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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第10 農林水産省 |
  • 不当事項 |
  • 補助金 |
  • (1)工事の設計が適切でなかったなどのもの

木造建築物の設計及び施工が適切でなかったもの[農林水産本省、2農政局](257)―(259)


(3件 不当と認める国庫補助金 37,675,360円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(257) 農林水産本省 石川県 鹿島郡
中能登町
農山漁村活性化プロジェクト支援交付金 21 19,845 9,876 19,845 9,876
農事組合法人能登やまびこ
(事業主体)
(258) 北陸農政局 いしかわの農地活用連絡調整会 珠洲市農地活用対策協議会 耕作放棄地再生利用緊急対策交付金 22 14,310 7,155 14,310 7,155
有限会社みなくち
(事業主体)
(259) 近畿農政局 兵庫県 多可郡
多可町
経営体育成支援 25 43,785 20,850 43,352 20,644
農事組合法人エコファーム多田
(事業主体)
(257)―(259)の計 77,940 37,881 77,508 37,675

これらの補助事業等は、3事業主体が、柱、土台、筋交いなどの部材で骨組みを構成する木造軸組工法により木造施設(以下「木造建築物」という。)の建築等を実施したものである。

木造建築物は、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき、地震や風により生ずる水平力に抵抗するために、柱と柱との間に筋交いなどを設置した耐力壁を張り間方向(注)及び桁行方向(注)に配置し、設計計算上の耐力壁の長さが水平力に対して必要な長さをそれぞれ上回るなど設計計算上安全な構造のものでなければならないこととなっている。そして、耐力壁を構成する柱については、水平力により生ずる引抜き力に抵抗するために、同法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号)等に基づき、必要な引抜き耐力を有する金物等(以下「接合金物」という。)を選定して梁(はり)、土台、基礎コンクリート等と接合することとなっている(参考図参照)。

しかし、3事業主体において、設計計算上の耐力壁の長さが水平力に対して必要な長さを上回っているか確認せずに設計し、これにより施工したり、施工の際に、誤って、耐力が不足している接合金物により柱と土台等とを接合したり、基礎、土台及び柱を接合金物で接合するためのアンカーボルトの施工が著しく粗雑になっていたりなどしている事態が見受けられた。

このように、耐力壁の長さが設計計算上安全なものとなっているか確認していないこと並びに基礎及び土台との接合方法が適切でない柱で構成された壁は設計計算上耐力壁とは認められないことから、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、張り間方向及び桁行方向のそれぞれ又は一方において、水平力に対して必要な長さを下回っていて、木造建築物の所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金等相当額計37,675,360円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、3事業主体において木造建築物の設計についての理解が十分でなかったり、施工についての監督が十分でなかったりなどしていたこと、2町及び1協議会において3事業主体に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

農事組合法人エコファーム多田(以下「法人」という。)は、経営の規模拡大、複合化等を図るために、米穀の乾燥調整施設兼加工場、乾燥調整機等(以下、これらを合わせて「施設等」という。)の整備を行った。

法人は、本件乾燥調整施設兼加工場の基礎と土台の接合については、アンカーボルト80本を用いて固定することとし、そのうち5本は基礎及び土台と耐力壁を構成する柱とを接合金物を用いて接合することとしていた。

しかし、上記5本のアンカーボルトのうち3本については、設置位置が適切でなかったため、基礎、土台及び柱が適切に接合されていない状態となっていた。また、法人は、乾燥調整機の設置に当たり、排気ダクトを設置する際に2か所の耐力壁の筋交いなどを大きく欠損させていた。

このように、接合方法等が適切でない柱等で構成された壁は設計計算上耐力壁とは認められないことから、張り間方向及び桁行方向について、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを計算すると、張り間方向については67.34mとなり、水平力に対して必要な耐力壁の長さ77.85mを下回っていた。

したがって、本件施設等(工事費相当額計43,352,540円、国庫補助金相当額計20,644,066円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。

(注)
張り間方向・桁行方向  一般的に建物の短辺方向を張り間方向といい、長辺方向を桁行方向という。

(参考図)

木造建築物の概念図 画像 接合金物の概念図 画像