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(1) 義務教育費国庫負担金を算定するために各都道府県が作成する報告書の様式において、事務職員の定数を適切に算定するために特に注意を要する事項を明示することなどにより、同負担金の交付額の算定が適正に行われるよう是正改善の処置を求めたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)文部科学本省 (項)義務教育費国庫負担金
部局等
文部科学本省、8府県
国庫負担の根拠
義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)
義務教育費国庫負担金の概要
義務教育無償の原則にのっとり、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として交付するもの
国庫負担の対象
公立の義務教育諸学校に勤務する教職員の給与及び報酬等に要する経費
検査の対象
8府県
上記の8府県に対して交付された国庫負担金
1兆1771億1338万余円(平成21年度~24年度)
国庫負担金が過大に算定されている府県
8府県
上記の8府県において過大に算定されている国庫負担金
7億9700万円(平成21年度~24年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

義務教育費国庫負担金の交付額の算定について

(平成26年10月30日付け 文部科学大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 制度の概要

(1) 義務教育費国庫負担金の概要

義務教育費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、義務教育について、義務教育無償の原則にのっとり、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として、都道府県に対して交付するものである。また、負担金により国が負担する経費は、公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、中等教育学校の前期課程(以下、これらを合わせて「小中学校」という。)並びに特別支援学校の小学部及び中学部)に勤務する教員、事務職員等(以下、これらを合わせて「教職員」という。)の給与及び報酬等に要する経費となっており、その額は、都道府県の実支出額と「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」(平成16年政令第157号。以下「限度政令」という。)に基づいて算定した額(以下「算定総額」という。)とのいずれか低い額の3分の1となっている(図1参照)

図1 負担金の交付額の算定方法

負担金の交付額の算定方法

貴省が都道府県に対して交付する負担金は毎年度多額に上っており、平成24年度に47都道府県に対して交付された負担金の合計は1兆5301億0425万余円となっている。

(2) 算定総額の算定

限度政令によれば、算定総額は、小中学校の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額等を基に算定することとされている。そして、算定基礎定数については、当該年度の5月1日現在において、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号。以下「標準法」という。)に基づいて算定した教職員の定数(以下「標準定数」という。)等を基に算定することとされている。

(3) 小中学校の事務職員に係る就学援助定数の算定

小中学校の教職員のうち、学校における総務、財務、経理等の事務に従事する事務職員に係る標準定数は、標準法第9条各号の規定により算定する数を合計した数によることとなっている。このうち、同条第4号の規定により算定する数は、児童生徒の就学援助に係る事務量が多くなるとみられる一定基準以上の小中学校に事務職員の標準定数を加算する趣旨のものであり、次のア又はイに該当する児童生徒(以下「就学困難な児童生徒」という。)の数が著しく多い小中学校(以下「4号該当校」という。)の数と同数となっている(以下、同条第4号の規定により算定する数を「就学援助定数」という。図2参照)。

ア 生活保護法(昭和25年法律第144号)第6条第2項に規定する要保護者(以下「要保護者」という。)が保護者である児童生徒(以下「要保護児童生徒」という。)。ただし、当該保護者が「就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律」(昭和31年法律第40号。以下「就学援助法」という。)に規定する費用等である「学用品又はその購入費」、「通学に要する交通費」及び「修学旅行費」(以下、この3種類の費用等を合わせて「就学費用」という。)の支給を受けるものに限る。

イ 市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会が要保護者に準ずる程度に困窮していると認める者が保護者である児童生徒(以下「準要保護児童生徒」という。)。ただし、当該保護者が就学援助法に掲げられた就学費用の支給を当該市町村から受けるものに限る。

そして、4号該当校の数は、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律施行令」(昭和33年政令第202号)の規定によれば、就学困難な児童生徒の数が100人以上であり、その学校における児童生徒の総数に対する割合(以下「就学困難割合」という。)が100分の25以上である小中学校の数とされている。

図2 就学援助定数の算定方法(概念図)

就学援助定数の算定方法

(4) 就学援助法に基づく就学費用の支給と生活保護法に基づく教育扶助の関係

要保護者は、就学援助法の規定により、その児童生徒が在籍する小中学校を通じるなどして市町村から就学費用を受給することができる一方で、その児童生徒について、都道府県等から生活保護法に基づく教育扶助(以下「教育扶助」という。)として「義務教育に伴って必要な教科書その他の学用品」、「義務教育に伴って必要な通学用品」等を受給することができることとなっている。そして、貴省は、毎年度、就学費用の支給事務に関する通知を発して、当該児童生徒について教育扶助が行われている場合には、就学援助法に規定する費用等のうち、教育扶助において措置されていない「修学旅行費」以外の「学用品又はその購入費」及び「通学に要する交通費」については、教育扶助と重複して給与することのないよう留意することを市町村に求めている。

(5) 就学援助定数を算定するための資料

貴省は、毎年度、都道府県ごとの算定基礎定数を確認するために、貴省初等中等教育局長通知「公立義務教育諸学校の教職員定数に関する報告書の提出について(依頼)」を各都道府県に発出しており、その提出資料の一つである「要保護及び準要保護児童生徒が100人以上でその学校の児童生徒に対する割合が25/100以上の学校数調」(以下「4号該当校数調」という。)において、4号該当校の数を報告するように求めている。4号該当校数調の様式においては、該当する学校ごとの児童生徒の総数、要保護児童生徒及び準要保護児童生徒別の就学困難な児童生徒の数並びに就学困難割合を記入することとなっており、各都道府県は、4号該当校数調に記入すべき事項の基礎となる調書(以下「調書」という。)の作成及び提出を、小中学校の児童生徒やその保護者の状況を把握している管内の市町村に依頼している。

そして、各都道府県は、管内の市町村から提出された調書を取りまとめて4号該当校数調を作成して、貴省に提出している。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、負担金の交付額が毎年度多額に上っていることを踏まえて、合規性等の観点から、負担金の交付額が標準法、限度政令等に基づいて適切に算定されているかなどに着眼して、21年度から24年度までの間に算定総額を基に負担金の交付を受け、就学援助定数の算定実績のある都府県のうち、8府県(注1)に対して交付された負担金計1兆1771億1338万余円を対象として、貴省及び8府県において、教職員定数に関する各種の資料、4号該当校数調等の書類を精査するなどして会計実地検査を行った。

(注1)
8府県  京都府、神奈川、愛知、香川、高知、福岡、佐賀、大分各県

(検査の結果)

検査したところ、8府県の全てにおいて、次のような事態が見受けられた。

ア 就学援助定数の算定状況

8府県は、4号該当校の数の算定に当たり、保護者が就学援助法に規定する就学費用の支給を受けるものかどうかを考慮することなく、要保護児童生徒及び準要保護児童生徒の総数を就学困難な児童生徒の数としていた。

そして、これにより算定した学校ごとの就学困難な児童生徒の数及び就学困難割合を基に、8府県は、4号該当校の数を21年度から24年度までの間で延べ1,509校と算定して、これと同数の計1,509人を就学援助定数としていた。

しかし、要保護者は、前記のとおり、その児童生徒について教育扶助を受給することができることとなっていることから、8府県が4号該当校としていた上記の延べ1,509校における要保護児童生徒の総数延べ36,082人の保護者について就学費用の受給状況をみると、「修学旅行費」以外の「学用品又はその購入費」及び「通学に要する交通費」を受給している者は1人も見受けられなかった。

そして、就学費用として「修学旅行費」を受給していた上記保護者の児童生徒の数を算定すると、前記の延べ36,082人のうちの延べ8,679人となっていて、就学困難な児童生徒に該当する要保護児童生徒の数は要保護児童生徒の総数と比較して相当程度少ない数となっていた。

これは、教育扶助により標準的に受給できる額が、就学費用のうち「学用品又はその購入費」及び「通学に要する交通費」として受給できる上限額を上回っており、要保護児童生徒の保護者が教育扶助の受給を選択していることに加えて、当該保護者が「修学旅行費」を受給するのは、要保護児童生徒が修学旅行の実施される小中学校の特定の学年に在籍する場合のみとなっていることによると考えられる。

したがって、8府県において、保護者が就学費用の支給を受ける要保護児童生徒のみを就学困難な児童生徒に該当する要保護児童生徒として就学援助定数を算定すると計1,093人となり、前記の計1,509人との差である計416人が過大に算定されており、これに係る負担金計7億9700万余円が過大に交付されていると認められる。

イ 4号該当校数調の作成状況

貴省は、4号該当校数調の様式において、要保護児童生徒については、「就学援助法第2条に規定する保護者(同条に規定する費用等の支給を受けるものに限る。)の児童(生徒)数」を記入することとする注記を設けて、その保護者が就学援助法に規定する就学費用の支給を受けるものに限って記入するよう求めている。

しかし、この注記は、標準法の条文の一部を引用しただけのものであり、前記のとおり、要保護児童生徒の保護者が就学費用の支給を受けるのは、実質的に当該要保護児童生徒が特定の学年に在籍している場合のみとなっている状況を考慮すると、就学困難な児童生徒の数を算定するに当たって特に注意を要する旨を周知する内容とはなっていない。

このため、8府県のうち6県(注2)は調書の作成、提出を管内の市町村に依頼する際の記入要領等に4号該当校数調の様式と同様の注記を設けていたにもかかわらず、その管内市町村は要保護児童生徒の保護者が就学費用の支給を受けるものかどうかを考慮することなく、要保護児童生徒の総数を就学困難な児童生徒の数に計上して調書を作成し、これを各県に提出していた。

また、残りの2府県(注3)は、管内の市町村に調書の作成、提出を依頼する際の記入要領等に4号該当校数調の様式と同様の注記を設けていなかったため、管内市町村は、4号該当校数調に就学困難な児童生徒として計上できる要保護児童生徒について、その保護者が就学援助法に規定する就学費用の支給を受けるものに限られることを認識できていなかった。

したがって、貴省が4号該当校数調の様式に設けた注記は、適正に4号該当校の数を算定するための必要な情報として十分な内容となっていないと認められる。

(注2)
6県  神奈川、愛知、高知、福岡、佐賀、大分各県
(注3)
2府県  京都府、香川県

(是正改善を必要とする事態)

8府県において、保護者が就学援助法に規定する就学費用の支給を受けるものではない要保護児童生徒を含めて算定した就学困難な児童生徒の数を基に就学援助定数を算定していたことにより、負担金が過大に算定されている事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、就学困難な児童生徒に該当する要保護児童生徒の数の算定に当たって、8府県において標準法等の規定についての理解が十分でないことなどにもよるが、主として、貴省において、要保護児童生徒の保護者が就学援助法に規定する就学費用の支給を受けるのは実質的に修学旅行費の支給を受ける場合のみとなっていることに特に注意を要することについて、4号該当校数調の様式に具体的に記載していないことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

貴省は、今後も、各都道府県に対して法令等に基づいて多額の負担金を交付していくこととなる。

ついては、貴省において、要保護児童生徒の保護者が就学援助法に規定する就学費用の支給を受けるのは、実質的に要保護児童生徒が修学旅行の実施される特定の学年に在籍する場合のみとなっていることから、就学困難な児童生徒に該当する要保護児童生徒の数を算定する際には特に注意を要することなどについて、4号該当校数調等に明示するとともに、これを各都道府県に対して周知し、その徹底を図ることにより、負担金の算定が適正に行われるよう是正改善の処置を求める。