文部科学本省(以下「本省」という。)は、平成23年度に、環境放射能水準調査(放射能分析)に係る事業を、財団法人日本分析センター(25年4月1日以降は公益財団法人日本分析センター。以下「センター」という。)に契約金額2,446,653,300円で委託して実施している(以下、この事業を「委託事業」という。)。
委託事業は、全国における環境放射能の水準を把握するなどのために、センターで採取された大気浮遊じん及び降下物や福島県内で採取された降下物、陸水、土壌等の試料について、ゲルマニウム半導体方式放射能検査機器(以下「検査機器」という。)によりガンマ線放出核種の測定等を行うものである。
なお、委託事業は、本省が、エネルギー対策特別会計電源開発促進勘定の原子力施設等防災対策等委託事業の一環として実施していたもので、25年度以降は原子力規制委員会に移管されている。
委託事業は、本省が19年2月に制定した「科学技術・学術政策局、研究振興局及び研究開発局委託契約事務処理要領」により、その事務を処理することとなっている。同要領によれば、委託業務の実施に際して収入を得た場合や取引相手先からの納入遅延金が発生した場合には、当該金額を、委託事業実績報告書(以下「実績報告書」という。)において、収入として計上することとされている。そして、委託の相手方には、委託業務の実施に要した費用の額から、収入金に相当する額を控除した額を委託費として支払うこととなっている。
本省は、委託事業について、24年3月16日までに、前記の契約金額2,446,653,300円をセンターに概算払していた。そして、センターは、事業の実施期間終了後の同年4月10日に、本省に対して、委託業務の実施に要した費用の額は2,017,005,698円であり、取引相手先からの納入遅延金等の収入はないとする実績報告書を提出していた。
その後、本省は、委託費の額の確定に関する現地調査を24年11月29、30両日及び12月13日にセンターにおいて実施するなどした上で、25年3月8日に、センターに対する委託費の額を上記委託業務の実施に要した費用の額と同額の2,017,005,698円と確定して、同年3月22日に、センターから上記の概算払額2,446,653,300円との差額429,647,602円の返還を受けていた。
本院は、合規性等の観点から、委託業務の実施に要したとする費用は適正に支払われているかなどに着眼して、委託事業を対象として、原子力規制委員会及びセンターにおいて、購入契約書、納品書等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
センターは、23年度に、福島県内で採取された試料の測定数が増加することを見込み、検査機器10式を代金165,900,000円で購入し、同額を委託業務の実施に要した費用の額に含めて、委託費の額を2,017,005,698円としていた。
一方、上記検査機器10式の据付作業等が完了したのは、購入契約に定めた期限である24年1月31日から55日が経過した同年3月26日となったため、センターは、購入契約に基づく履行遅滞金9,124,500円(購入契約金額165,900,000円×1/1000×遅延日数55日)を課すこととして、その旨を同年3月27日に取引相手先に通知していた。そして、履行遅滞金9,124,500円の徴収は、センターが支払うべき購入代金165,900,000円と相殺することにより行うこととしていた。
しかし、センターは、24年4月10日に本省に提出した実績報告書において、同年3月27日に取引相手先に通知した前記要領の納入遅延金に相当する履行遅滞金9,124,500円を収入として計上せず、同額を委託業務の実施に要した費用の額から控除していなかった。その後、センターは、同年4月27日に、検査機器の購入代金と相殺することにより履行遅滞金を徴収していたが、実績報告書を訂正して再提出していなかった。
したがって、委託事業に係る委託費が9,124,500円過大に支払われていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、センターにおいて委託費の適正な事務処理に対する認識が欠けていたこと、本省において実績報告書に対する調査が十分でなかったことなどによると認められる。