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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第10 農林水産省 |
  • 不当事項 |
  • 補助金 |
  • (1)工事の設計が適切でなかったなどのもの

ボックスカルバートの設計が適切でなかったもの[農林水産本省](268)


(1件 不当と認める国庫補助金 10,219,733円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(268) 農林水産本省 埼玉県
(事業主体)
地域自主戦略交付金 23、24 94,458 47,229 20,439 10,219

この交付金事業は、埼玉県が、久喜市稲荷木落地区において、農地におけるたん水被害を防止することなどを目的として排水路を改修するなどの工事を実施したものである。そして、排水路が既設の市道と交差する箇所には、現場打ち鉄筋コンクリート構造のボックスカルバート(延長6.1m、幅12.3m、高さ4.6m)を築造し、この上部にアスファルト舗装(厚さ5㎝)を施工したものである(参考図参照)。

同県は、本件ボックスカルバートについては、その頂版に輪荷重が直接載荷することとして設計し、頂版下面側に径19㎜の鉄筋を25㎝間隔で配置すれば、主鉄筋に生ずる引張応力度(注)166.54N/mm2が、「道路土工 カルバート工指針」(社団法人日本道路協会編)に定められている鉄筋の許容引張応力度(注)の180N/mm2を下回ることから、応力計算上安全であるとして、これにより施工していた。

しかし、本件ボックスカルバートの設計は、次のとおり適切でなかった。
同県は、土地改良施設である排水路の設計を「土地改良事業計画設計基準・設計「水路工」」(農林水産省農村振興局制定)に基づいて行っている。これによれば、頂版に輪荷重が直接載荷する場合の鉄筋の許容引張応力度である137N/mm2を用いて設計すべきであったのに、誤って、前記の180N/mm2を用いて設計していた。

そこで、本件ボックスカルバートの頂版について、許容引張応力度を137N/mm2として改めて応力計算を行ったところ、頂版下面側の主鉄筋に生ずる引張応力度は166.54N/mm2となり、許容引張応力度の137N/mm2を大幅に上回っていて、応力計算上安全であるとされる範囲に収まっていなかった。

したがって、本件ボックスカルバート等(工事費相当額20,439,466円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額10,219,733円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
引張応力度・許容引張応力度  「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいい、その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。

(参考図)

ボックスカルバート概念図

ボックスカルバート概念図 画像

ボックスカルバートの主鉄筋の配置概念図

ボックスカルバートの主鉄筋の配置概念図 画像