(1件 不当と認める国庫補助金 5,828,702円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(296) | 近畿農政局 | 大阪府 | 富田林市 (事業主体) |
農業用施設災害復旧 | 24 | 30,396 | 15,765 | 8,967 | 5,828 |
この補助事業は、富田林市が、同市大字佐備地内において、豪雨で発生した地すべりにより被災した農道のコンクリートブロック積擁壁の機能回復を図るための工事を実施したものであり、地すべりを直接抑止するために鋼管杭を建て込み、杭と杭との間の土砂の崩壊を防止するための無筋コンクリートの擁壁(高さ1.2m~3.8m、底版幅0.6m~1.8m、天端幅0.3m~0.7m、延長47.8m)を築造するなどしたものである(参考図参照)。
同市は、上記の擁壁について、設計図書等に基づき、次のように施工することとしていた。
〔1〕 鋼管杭を建て込んだ後、擁壁を築造するためにその箇所の土砂を掘削し、鋼管杭の前面側に型枠を設置する。
〔2〕 規格品である伸縮目地(縦1.0m、横1.0m、厚さ1.0㎝)を、擁壁の断面の形に合うように切断するなどして組み合わせ、設計図書に示された位置(10m間隔で全部で4か所)の擁壁断面(高さ3.8m、底版幅1.8m、天端幅0.7m)の全面に設置する。
〔3〕 設置した伸縮目地にずれが生じないよう、鉄筋等で固定した後、コンクリートを打設する。
上記の伸縮目地は、「道路土工 擁壁工指針」(社団法人日本道路協会編)によれば、セメントの水和熱(注)、コンクリートの乾燥収縮等により発生するひび割れを防ぐために設置することとされているものである。
しかし、現地の状況を確認したところ、擁壁の前面側において設計図書に示された位置に伸縮目地を確認できたものの、擁壁の天端から底版にかけて、6本のひび割れ(最大幅0.8㎜)が生じていた。
そこで、ひび割れの深さについて調査したところ、ひび割れは擁壁の背面や鋼管杭の前面まで貫通するなどしていた。そして、伸縮目地を設置している4か所全てを削孔(削孔長1.7m~1.8m)してその設置状況について調査したところ、擁壁の前面側から最長で0.5m程度、最短で0.15mまでの深さの範囲でしか伸縮目地を確認することができず、いずれの箇所においても設計図書のとおりに施工されていなかった。
したがって、本件擁壁は、施工が著しく適切でなかったため、擁壁の背面まで貫通したひび割れが生じているなどしていて、工事の目的を達しておらず、擁壁等(工事費相当額8,967,235円)に係る国庫補助金相当額5,828,702円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において請負人が粗雑な施工を行っていたのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったこと、大阪府において同市に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
擁壁の断面図
擁壁の正面図