ページトップ
  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果|第1節 省庁別の検査結果|第12 国土交通省|不当事項|補助金|(3)工事の設計が適切でなかったもの

橋台の胸壁の設計が適切でなかったもの[大分県](356)


(1件 不当と認める国庫補助金 91,269,100円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(356) 大分県 大分県 活力創出基盤整備総合交付金、社会資本整備総合交付金 22~25 390,318
(362,347)
235,525 140,414
(140,414)
91,269

この交付金事業は、大分県が、主要地方道三重弥生線道路改良事業の一環として、佐伯市本匠大字堂ノ間地内において、バイパス整備に伴い橋りょう(橋長78.0m、幅員9.5m~10.0m)を新設するために、下部工として橋台2基(以下、右岸側の橋台を「A1橋台」、左岸側の橋台を「A2橋台」という。)の築造等、上部工として2径間鋼連続非合成鈑桁(ばんげた)(以下「鋼桁」という。)の製作、架設等を実施したものである(参考図参照)。

この橋りょうについては、地震発生時における鋼桁の落下を防止するために、橋台の胸壁と鋼桁をPC鋼材で連結する落橋防止構造をA1橋台及びA2橋台の胸壁にそれぞれ4か所、計8か所に設置していた。

同県は、本件橋台の胸壁の設計に当たり、地震発生時に、落橋防止構造を通じて橋台の胸壁に作用する水平力をA1橋台は1,160kN、A2橋台は1,590kNとし、この水平力により橋台の胸壁に作用する曲げモーメント(注)が胸壁の終局曲げモーメント(注)をそれぞれ下回ることから応力計算上安全であるとして、これにより施工していた。

しかし、上記の水平力は、落橋防止構造1か所を通じて橋台の胸壁に作用する水平力(A1橋台580kN、A2橋台795kN)に2を乗じたものであったが、それぞれの橋台に落橋防止構造を4か所設置していることから、4を乗じて算出すべきであった。

そこで、橋台の胸壁に作用する適正な水平力を算出すると、A1橋台で2,320kN、A2橋台で3,180kNとなる。そして、これに基づき改めて応力計算を行うと、橋台の胸壁に作用する曲げモーメントはA1橋台で297.3kN・m、A2橋台で389.9kN・mとなり、胸壁の終局曲げモーメントであるA1橋台の231.1kN・m、A2橋台の232.7kN・mをそれぞれ大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、本件胸壁は設計が適切でなかったため、同胸壁及びこれと落橋防止構造で連結されている鋼桁等(これらの工事費相当額140,414,000円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額91,269,100円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
曲げモーメント・終局曲げモーメント  「曲げモーメント」とは、外力が部材に作用し、これを曲げようとする力の大きさをいい、部材が破壊されるときの曲げモーメントを「終局曲げモーメント」という。

(参考図)

橋りょう概念図

橋りょう概念図 画像