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租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの[57税務署](20)


会計名及び科目
一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入  (項)各税受入金
部局等
57税務署
納税者
106人
徴収過不足額
徴収不足額 257,332,901円(平成20年度~25年度)
徴収過大額 6,739,000円(平成24、25両年度)

1 租税の概要

源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告の手続、納付の手続等が定められている。

納税者は、納付すべき税額を税務署に申告して納付することなどとなっている。国税局等又は税務署は、納税者が申告した内容が適正であるかについて申告審理を行い、必要があると認める場合には調査等を行っている。そして、確定した税額は、税務署が徴収決定を行っている。

平成25年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は58兆3021億余円となっている。このうち源泉所得税は1333億余円、源泉所得税及復興特別所得税(注)は14兆7499億余円、申告所得税は1898億余円、申告所得税及復興特別所得税は2兆8408億余円、法人税は11兆5213億余円、相続税・贈与税は1兆7019億余円、消費税及地方消費税は17兆0522億余円となっていて、これら各税の合計額は48兆1895億余円となり、全体の82.6%を占めている。

(注)
復興特別所得税  東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)に基づくものであり、平成25年1月から49年12月までの25年間、源泉所得税及び申告所得税に、その税額の2.1%相当額を上乗せする形で徴収されるもの

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、上記の各税に重点をおいて、合規性等の観点から、課税が法令等に基づき適正に行われているかに着眼して、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき本院に提出された証拠書類等により検査するとともに、全国の12国税局等及び524税務署のうち12国税局等及び87税務署において、申告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、国税局等及び税務署に調査等を求めて、その調査等の結果の内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 徴収過不足の事態

検査の結果、57税務署において、納税者106人から租税を徴収するに当たり、徴収額が、104事項計257,332,901円(20年度から25年度まで)不足していたり、2事項計6,739,000円(24、25両年度)過大になっていたりしていて、不当と認められる。

これを、税目別に示すと表のとおりである。

表 税目別の徴収過不足額等

税目 事項数 徴収不足額 事項数 徴収過大額(△)
     
源泉所得税、源泉所得税及復興特別所得税 6 15,904,901 - -
申告所得税 24 52,012,500 1 △ 1,172,100
法人税 51 145,184,500 1 △ 5,566,900
相続税・贈与税 19 37,860,300 - -
消費税 4 6,370,700 - -
104 257,332,901 2 △ 6,739,000

なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、全て徴収決定又は支払決定の処置が執られた。

(3) 発生原因

このような事態が生じていたのは、前記の57税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、課税資料の収集及び活用が的確でなかったりしたため、誤ったままにしていたことなどによると認められる。

(4) 税目ごとの態様

この106事項について、源泉所得税、源泉所得税及復興特別所得税(以下、源泉所得税と源泉所得税及復興特別所得税とを合わせて「源泉所得税」という。)、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税の別に、その主な態様を示すと次のとおりである。

ア 源泉所得税

源泉所得税に関して徴収不足になっていた事態が6事項あった。これらは、報酬及び配当に関する事態である。

報酬及び配当の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収して、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、税務署は支払者に対して納税の告知をしなければならないこととなっている。

この報酬及び配当に関して、徴収不足になっていた事態が6事項計15,904,901円あった。その内容は、報酬の支払額や自己株式の取得による配当とみなされる金額について、法定納期限を経過した後も長期間にわたって源泉所得税が納付されていないのに、課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、納税の告知をしていなかったものである。

イ 申告所得税

申告所得税に関して徴収不足又は徴収過大になっていた事態が25事項あった。この内訳は、不動産所得に関する事態が11事項、譲渡所得に関する事態が9事項及びその他に関する事態が5事項である。

(ア) 不動産所得に関する事態

個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費等を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、個人が有する減価償却資産の償却費として不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、当該資産について定められた償却の方法に基づいて計算した金額とすることとなっている。そして、19年4月1日以後に取得した建物の減価償却費の計算は、定額法に基づき行うこととなっている。

この不動産所得に関して、徴収不足になっていた事態が10事項計18,143,000円、徴収過大になっていた事態が1事項1,172,100円あった。その主な内容は、減価償却費の計算を誤って必要経費の額を過大に計上しているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていたものである。

<事例1> 不動産所得の必要経費の額を過大に計上していた事態

納税者Aは、平成22年分から24年分までの申告に当たり、不動産所得の計算において、貸付けの用に供している2棟の建物について、定率法に基づき計算した減価償却費を必要経費に算入し、各年分の総収入金額からこれらの必要経費等を差し引き、不動産所得の金額を算出していた。

しかし、同人の青色申告決算書によれば、当該2棟の建物は19年9月及び23年7月に取得したものであり、減価償却費の計算は定額法に基づき行わなければならない。したがって、減価償却費を定率法に基づき計算していたことにより、22年分から24年分までの減価償却費が過大となり不動産所得の金額が過小となっていたのに、これを見過ごしたため、申告所得税額計4,147,600円が徴収不足になっていた。

(イ) 譲渡所得に関する事態

個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額等を差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。そして、個人が相続又は遺贈により取得した資産を一定の期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち所定の方法により計算した金額を、当該譲渡した資産に係る譲渡利益金額を超えない範囲で取得費に加算する特例を適用できることとなっている。

この譲渡所得に関して、徴収不足になっていた事態が9事項計28,316,400円あった。その主な内容は、取得費に加算できる相続税額を過大に計上しているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったりしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていたものである。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、事業所得等に関して、徴収不足になっていた事態が5事項計5,553,100円あった。

ウ 法人税

法人税に関して徴収不足又は徴収過大になっていた事態が52事項あった。この内訳は、受取配当等の益金不算入に関する事態が8事項、法人税額の特別控除に関する事態が7事項及びその他に関する事態が37事項である。

(ア) 受取配当等の益金不算入に関する事態

法人が内国法人から受ける配当等の金額、証券投資信託の収益の分配金のうち内国法人から受ける配当等から成る部分の金額等については、所定の方法により計算した金額を所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととなっている。ただし、証券投資信託のうち特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金等については、その全額が益金不算入の対象とならないこととなっている。

この受取配当等の益金不算入に関して、徴収不足になっていた事態が8事項計45,627,100円あった。その主な内容は、受取配当等の益金不算入の対象とならない特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金等を受取配当等の益金不算入額としているのに、これを見過ごしたため、所得の金額を過小のままとしていたものである。

<事例2> 受取配当等の益金不算入の対象とならない特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金を受取配当等の益金不算入額としていた事態

B会社は、平成19年4月から20年3月まで及び21年4月から22年3月までの2事業年度分の申告に当たり、特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金を受取配当等の益金不算入額とするなどしていた。

しかし、特定外貨建等証券投資信託の収益の分配金は、その全額が受取配当等の益金不算入の対象とならないなどのため、2事業年度分の所得の金額が過小となっていたのに、これを見過ごしたため、法人税額計27,751,800円が徴収不足になっていた。

(イ) 法人税額の特別控除に関する事態

法人税額から一定の金額を控除する各種の特別控除が設けられている。このうち、青色申告書を提出する法人に損金の額に算入した試験研究費がある場合には、当該事業年度の法人税額の100分の30相当額等を限度として、試験研究費に一定の割合を乗じた金額(以下「税額控除限度額」という。)を法人税額から控除できることとなっている。そして、上記の試験研究費の額は、その試験研究費に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には、当該金額を控除した金額とすることとなっている。

この法人税額の特別控除に関して、徴収不足になっていた事態が7事項計16,712,000円あった。その主な内容は、試験研究費の額について、試験研究費に充てるため他の者から支払を受けた金額を控除していなかったり、損金の額に算入していない試験研究費を含めたりしているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていたものである。

<事例3> 試験研究費に係る法人税額の特別控除の規定の適用を誤っていた事態

C会社は、平成22年4月から24年3月までの2事業年度分の申告に当たり、試験研究費に係る法人税額の特別控除の規定を適用して、当該事業年度の税額控除限度額等を法人税額から控除していた。

しかし、同会社の申告書等によれば、特別控除額の計算の基とした試験研究費には、損金の額に算入していない試験研究費が含まれていることから、上記特別控除の規定を適用した各事業年度の税額控除限度額等が過大となっていたのに、これを見過ごしたため、法人税額計6,587,600円が徴収不足になっていた。

(ウ) その他に関する事態

(ア)及び(イ)のほか、役員給与の損金不算入、収用等の場合の課税の特例等に関して、徴収不足になっていた事態が36事項計82,845,400円、徴収過大になっていた事態が1事項5,566,900円あった。

エ 相続税・贈与税

相続税・贈与税に関して徴収不足になっていた事態が19事項あった。この内訳は、相続税については土地建物等の価額に関する事態が8事項及びその他に関する事態が5事項、贈与税については有価証券の価額に関する事態が6事項である。

(ア) 相続税
a 土地建物等の価額に関する事態

個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対して相続税を課することとなっており、取得した財産の価額は、相続又は遺贈により取得した時の時価とされていて、土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。そして、共有財産の持分の価額は、その財産の価額をその共有者の持分に応じて案分した価額によって評価することとなっている。

この土地建物等の価額に関して、徴収不足になっていた事態が8事項計21,793,100円あった。その主な内容は、土地の価額の評価において、取得した持分を誤っているのに、これを見過ごしたため、土地の価額を過小のままとしていたものである。

<事例4> 土地の価額の評価を誤っていた事態

納税者Dは、平成22年10月相続分の申告に当たり、相続により取得した土地について、その持分を1万分の7386として価額を評価していた。

しかし、申告書等によれば、同人が相続により取得した土地の持分は、1万分の7386ではなく1万分の7952であった。したがって、このことなどにより課税価格が過小となっていたのに、これを見過ごしたため、相続税額4,927,400円が徴収不足になっていた。

b その他に関する事態

aのほか、法定相続割合等に関して、徴収不足になっていた事態が5事項計6,687,200円あった。

(イ) 贈与税

個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し贈与税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、贈与により取得した時の時価とされている。

この贈与税に関して、徴収不足になっていた事態が6事項計9,380,000円あった。その内容は、取引相場のない株式の価額について時価の算定を誤っているのに、これを見過ごしたため、株式の価額を過小のままとしていたものである。

オ 消費税

消費税に関して徴収不足になっていた事態が4事項あった。この内訳は、課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態が3事項及びその他に関する事態が1事項である。

(ア) 課税仕入れに係る消費税額の控除に関する事態

事業者は、課税期間における課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除した額を消費税として納付することとなっている。

この課税仕入れに係る消費税額の控除に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計5,471,200円あった。その主な内容は、課税仕入れにならない土地の購入費等を課税仕入れに係る支払対価の額に計上しているのに、これを見過ごしたため、課税仕入れに係る消費税額の控除額を過大のままとしていたものである。

(イ) その他に関する事態

(ア)のほか、課税売上高の計上に関して、徴収不足になっていた事態が1事項899,500円あった。

これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局別に示すと次のとおりである。

源泉所得税   申告所得税   法人税   相続税
贈与税
  消費税  
国税局 税務署数 事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
事項数 徴収不足
徴収過大
(△)
      千円   千円   千円   千円   千円   千円
札幌国税局 3 1 820 1 2,335 3 1,822 5 4,979
仙台国税局 2 2 28,354 2 28,354
関東信越国税局 8 1 1,190 3 4,604 7 10,898 1 926 1 2,769 13 20,389
東京国税局 26 5 14,714 15 36,401 25 69,197 14 28,710 2 2,701 61 151,725
1 △ 5,566 1 △ 5,566
金沢国税局 2 1 899 1 899
1 △ 1,172 1 △ 1,172
名古屋国税局 5 2 5,731 6 15,444 1 6,401 9 27,576
大阪国税局 6 2 2,089 6 8,050 8 10,139
広島国税局 2 2 8,373 2 8,373
高松国税局 1 1 1,197 1 1,197
福岡国税局 2 1 2,364 1 1,332 2 3,697
57 6 15,904 24 52,012 51 145,184 19 37,860 4 6,370 104 257,332
1 △ 1,172 1 △ 5,566 2 △ 6,739