国土交通省は、地震による橋脚の倒壊や橋桁の落下等の被害を未然に防止するために、国が行う直轄事業又は地方公共団体が行う国庫補助事業等により、既設橋りょうの耐震補強工事を多数実施している。しかし、既設橋りょうの耐震補強工事の設計に当たり、橋脚の基礎部分への影響を照査するなどして検討した上で橋りょう全体として耐震性能を確保できる工法を選定していなかったり、橋りょうの耐震性能が確保されないおそれがある場合に橋脚の基礎部分の耐震補強の要否等について更に詳細に検討していなかったりしていて、橋りょう全体としての耐震性能が確保されているかどうか明確となっていない事態が見受けられた。
したがって、国土交通省において、耐震性能が確保されているかどうか明確となっていない橋りょうについて更なる耐震補強の要否等の検討が今後適切に行われるよう、橋りょう全体としての耐震性能を確認するなどするとともに、今後の既設橋りょうの耐震補強工事の設計が適切に行われるよう、橋脚の基礎部分への影響を照査するなどして検討した上で橋りょう全体として耐震性能を確保できる工法を選定したり、橋りょうの耐震性能が確保されないおそれがある場合には、橋脚の基礎部分の耐震補強の要否等について更に詳細に検討したりするなどの耐震補強設計の考え方を国道事務所等に周知徹底し、この考え方を地方公共団体に対しても助言するよう、国土交通大臣に対して平成25年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、25年12月から国土技術政策総合研究所及び独立行政法人土木研究所と既設橋りょうの耐震補強工事の設計の考え方について検討を始めており、その検討結果を踏まえて、耐震性能が確保されているかどうか明確となっていない橋りょうについて橋りょう全体としての耐震性能を確認するとともに、既設橋りょうの橋りょう全体としての耐震補強設計の考え方を国道事務所等に周知徹底し、この考え方を地方公共団体に対しても助言することとしている。