特定求職者雇用開発助成金は、雇用保険(前掲242ページの「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」参照)で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、特定の求職者を雇い入れた事業主に対して、当該労働者の賃金の一部を助成するもので、特定就職困難者雇用開発助成金及び高年齢者雇用開発特別奨励金のほか、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(平成23年厚生労働省令第58号)により、平成23年5月以降、当分の間、暫定措置として定められている被災者雇用開発助成金がある。
被災者雇用開発助成金の支給要件は、次のいずれかに該当する者について、再就職を早急に支援するために、事業主が公共職業安定所等(以下「安定所等」という。)の紹介により、1年以上継続して雇用することが見込まれる労働者として雇い入れることなどとなっている。
(以下、ア及びイを合わせて「被災離職者等」という。)
そして、支給額は、原則として、新たに雇い入れた被災離職者等1人につき中小企業事業主以外の事業主の場合は50万円、中小企業事業主の場合は90万円となっており、これを6か月ごとに2回に分け、それぞれ25万円、45万円ずつ支給することとなっている。
被災者雇用開発助成金の支給を受けようとする事業主は、当該助成金に係る支給申請書及び支給要件を満たした労働者に係る出勤簿等の添付書類を都道府県労働局(以下「労働局」という。)に提出することとなっている。そして、労働局は、支給申請書等に記載されている当該労働者の氏名、生年月日、雇用年月日、賃金の支払、事業主の過去の不正受給の有無等を審査した上で、支給決定を行い、これに基づいて被災者雇用開発助成金の支給を行うこととなっている。
本院は、合規性等の観点から、事業主に対する被災者雇用開発助成金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、全国47労働局のうち、21労働局において会計実地検査を行い、23年度から25年度までの間に被災者雇用開発助成金の支給を受けた事業主から164事業主を選定して、被災者雇用開発助成金の支給の適否について検査した。
検査に当たっては、事業主から提出された支給申請書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査の結果、4労働局管内における5事業主は、既に雇い入れている者又は事実上雇入れが決定している者に形式的に安定所等の紹介を受けさせて、その紹介により雇い入れたこととして申請するなどしており、これら5事業主に対する被災者雇用開発助成金の支給額9,699,725円のうち6,099,725円は支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったなどのため、支給申請書等の記載内容が事実と相違していたのに、上記の4労働局において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。
これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。
労働局名 | 本院の調査に係る事業主数 | 不適正受給事業主数 | 左の事業主に支給した被災者雇用開発助成金 | 左のうち不当と認める被災者雇用開発助成金 |
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千円 | 千円 | |||
北海道 | 18 | 2 | 3,399 | 3,399 |
群馬 | 5 | 1 | 900 | 900 |
埼玉 | 15 | 1 | 900 | 900 |
新潟 | 26 | 1 | 4,500 | 900 |
計 | 64 | 5 | 9,699 | 6,099 |