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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第9 厚生労働省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2)中央職業能力開発協会に緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金を交付して設置造成させた緊急人材育成・就職支援基金(緊急人材育成支援事業)について、使用見込みのない額を速やかに国庫へ返納させるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)職業能力開発強化費
部局等
厚生労働本省
補助の根拠
予算補助
補助事業者
中央職業能力開発協会
基金の名称
緊急人材育成・就職支援基金(緊急人材育成支援事業)
基金事業の概要
雇用保険を受給できない者の職業訓練の機会を拡充するために、職業訓練、訓練・生活支援給付等を実施するもの
基金保有額
763億2832万余円(平成24年度末)
上記のうち使用見込みのない額
752億3648万円

1 基金の概要等

(1)緊急人材育成・就職支援基金の概要

厚生労働省は、中央職業能力開発協会(以下「協会」という。)に対して、平成21年度緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金交付要綱(平成21年厚生労働省発能第0605001号厚生労働事務次官通知)等に基づき、緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金(以下「交付金」という。)を交付している。そして、協会は、交付金の交付を受けて、緊急人材育成・就職支援基金(以下「支援基金」という。)を設置造成し、各種事業を実施している。

上記の各種事業は区分経理されており、このうち、緊急人材育成支援事業は、雇用保険を受給できない者の職業訓練の機会を拡充するために、支援基金を事業の財源に充てることにより職業訓練、訓練・生活支援給付等を実施するもの(以下「基金事業」という。)である。

(2)基金基準による見直し

政府は、平成18年8月に、「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(以下「基金基準」という。)を閣議決定し、国庫補助金等の交付を受けて設置造成した基金を保有する法人(独立行政法人、特殊法人、認可法人及び共済組合を除く。以下、この基金基準の対象となる法人を「基金法人」という。)が当該基金により実施している事業に関して、当該国庫補助金等を交付した府省(以下「所管府省」という。)が国庫補助金等の交付要綱等に基づく指導監督を行う場合の基準を定めている。

基金基準によれば、基金法人及び所管府省は、少なくとも5年に1回は定期的に基金の見直しを行うこと、定期的な見直しの際には、使用見込みが低いと判断される基金について、基金の財源となっている国庫補助金等の国庫への返納等、その基金の取扱いを検討し、公表することとされている。

また、基金による事業の新規申請の受付を終了した後も既採択分の支払等の後年度負担が発生する事業については、新規申請の受付を終了した時点で、直ちに国庫への返納等の検討に着手することとされており、受付を終了した年度以降、毎年度、支払財源等として必要のない額を国庫へ返納するなど、基金法人及び所管府省は、その基金の取扱いを検討し、公表することとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、有効性等の観点から、基金基準等による基金の見直しは適時適切に行われているか、使用見込みのない額を基金法人が保有していないかなどに着眼して、支援基金(緊急人材育成支援事業)(24年度末現在の基金保有額763億2832万余円(交付金相当額同額))を対象に、厚生労働本省及び協会において、実績報告書、事業報告書等の関係書類により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

厚生労働省は、21年6月に、平成21年度第1次補正予算により協会に対して交付金4784億3900万円を交付して、協会に支援基金(緊急人材育成支援事業)を設置造成させた。そして、基金事業の新規申請の受付の終了時期を、当初、23年度末と設定したが、「平成21年度第1次補正予算の執行の見直しについて」(平成21年10月閣議決定)により、新規申請の受付の終了時期を22年度末に繰り上げ、これに伴い協会から1903億9594万余円の返納を受けた。その後、厚生労働省は、23年度に恒久的な制度として求職者支援制度の創設を予定していたことから、それまでの間、基金事業の実施期間を延長することとして、支援基金(緊急人材育成支援事業)の積増しのために平成22年度補正予算により交付金990億0756万余円を交付し、新規申請の受付の終了時期を23年9月末に延長した。この結果、同月末時点で、新規申請の受付が終了して基金事業の対象が確定し、厚生労働省及び協会において、基金事業に係る後年度負担額を見込むことができる状況となっていた。

しかし、厚生労働省及び協会は、同月末時点で、直ちに国庫への返納等の基金基準に基づく支援基金(緊急人材育成支援事業)の取扱いの検討に着手しておらず、支援基金(緊急人材育成支援事業)の24年度末の保有額763億2832万余円から25年度以降の後年度負担額10億9183万余円を除いた額752億3648万余円(交付金相当額同額)は使用見込みのないまま協会に滞留している状況となっていた。

なお、前記の求職者支援制度の創設に関連して、22年12月に国家戦略担当大臣、財務大臣及び厚生労働大臣は、支援基金(緊急人材育成支援事業)の残額が生じた場合には、基金事業を実質的に恒久化するものである国直轄の求職者支援制度の財源として当該残額を活用することなどについて「平成23年度予算における求職者支援制度及び雇用保険国庫負担の本則復帰の取扱いについて」として合意し(以下、この合意を「3大臣合意」という。)、厚生労働省は、3大臣合意を受けて、支援基金(緊急人材育成支援事業)の残額が生じた場合の活用方策について検討を行うこととしていたが、24年度末においてもその結論を得るに至っていなかった。

以上のとおり、新規申請の受付が終了して基金事業の対象が確定し、後年度負担額を見込むことができるようになり、使用見込みのない額を国庫に返納できる状況となっていたにもかかわらず、基金基準に基づく支援基金(緊急人材育成支援事業)の取扱いの検討が行われず、使用見込みのない額が協会に滞留している状況が継続している事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、厚生労働省における3大臣合意に基づく支援基金(緊急人材育成支援事業)の残額に関する検討が結論を得るに至っていなかったという状況の中で、厚生労働省及び協会において、新規申請の受付を終了した基金については受付を終了した時点で基金法人が直ちに国庫への返納等の検討に着手することなどとしている基金基準についての認識が欠けていたこと、厚生労働省において、協会に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記について、厚生労働省は、支援基金(緊急人材育成支援事業)の残額の活用方策について早急に検討を進めるなどした上で、本院の指摘に基づき、25年12月に、協会に対して、支援基金(緊急人材育成支援事業)に係る使用見込みのない額752億3648万余円を国庫へ返納させる処置を講じ、同月に、協会から同額の返納を受けた。