農林水産省の外局、施設等機関、地方支分部局、その管内の事務所等(以下、これらを合わせて「地方機関」という。)は、職員等の退庁後の夜間、休日等に無人となった庁舎等で、不審者等の侵入、火災の発生等の異常事態に対応し庁舎等の安全を図るために、庁舎等に警報装置を設置するなどの機械警備業務を警備会社に請け負わせて実施している。
他省庁の機関と同一の庁舎に入居している地方機関は単独で機械警備業務の契約を締結することができないが、これ以外の地方機関(以下「単独地方機関」という。)は、機械警備業務の契約を単独で締結しており、契約等担当職員が年度当初に仕様に沿った見積りを警備会社に依頼し、その結果を踏まえて予定価格を作成して契約を締結している。
国が売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、会計法(昭和22年法律第35号)等によれば、原則として、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならないなどとされている。ただし、工事又は製造の請負、財産の売買及び物件の貸借以外の契約でその予定価格が100万円を超えないものをするときなどの場合は随意契約によることができるとされている(以下、予定価格が少額であることを理由とした随意契約を「少額随契」という。)。
農林水産省は、行政効率化関係省庁連絡会議が平成16年6月に取りまとめた行政効率化推進計画の一環として、同月から農林水産省行政効率化推進計画を策定している。そして、今後の取組計画の一つとして、事務の省力化、契約の公正性の確保及び費用の削減を図る観点から、庁舎の維持及び管理に係る役務契約において、複数の随意契約を一括して契約することにより、一般競争契約の導入及び拡大を推進することとして行政効率化に取り組んでいる。
また、農林水産省は、23年4月に行政刷新会議公共サービス改革分科会において取りまとめられた公共サービス改革プログラム等に基づき、公共調達の競争性及び透明性を確保するために、毎年度、農林水産省調達改善計画を策定して、共同調達による物品及び役務の調達の拡大並びに推進、国庫債務負担行為による複数年度契約の活用を図るなどの公共調達の改善に取り組んでいる。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、経済性等の観点から、機械警備業務に係る契約事務が会計法等に基づき適正に処理されているか、契約の公正性、競争性及び透明性が確保されているかなどに着眼して、140地方機関が24、25両年度に締結した機械警備業務の契約計425件、支払額計1億3739万余円を対象として、農林水産本省、8地方機関において、仕様書、契約書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、当該8地方機関を除く132地方機関の契約の状況を聴取するなどして検査した。
(検査の結果)
検査したところ、115単独地方機関が24、25両年度に警備会社と締結した機械警備業務の契約計289件(支払額計1億1243万余円)において、次のような事態が見受けられた。
機械警備業務の契約の状況についてみたところ、95単独地方機関が締結した222件(支払額計6895万余円)は、予定価格が23,625円から997,500円までであることから、少額随契により契約が締結されていた。
そこで、単独地方機関で契約を締結している機械警備業務の内容について、仕様書により確認したところ、おおむね防犯監視、火災監視等であって単独地方機関ごとの差異はなく、また、年度間の業務の内容にも差異がない状況となっていたことから、都道府県単位等に集約して一括して契約することが可能であると認められた。
また、国庫債務負担行為の活用状況についてみたところ、前記の契約計289件(支払額1億1243万余円)において、国庫債務負担行為を活用した複数年度契約を実施していなかった。
国庫債務負担行為を活用していない単独地方機関は、その理由について、地方機関の統廃合や庁舎の増改築等が行われた場合には警備機器の設置数が変わることから対応が困難であるためなどとしていた。
しかし、地方機関の統廃合や庁舎の増改築等について中長期的な検討を行うことなどにより、国庫債務負担行為を活用することは可能であると認められ、現に、農林水産省の動物医薬品検査所は21年4月から国庫債務負担行為を活用して機械警備業務に係る複数年度契約を実施しており、また、他府省も既に国庫債務負担行為を活用して機械警備業務に係る複数年度契約を実施していた。
このように、機械警備業務について、単独地方機関が、都道府県単位等に集約して一括して契約したり、国庫債務負担行為を活用したりすることなどにより調達の規模の拡大を図って一般競争契約を実施することなく、単独地方機関ごと、年度ごとに随意契約を締結するなどしている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、26年8月に地方機関に対して通知を発して、機械警備業務について、単独地方機関ごとに締結している契約を可能な限り都道府県単位等に集約して一括して契約したり、国庫債務負担行為を活用して複数年度契約を実施したりすることなどにより、現状の少額随契から一般競争契約への移行を推進するよう周知徹底するなどの処置を講じた。