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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第12 国土交通省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2)下水道事業における終末処理場等の設計に当たり、基礎杭とく体の底版との結合部について地震時における所要の安全度が確保されたものとなるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)国土交通本省 (項)社会資本総合整備事業費 等
部局等
14都道府県
補助の根拠
下水道法(昭和33年法律第79号)
補助事業者
(事業主体)
都、府1、県4、市18、町1、計25事業主体
終末処理場等の基礎杭の設計の概要
下水道事業における終末処理場等の土木構造物の基礎杭とく体の底版との結合部について、常時及び地震時における所要の安全度を確保するよう設計するもの
基礎杭について所要の安全度が確保されていない終末処理場等の施設数及び工事費
48施設 事業費191億1024万円(平成24、25両年度にしゅん功したもの)
上記の終末処理場等の結合部及びその上部く体等に係る直接工事費
54億5700万円
上記に対する国庫補助金等相当額
32億0815万円

1 設計の概要

(1)下水道事業における終末処理場等の設計の概要

国土交通省は、下水道法(昭和33年法律第79号)等に基づき、都道府県、市町村等(以下「事業主体」という。)が実施する下水道事業に対して、多額の国庫補助金等を交付している。

事業主体は、下水道事業における終末処理場、ポンプ施設、これらに付属する工作物等(以下「終末処理場等」という。)の建設に当たって、国土交通省が発出した「下水道施設の耐震対策について」(平成10年都市局下水道部公共下水道課建設専門官、流域下水道課建設専門官事務連絡)に基づき、「下水道施設の耐震対策指針と解説」(社団法人日本下水道協会編。以下「耐震対策指針」という。)を参照するなどして、所要の耐震化を図ることとなっている。

そして、耐震対策指針等によれば、終末処理場等の設計に当たっては、耐震対策指針のほか、「杭基礎設計便覧」(社団法人日本道路協会編。以下「杭基礎便覧」という。)等の設計基準に基づき適切に行うこととされている。

(2)基礎杭の設計

杭基礎便覧によれば、終末処理場等の土木構造物の基礎杭とく体の底版との結合方法は、く体の底版に基礎杭を一定の長さだけ埋め込み、埋め込んだ基礎杭により外力に抵抗させる方法又はく体の底版に基礎杭を埋め込む長さを最小限(10㎝)にとどめ、主として鉄筋で補強した杭頭部(以下、杭頭部を補強する鉄筋を「杭頭補強鉄筋」という。)により外力に抵抗させる方法(以下「杭頭補強方法」という。)のいずれかによることとされている。

また、杭基礎便覧においては、基礎杭として外殻鋼管付きコンクリート杭(以下「SC杭」という。)又は鋼管杭を用いる場合の基礎杭とく体の底版との結合部(以下「結合部」という。)の杭頭補強方法については、参考図のように、〔1〕 杭頭補強鉄筋として杭頭部の外周に杭外周溶接鉄筋を配置する方法、〔2〕 杭頭補強鉄筋として杭頭内部に中詰め補強鉄筋を配置する方法が示されている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、事業主体が国庫補助金等の交付を受けて実施した終末処理場等の建設工事のうち、基礎杭としてSC杭又は鋼管杭を用いた工事について、杭基礎便覧等の設計基準に基づく設計が行われているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、35事業主体(注1)において、平成24、25両年度にしゅん功した計74施設(工事費計255億5509万余円、国庫補助金等交付額計130億5065万余円)を対象として、設計計算書、契約関係書類等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(注1)
35事業主体  東京都、大阪府、埼玉、福井、愛知、広島、沖縄各県、札幌、函館、岩見沢、北広島、蕨、戸田、千葉、船橋、我孫子、袖ケ浦、川崎、射水、福井、名古屋、大阪、神戸、明石、益田、呉、福山、高松、東かがわ、松山、北九州、長崎、熊本、天草各市、小豆郡小豆島町

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

杭基礎便覧は、19年1月に改訂されており(以下、改訂された杭基礎便覧を「19年改訂の杭基礎便覧」という。)、常時及びレベル1地震動(注2)時に杭頭部を含む底版内部の所定の断面においてコンクリート及び鉄筋に生ずる応力度(注3)が許容応力度(注3)以下であることを確認する安全度の照査(以下「安全度の照査」という。)に当たって、考慮すべき杭頭補強鉄筋は中詰め補強鉄筋だけとされ、杭外周溶接鉄筋については、く体の底版に10㎝しか埋め込まない杭頭部への溶接であるなど著しく施工性が劣ることから、想定した品質が確保されない可能性があるとして、考慮しないこととされていた。

(注2)
レベル1地震動  終末処理場等の供用期間中に発生する確率が高い地震動をいう。
(注3)
応力度・許容応力度  「応力度」とは、材に外力がかかったときに材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容応力度」という。

前記の35事業主体は、耐震対策指針等に基づき、結合部の安全度の照査を行っていたが、公益社団法人日本下水道協会(23年3月31日以前は社団法人日本下水道協会。以下「協会」という。)は、耐震対策指針等に19年改訂の杭基礎便覧の内容を反映させていなかった。

そして、前記の35事業主体の74施設のうち、杭頭補強方法として杭外周溶接鉄筋を採用していた25事業主体(注4)の48施設においては、19年改訂の杭基礎便覧により結合部の安全度の照査に当たり考慮しないこととされた杭外周溶接鉄筋のみを杭頭補強鉄筋として配置したり、中詰め補強鉄筋だけでは不足する鉄筋量に対して杭外周溶接鉄筋を併用したりして杭頭補強鉄筋の設計を行い、施工していた。

このため、上記の48施設(結合部及びその上部く体等に係る直接工事費計54億5700万余円、国庫補助金等相当額計32億0815万余円)について、19年改訂の杭基礎便覧に基づき、杭外周溶接鉄筋を考慮せずに改めて結合部の安全度の照査を行うと、48施設全てについてレベル1地震動時における所要の安全度が確保されていない状態になっていた。

このように、終末処理場等の建設工事について、19年改訂の杭基礎便覧の内容が反映されていない耐震対策指針等に基づき結合部の設計を行っていたため、地震時における所要の安全度が確保されていない事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(注4)
25事業主体  東京都、大阪府、埼玉、愛知、広島、沖縄各県、函館、岩見沢、北広島、千葉、船橋、袖ケ浦、名古屋、大阪、神戸、益田、呉、福山、高松、東かがわ、松山、北九州、熊本、天草各市、小豆郡小豆島町

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、協会において19年改訂の杭基礎便覧を反映して耐震対策指針等を改訂していなかったことにもよるが、国土交通省において、事業主体に対して、耐震対策指針等のほか杭基礎便覧等の設計基準に基づき適切に設計することを十分周知していなかったこと、事業主体において、19年改訂の杭基礎便覧に基づいて結合部の安全度の照査を行うことを十分理解していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、26年5月に、事業主体に対して事務連絡を発して、同月に、19年改訂の杭基礎便覧の内容を反映させた耐震対策指針の改訂が行われたこと、及び杭基礎便覧等の設計基準が改訂された際には、協会において、その内容を検討して、耐震対策指針における取扱いを適時適切に事業主体に示すこととなったことを周知する処置を講じた。

また、国土交通省は、26年8月に、全国の事業主体に対して事務連絡を発して、改訂前の耐震対策指針等に基づき設計した施設に対する対策等を周知するなどの処置を講じた。

(参考図)

杭頭補強方法の概念図

杭頭補強方法の概念図 画像