特定調達に係る検査を行い、特定調達に該当する調達契約を締結しているにもかかわらず、協定等に基づいた契約手続を実施していないなど適切でない事態について検査報告に掲記している。また、前記のとおり、近年、我が国のガスの小売市場は自由化が進められている。

そこで、本院は、合規性等の観点から、管理局が、ガスの調達契約の事務を行うに当たり、特定調達に係る契約手続を適正かつ適切に実施しているかに着眼して、24、25両年度に締結したガスの調達契約を対象として、管理局において、契約書、請求書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、調書の作成及び提出を求めるなどして検査した。

(検査の結果)

検査したところ、管理局は、24、25両年度にガスの調達契約を計2件締結(支払額計1744万余円)していたが、これらの調達契約について、当該契約の評価の基礎となる予定価格を算定する際に用いる前年度(23年度又は24年度)のガス料金の支払額が財務大臣の定める額である1200万円を上回っているにもかかわらず、特定調達に係る契約手続を実施していなかった。そして、ガスの調達契約を締結するに当たり、一般競争に付することなく、従前の契約相手方である一般ガス事業者との間で毎年度随意契約を更新していた。

このように、管理局におけるガスの調達契約について、特定調達の対象となる要件を満たしているにもかかわらず、一般競争に付するなどの特定調達に係る契約手続が実施されていない事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、管理局において、ガスの供給が可能な事業者は1者のみであると考えていたことなどにもよるが、ガスの調達契約に関し、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保という協定の趣旨を踏まえて、特定調達に係る契約手続を協定等及び特例政令等に基づいて実施することの重要性に対する理解が十分でなかったこと、また、ガスの小売市場の自由化が進展したことにより一般ガス事業者以外の国内外の事業者による新規参入が可能な制度になっていることの理解が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、管理局は、26年9月に通知を発して、特定調達の対象となる要件を満たす契約について、契約担当者が協定の趣旨を十分理解し、特定調達に係る契約手続を協定等及び特例政令等に基づいて実施することなどを周知徹底するとともに、同年10月に、ガスの調達契約について、特定調達手続を踏まえて、官報に入札公告を掲載し、一般競争に付する処置を講じた。