文部科学省は、東日本大震災からの復旧・復興を担う専門人材育成支援事業を学校法人等に委託して実施している。しかし、同事業のうち「中長期的な人材育成コースの開発・実証」(以下「委託事業」という。)により開発された教育プログラム等の成果物が岩手、宮城、福島各県(以下「被災地」という。)の専門学校等に対して導入されておらず、委託事業の目的が十分に達成されていない事態が見受けられた。
したがって、文部科学省において、委託先を原則として被災地に所在する学校法人等とするなどし、開発する個々の成果物の活用方法を事業計画書に具体的に記載させて、成果物が被災地の専門学校等に対して早期に導入されるような委託事業の選定を図ったり、開発された個々の成果物の活用方法を実績報告書に具体的に記載させた上で、既に終了した委託事業を含めて、成果物ごとに被災地での活用状況について調査を行い、その結果を踏まえて活用を図るための検討を十分に行うとともに、専門学校等に対して広く情報を提供することにより、成果物の活用促進を図ったりするよう、文部科学大臣に対して平成25年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、文部科学本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、文部科学省は、本院指摘の趣旨に沿い、26年3月に委託要綱等を改正して、次のような処置を講じていた。
ア 委託先を原則として被災地に所在する学校法人等とするとともに、開発する個々の成果物の活用方法を事業計画書に具体的に記載させるようにし、事業選定に当たって成果物の活用方法等が個別具体的に記載されているかなどの点を評価の観点に追加するなどして、成果物が被災地の専門学校等に対して早期に導入されるような委託事業の選定を図った。
イ 開発された個々の成果物の活用方法を実績報告書に具体的に記載させるようにした上で、26年4月に成果物ごとに被災地での活用状況について調査を行い、その結果を踏まえて活用を図るための検討を行った結果、地区ごとに開催される専門学校等の関係者の会議において本事業の成果物の積極的な活用を依頼するなどの対応策を実施することとしたり、同年5月に被災地に所在する専門学校、専修学校関係団体、県等に対して情報を提供したりなどして、成果物の活用促進を図った。