ページトップ
  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第9 厚生労働省 |
  • 不当事項 |
  • 補助金

(3)国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの[17都府県](72)―(124)


53件 不当と認める国庫補助金 809,952,587円

国民健康保険は、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関して、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等を行う保険である。

市町村が行う国民健康保険の被保険者は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、一般被保険者と退職被保険者(注1)及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が退職被保険者となるのは、当該被保険者が厚生年金等の受給権を取得した日(ただし、国民健康保険の資格取得年月日以前に年金受給権を取得している場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)となっている。そして、退職被保険者等となったときは、年金証書等が到達した日の翌日から起算して14日以内に市町村に届出をすることなどとなっている。

(注1)
退職被保険者  被用者保険の被保険者であった者で、退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に65歳に達するまでの間において適用される資格を有する者

国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険の事業運営の安定化を図るために、同法に基づき療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。

国庫負担金の交付の対象は、一般被保険者に係る医療費(平成19年度以前は老人保健法(昭和57年法律第80号)による医療を受けることができる者に係る医療費(被用者保険の保険者等が拠出する老人保健医療費拠出金等で負担)を除く。)となっており、退職被保険者等に係る医療費については、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費等交付金等で負担することとなっていることから、国庫負担金の交付の対象となっていない。

毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令」(昭和34年政令第41号。平成20年3月以前は「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」)等に基づき、次のとおり算定することとなっている。

国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの 画像

(注2)
保険基盤安定繰入金  市町村が、一般被保険者の属する世帯のうち、低所得者層の負担の軽減を図るために減額した保険料又は保険税の総額について、当該市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れた額
(注3)
前期高齢者納付金等  「高齢者の医療の確保に関する法律」(昭和57年法律第80号)の規定により社会保険診療報酬支払基金の高齢者医療制度関係業務に要する費用として納付する前期高齢者納付金及び後期高齢者支援金並びに介護納付金(前期高齢者交付金がある場合には、これを控除した額)
(注4)
国の負担割合  平成16年度までは40/100、17年度は36/100、18年度から23年度までは34/100、24年度以降は32/100

このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額と入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額との合算額とすることとなっている。

ただし、届出が遅れるなどしたために退職被保険者等の資格が遡って確認された場合には、一般被保険者に係る医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除することとなっている。

また、都道府県又は市町村が、国の負担金等の交付を受けずに自らの負担で、年齢その他の事由により被保険者の全部又は一部について、その一部負担金に相当する額の全部又は一部を当該被保険者に代わり医療機関等に支払う措置(以下「負担軽減措置」という。)を講じている場合がある。そして、負担軽減措置の対象者の延べ人数が一定の規模以上の場合には、負担軽減措置の対象者に係る療養の給付に要する費用の額等に、被保険者の負担の軽減の度合いに応じた所定の率を乗じて減額調整(注5)を行うこととなっている。

(注5)
減額調整  被保険者が医療機関等の窓口で支払う一部負担金を軽減させると、一般的に受診が増えて医療給付費の増加(波及増)が生ずるとされており、これにより増加した医療給付費を国庫負担対象費用額に含めると、他の市町村との公平を欠くことから、この増加分を減額するために調整すること

国庫負担金の交付手続については、〔1〕 交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出して、〔2〕 これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査した上で厚生労働省に提出して、〔3〕 厚生労働省はこれに基づき交付決定を行い国庫負担金を交付することとなっている。そして、〔4〕 当該年度の終了後に、市町村は都道府県に事業実績報告書を提出して、〔5〕 これを受理した都道府県は、その内容を審査した上で厚生労働省に提出して、〔6〕 厚生労働省はこれに基づき交付額の確定を行うこととなっている。

本院は、34都道府県の323市区町村において、19年度から24年度までの間に交付された国庫負担金について、会計実地検査を行った。その結果、17都府県の53市町村において、負担軽減措置の対象となっている医療給付費に係る減額調整を誤っていたり、一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたり、遡及して退職被保険者等の資格を取得した者(以下「遡及退職被保険者等」という。)に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったりするなどしていたため、国庫負担金交付額計126,318,547,849円のうち計809,952,587円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、上記の53市町村において制度の理解が十分でなく事務処理が適切でなかったこと、上記の17都府県において事業実績報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について事例を示すと次のとおりである。

<事例>

熊本市は、平成23年度の国庫負担金の実績報告に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、遡及退職被保険者等について、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った23年度以前分の医療給付費の一部を控除していなかったため、国庫負担対象費用額を過大に算定していた。

その結果、国庫負担金が64,209,161円過大に交付されていた。

以上を部局等別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

  部局等 交付先
(保険者)
年度 国庫負担対象費用額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象費用額 不当と認める国庫負担金 摘要
        千円 千円 千円 千円  
(72) 青森県 八戸市 19~23 48,676,700 16,549,355 128,289 43,618 一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(73) 三沢市 20~23 6,989,087 2,375,398 86,080 29,267 一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたものなど
(74) 上北郡
六ヶ所村
22 483,313 164,223 3,704 1,259 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(75) 秋田県 大館市 19~23 12,708,440 4,320,534 58,356 19,841 一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(76) 栃木県 矢板市 23 1,464,333 497,873 22,652 7,701 一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたものなど
(77) 東京都 小平市 21 5,792,039 1,969,365 6,976 2,334 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(78) 新潟県 新潟市 19、20 53,094,015 18,050,223 393,472 133,790 負担軽減措置の対象となっている医療給付費に係る減額調整を誤っていたもの
(79) 長岡市 19、20 16,531,717 5,616,141 131,754 44,784
(80) 三条市 19、20 6,783,115 2,305,896 38,472 13,080
(81) 柏崎市 19~22 10,899,887 3,704,384 63,651 21,641
(82) 新発田市 19、20 6,314,197 2,145,994 34,484 11,724
(83) 小千谷市 19、20 2,368,720 805,213 18,995 6,458
(84) 加茂市 19~22 4,100,802 1,394,087 43,985 14,955
(85) 十日町市 19、20 4,402,113 1,496,663 23,502 7,990
(86) 見附市 19~22 4,533,371 1,541,155 14,943 5,080
(87) 村上市 19、20 3,472,865 1,180,812 25,313 8,606
(88) 燕市 19~22 11,289,915 3,838,481 72,927 24,795
(89) 糸魚川市 19~22 5,329,354 1,815,362 23,869 8,115
(90) 妙高市 19、20 2,258,225 767,409 16,052 5,456
(91) 五泉市 19、20 3,971,379 1,349,378 44,017 14,965
(92) 上越市 19~22 23,597,610 8,020,255 270,901 92,106
(93) 阿賀野市 19~22 6,823,691 2,318,712 50,621 17,211
(94) 佐渡市 19~22 9,342,618 3,175,874 59,440 20,209
(95) 魚沼市 19~22 5,752,697 1,955,764 33,860 11,505
(96) 南魚沼市 19~22 9,298,580 3,161,056 84,039 28,573
(97) 胎内市 19、20 2,271,564 772,196 11,196 3,806
(98) 北蒲原郡
聖籠町
19、20 970,662 329,533 9,190 3,123
(99) 東蒲原郡
阿賀町
19、20 1,280,223 435,277 8,762 2,979
(100) 中魚沼郡
津南町
19~22 1,656,411 563,191 11,179 3,801
(101) 岩船郡
朝日村
19 410,858 139,539 3,079 1,047
(102) 岩船郡
山北町
19 376,313 127,945 3,112 1,058
(103) 静岡県 富士市 23 8,669,506 2,947,632 65,441 22,249 一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(104) 掛川市 23 3,336,693 1,134,475 4,356 1,481
(105) 裾野市 24 1,599,210 509,302 4,539 1,543 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(106) 湖西市 24 1,450,470 460,951 (注6)
2,381 集計を誤って国庫負担金を過大に算定していたもの
(107) 三重県 桑名郡
木曽岬町
23 232,776 81,212 5,364 3,892 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(108) 大阪府 羽曳野市 23 4,102,967 1,395,008 51,413 13,846
(109) 和歌山県 伊都郡
かつらぎ町
22 929,503 316,031 20,892 7,103
(110) 鳥取県 東伯郡
琴浦町
23 861,123 294,063 (注6)
1,456 集計を誤って国庫負担金を過大に算定していたもの
(111) 岡山県 笠岡市 23 1,771,174 599,711 11,278 3,834 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(112) 愛媛県 伊予市 20~23 6,335,607 2,154,382 10,714 3,642 一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(113) 福岡県 直方市 19~23 12,224,699 4,132,361 13,200 4,488
(114) 宮若市 19~23 6,712,173 2,275,505 27,653 9,395 一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたものなど
(115) 長崎県 東彼杵郡
東彼杵町
23、24 898,668 295,767 8,755 2,869 一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(116) 東彼杵郡
川棚町
23 671,780 228,387 12,912 4,390
(117) 南松浦郡
新上五島町
24 1,116,562 357,790 11,931 3,818
(118) 熊本県 熊本市 23 31,363,263 10,663,519 188,850 64,209 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(119) 人吉市 23 1,438,765 498,333 (注6)
9,153 集計を誤って国庫負担金を過大に算定していたもの
(120) 大分県 佐伯市 23 4,156,830 1,423,534 (注6)
10,212
(121) 宮崎県 延岡市 22 5,655,083 1,922,724 44,204 15,029 遡及退職被保険者等に係る遡及期間中の医療給付費を控除していなかったもの
(122) 日南市 22 2,970,393 1,009,939 19,835 6,786
(123) 串間市 21 1,200,021 407,850 5,695 1,936
(124) 児湯郡
新富町
22 949,286 322,757 15,595 5,339
(72)―(124)の計 371,891,392 126,318,547 2,319,524 809,952  
(注6)
湖西市、人吉市、佐伯市及び琴浦町は、集計を誤って国庫負担金を過大に算定していたもので、国庫負担対象費用額の算出には誤りはなかったことから、本表の「不当と認める国庫負担対象費用額」欄には計数を掲げていない。
(注7)
平成20年4月1日以降は村上市
(注8)
新潟、長岡、三条、新発田、小千谷、十日町、村上、妙高、五泉、胎内各市、聖籠、阿賀両町は、平成21、22両年度においても、他年度と同様に負担軽減措置の対象となっている医療給付費の減額調整を誤っていたが、当該事態については平成24年度決算検査報告297ページの「国民健康保険の療養給付費負担金及び財政調整交付金の交付額の算定に当たり、定額制の負担軽減措置を実施した市町村において減額調整率を適用する際に必要となる負担軽減措置対象者の負担割合の算定方法を具体的に示して都道府県を通じて市町村に対して周知することなどにより、その交付額の算定が適正なものとなるよう是正改善の処置を求めたもの」に掲記していることから、両年度分については除外している。