(1件 不当と認める国庫補助金 12,876,970円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(267) | 関東農政局 | 山梨県耕作放棄地対策協議会 | 山梨市地域耕作放棄地対策協議会 | 耕作放棄地再生利用緊急対策交付金 | 21、22 | 28,081 | 12,876 | 27,041 | 12,876 |
有限会社山梨フルーツライン (事業主体) |
この交付金事業は、有限会社山梨フルーツライン(以下「会社」という。)が、山梨市において、再生農地等で収穫した農産物の処理、加工等を行うことを目的として、鉄骨造の倉庫兼作業場(以下「本件施設」という。)の建築等を実施したものである。
会社は、当初、本件施設については構造計算が不要であるとして、これを行わずに工事を開始していたが、基礎工事が完了した時点で構造計算が必要であることを認識し、工事を中断して設計業者に構造計算等を行わせた上で工事を再開していた。
本件施設は、地震や風により生ずる水平力が作用すると、5本の出隅の柱(注1)の柱脚に基礎を持ち上げようとする引抜き力が生ずることから、これに抵抗するために、各出隅の柱の柱脚に独立基礎が設けられている。そして、設計業者は、この独立基礎の重量等による引抜き力に抵抗する力(以下「引抜き抵抗力」という。)が引抜き力を上回れば、構造計算上安全であるとして設計していた(参考図参照)。しかし、上記の設計に当たり、施工業者から報告された独立基礎の寸法が誤っていたため、既に施工されていた独立基礎等の実際の重量による引抜き抵抗力は19.14kNであったにもかかわらず、設計業者は、これを38kNであるとして構造計算を行っていた。また、出隅の柱とブレース(注2)等で構成される耐力壁1か所の施工に当たり、その長さを2,200㎜とすべきところ、施工業者が誤って1,755㎜としていた。
そこで、実際の施工状況に基づき改めて構造計算を行ったところ、5本の出隅の柱のうち、1本の柱の柱脚において、引抜き力が81.55kN、また、別の2本の柱の柱脚において、引抜き力が81.64kNとなり、それぞれの引抜き抵抗力66.9kN、77.57kNを上回っていて、これら3本の出隅の柱の独立基礎が引抜き力に抵抗できない状況となっていた。
したがって、本件施設(工事費相当額27,041,637円)は、設計及び施工が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額12,876,970円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、会社において設計業者から設計図書等を受領する際の確認が十分でなかったこと、山梨県耕作放棄地対策協議会及び山梨市地域耕作放棄地対策協議会において本件交付金事業に係る審査及び確認並びに会社に対する指導が十分でなかったこと、関東農政局において山梨県耕作放棄地対策協議会に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
耐力壁と出隅の柱の概念図