厚生労働省は、雇用安定事業の一環として雇用調整助成金の支給を行っている。そして、事業主が故意に同助成金を不正に受給する事態(以下「不正受給」という。)に対処するために、都道府県労働局(以下「労働局」という。)及び管内の公共職業安定所(以下、これらを合わせて「労働局等」という。)は、休業又は教育訓練(以下「休業等」という。)の実施状況等を確認する事業所訪問調査を行うとともに、休業等の実施に疑義があるなどの場合は再度の事業所訪問調査等(以下「再調査」という。)を行っている。しかし、労働局等において、事業所訪問調査における関係書類の確認が十分でなかったり、再調査が必要であると判断していたのに行っていなかったりなどしていて、不正受給を把握できていない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働本省において、労働局に対して、事業所訪問調査の際に必ず確認すべき調査項目やその確認方法を明確に指示したり、これらを明確にした報告書の様式を労働局に例示して事業所訪問調査で活用させたり、事業所訪問調査及び再調査の実施状況について把握して取組が十分でない労働局に必要な指導を行ったりするとともに、労働局において、事業所訪問調査について、支給申請書に記載された内容の確認に必要となる出勤簿、賃金台帳等やそれらの裏付けとなる書類の確認を十分に行ったり、不正受給が疑われる場合には、再調査を行うか否かの判断を的確に行ったり、報告書の記載内容から再調査が必要であると判断した場合には、再調査を速やかに行ったりなどするよう、厚生労働大臣に対して平成25年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、26年3月に通知を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 厚生労働本省において、事業所訪問調査を行う際に確認すべき項目やその確認方法について明確にした雇用調整助成金チェックリスト(以下「チェックリスト」という。)及び報告書の様式を例示して労働局等が行う事業所訪問調査で活用させることとした。また、26年4月から、事業所訪問調査及び再調査の実施状況について労働局から定期的に報告を受けるなどして把握し、取組が十分でない労働局については、事由等を確認して必要な指導や助言を行うこととした。
イ 労働局において、前記の通知に基づき、チェックリストを活用することなどにより、出勤簿、賃金台帳等やそれらの裏付けとなる書類の確認を十分に行うこととし、不正受給が疑われる場合には再調査を行うか否かの判断を行ったり、報告書の記載内容から再調査が必要であると判断した場合には再調査を速やかに行ったりなどすることとした。