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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第10 農林水産省 |
  • 不当事項 |
  • 補助金 |
  • (1)工事の設計が適切でなかったなどのもの

沈砂池に設置されている排水ボックスの設計が適切でなかったもの[農林水産本省、九州農政局](270)


(1件 不当と認める国庫補助金 2,660,975円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(270) 農林水産本省、九州農政局 長崎県
(事業主体)
農業体質強化基盤整備促進事業等2事業 24 81,753 44,964 4,838 2,660

この補助事業等は、長崎県が、島原市宇土山地区において、機械の効率的運用や農作物の品質、収量等の向上を図るために、区画整理工、沈砂池工、排水路工等を施工したものである。このうち沈砂池工は、下流域への土砂の流出を防止するなどのために、降雨時等にほ場から流出した土砂を堆積させる沈砂池を築造するもので、下流域につながる吐出部に沈砂池からの土砂の流出を防止して排水するための排水ボックス(無筋コンクリート造。幅1.8m、長さ2.0m、高さ1.8m)を設置したものである(参考図参照)。

沈砂池の設計は、「土地改良事業標準設計農地造成(解説書)」(農林水産省構造改善局監修)等に基づいて行うこととなっており、これらによれば、沈砂池の容量はほ場の土砂の流失量を算定するなどして決定するとされている。そして、同県は、本件沈砂池内の排水ボックスの設計に当たり、沈砂池内に堆積する土砂の高さなどから側壁の高さを決定し、また、排水ボックスの構造については、上記の解説書等に標準的な設計方法等の記載がなかったことから、排水路の集水ますと同様の小規模構造物であるとして、同県が標準としている無筋コンクリート造とすることとし、応力計算を行わず、これにより施工していた。

しかし、本件排水ボックスについては、沈砂池内の土砂等が排水ボックスの側壁天端まで堆積することになっていて、側壁に対して土圧がかかることから、この土圧を考慮して応力計算を行う必要があった。

そこで、土圧を考慮して応力計算を行ったところ、側壁に生ずる曲げ引張応力度(注)は0.38N/mm2となり、無筋コンクリートの許容曲げ引張応力度(注)0.29N/mm2を大幅に上回っていて、応力計算上安全であるとされる範囲に収まっていなかった。

したがって、本件沈砂池に設置されている排水ボックスは、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、排水ボックスが損壊すれば土砂が下流域へ流出し、沈砂池はその機能を発揮できなくなるおそれがあることから、本件沈砂池工(工事費相当額4,838,136円)は工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金等相当額計2,660,975円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、沈砂池内の排水ボックスの設計に対する理解が十分でなく、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
曲げ引張応力度・許容曲げ引張応力度  「曲げ引張応力度」とは、材の外から曲げようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力のうち引張側に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいい、その数値が設計上許される上限を「許容曲げ引張応力度」という。

(参考図)

沈砂池の概念図

(1)平面図

平面図 画像

(2)断面図

断面図 画像