環境本省(以下「本省」という。)は、平成20年度から24年度までの間に、CDM(クリーン開発メカニズム)やJI(共同実施)に係る事業の計画や実施において必要となる情報の収集や民間事業者への情報提供等を目的として、一般社団法人海外環境協力センター(24年3月31日以前は社団法人海外環境協力センター。以下「センター」という。)との間で平成20年度CDM/JI事業調査(京都メカニズム相談支援事業)委託業務等17件の契約を締結して委託業務を実施させており、委託費として計1,360,765,533円を支払っている。
本省は、当該委託契約書等に基づき、委託業務が終了し、センターから委託業務完了報告書の提出を受けたときは、完了した委託業務が委託契約の内容に適合したものであるかどうかを検査し、委託業務の完了を確認することとなっている。そして、委託業務の内容が委託契約に適合すると認めたときは、センターから提出された委託業務精算報告書(以下「精算報告書」という。)の内容を審査し、その結果、精算報告書の内容が適正と認めたときは、精算報告書に計上された委託業務に要した経費の支出済額と委託契約で定めた委託費の金額(以下「契約金額」という。)とのいずれか低い額を委託費の額として確定し、センターに支払うこととなっている。
なお、センターは、委託業務の実施に要した経費のうち主たるものである人件費については、委託業務に従事した者(以下「従事者」という。)ごとにセンター内での職位等を勘案した受託単価を設定し、これに、従事者が委託業務に従事したとする日数を乗じて算出した額を精算報告書に計上している。
本院は、合規性等の観点から、委託業務の実施に要した経費は適正に精算されているかなどに着眼して、前記の委託契約17件(委託費支払額計1,360,765,533円)を対象として、本省及びセンターにおいて、委託契約書、精算報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、センターが20、21、23、24各年度に本省から委託を受けて実施した委託契約12件(委託費支払額計1,134,344,500円)において、次のとおり、適正とは認められない事態が見受けられた。
そして、センターでは従事者の委託業務への従事状況を記録しておらず、過去の委託業務に従事した日数を正確に把握することはできないことから、上記のように算出して精算報告書に計上していた人件費の額を同一年度に行われた複数の委託業務について合計すると、その合計額が、センターから当該年度に各従事者に対して実際に支給されていた給与等の総額(委託業務に従事していないことが明らかである有給休暇を取得した分に相当する額等を除く。)を超えていた(23、24両年度の委託契約8件)。
以上のことなどから、前記の委託契約12件に係る人件費等の額は、センターが従事者に対して実際に支給した給与の額等に基づいて算出されたものとはなっておらず、本省は、このような実際に支出された額と異なる内容の精算報告書に基づくなどして委託費を支払っていた。
したがって、センターが従事者に対して実際に支給した給与の額等に基づき人件費を算出するなどして委託費の額を修正すると、計1,033,022,366円となり、前記の委託費支払額(1,134,344,500円)との差額計101,322,134円が過大となっていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、センターにおいて委託契約の適正な精算についての基本的な認識が欠けていたこと、また、本省においてセンターに対する指導が十分でなかったこと、精算報告書の内容の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。