(1件 不当と認める国庫補助金 46,015,818円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(266) | 農林水産本省、関東農政局 | 静岡県 (事業主体) |
― | 農業競争力強化基盤整備等3事業 | 22~25 | 108,679 | 54,339 | 92,031 | 46,015 |
この補助事業等は、静岡県が、静岡市清水区の矢部2期地区及び新丹谷地区において、果樹を栽培している農地における強風による農作物への被害を防止することを目的として、防風ネットを延長計3,541.2m設置する工事を実施したものである。
この防風ネットは、高さ3.2mの鋼管製の支柱及び支柱を背面から支えるための控柱を設置して、化学繊維製のネットを装着するものであり、それぞれの支柱及び控柱はコンクリート基礎(縦0.4m、横0.4m、高さ0.8m)に固定されている。
本件防風ネットの設計は、「土地改良事業計画指針「防風施設」」(農林水産省構造改善局計画部監修)等に基づいて行われている。これらによれば、控柱を設置する場合は、防風ネットに加わる風圧により控柱が設置された支柱にコンクリート基礎を持ち上げようとする上向きの鉛直力(以下、支柱1本当たりの鉛直力を「上向き鉛直力」という。)が生ずることから、コンクリート基礎の自重による下向きの鉛直力(以下、コンクリート基礎1個当たりの鉛直力を「下向き鉛直力」という。)がこれよりも大きければ安全とされている。
同県は、本件防風ネットの設計に当たり、平成21年度に新丹谷土地改良区が上記の指針等を基に行った同種工事の構造計算の結果を参考にして、全ての支柱に対して控柱を設置すれば、上向き鉛直力は2.94kNとなり、下向き鉛直力2.95kNを下回ることから構造計算上安全であるとしていた。
しかし、上記同種工事の際に作成された設計図面(以下、この設計図面を「既存図面」という。)においては、全ての支柱に設置することとしていた控柱を支柱2本につき1本設置(6.0m間隔)することとなっていたのに、同県は、改めて既存図面に基づくなどした構造計算等の照査を行うことなく、既存図面をそのまま用いた設計図面を作成して、控柱を支柱2本につき1本設置することとして工事を発注し、これにより施工していた(参考図参照)。
そこで、実際の施工状況に基づくなどして改めて構造計算を行ったところ、上向き鉛直力は4.57kN又は5.11kNとなり、いずれも下向き鉛直力2.95kNを大幅に上回っていて、構造計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件防風ネット(工事費相当額計92,031,637円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金等相当額計46,015,818円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、防風ネットの設計に当たり、参考とした同種工事の構造計算等の照査及び構造計算を適切に行うことについての必要性に対する認識が欠けていたことなどによると認められる。
防風ネットの概念図(実際の施工)