経済産業本省(以下「本省」という。)は、平成24年度に、キッズデザイン製品開発支援事業(キッズデザイン共通基盤整備等)を独立行政法人産業技術総合研究所(以下「研究所」という。)に委託して実施し、委託費95,010,022円を支払っている。
本件委託事業は、子供の事故予防に配慮された設計及びデザイン(以下「キッズデザイン」という。)による製品の市場の拡大を目指すことを目的として、子供の事故予防に関する研究分析を行うために必要となる基礎データ等の整備、事故情報等の収集及びデータベースの拡充、キッズデザインの普及活動等を実施したものである。
委託契約書によれば、本省は、委託事業が完了して研究所から実績報告書の提出を受けたときは、その内容を審査し、必要に応じて現地調査を行い、委託事業の実施に要した経費(以下「委託対象経費」という。)の証ひょう、帳簿等の調査により支払うべき金額を確定して、精算払により支払うことなどとされている。
また、経済産業省が作成して委託先にも周知している委託事業事務処理マニュアルによれば、委託対象経費は、委託契約締結日以降に発生したものであり、委託契約締結以前に発注したもの、既に自主事業等のために借上げなどを行っているものについては委託対象経費として計上することはできないなどとされている。
本院は、合規性等の観点から、委託対象経費は適切に計上されているかなどに着眼して、本件委託契約を対象として、本省及び研究所において、実績報告書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、研究所は、子供の行動観察を行い事故予防に寄与する製品の設計指針等を策定するために、賃貸マンションの一室を人間行動観察用実験ハウスとして24年10月から25年3月まで賃借し、その借上費用等2,779,932円を本件委託事業に要したとして委託対象経費に計上していた。
しかし、研究所は、本件委託事業以外の自主事業等に用いるために、上記賃貸マンションの一室を本省との委託契約締結以前に借り上げていた。
したがって、前記賃貸マンションの一室の借上費用等は本件委託事業に要した経費とは認められず、これらを委託対象経費に計上しないこととして適正な委託費を算定すると91,952,097円となり、前記の委託費支払額95,010,022円との差額3,057,925円が過大に支払われていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、研究所において委託対象経費として計上する経費についての理解が十分でなかったこと、本省において実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。