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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果|第1節 省庁別の検査結果|第14 防衛省|不当事項|予算経理

単身赴任手当に係る支給事務において、事実の確認が十分でなかったなどのため、長期間にわたって支給の要件を具備していない者に対して手当を支給していた結果、認定を取り消した後も一部が国庫に返納されておらず、不当と認められるもの[航空幕僚監部、航空自衛隊中部航空警戒管制団、航空自衛隊第2 補給処、技術研究本部](377)―(380)


所管、会計名及び科目
防衛省所管 一般会計 (組織)防衛本省 (項)自衛官給与費
(平成19年度は、(項)防衛本省
18年度は、(項)防衛本庁
12年度から17年度までは、
内閣府所管 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)防衛本庁
11年度以前は、
総理府所管 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)防衛本庁)
部局等
航空幕僚監部、航空自衛隊中部航空警戒管制団、航空自衛隊第2補給処、技術研究本部
単身赴任手当の概要
官署を異にする異動等に伴って住居を移転し、やむを得ない事情により同居していた配偶者と別居して単身で生活することとなった職員に支給される手当
支給期間
平成10年8月~26年2月
支給額
6,353,000円(平成10年度~25年度)
上記のうち国庫に返納されていなかった額
4,259,000円(平成10年度~20年度)

1 単身赴任手当の概要

防衛省は、防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)に基づき、職員に対して単身赴任手当(以下「手当」という。)を支給することとしており、その支給に当たっては、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。以下「一般職給与法」という。)の規定を準用することとしている。そして、一般職給与法によれば、手当が支給される要件(以下「支給要件」という。)は、官署を異にする異動等に伴い、住居を移転し、父母の疾病等人事院規則で定めるやむを得ない事情により、同居していた配偶者と別居することとなったことなどとされている。

人事院規則9―89(単身赴任手当)によれば、新たに支給要件を具備するに至った職員は、単身赴任届に、配偶者との別居の状況等を証明する書類を添付して速やかに各庁の長(その委任を受けた者を含む。以下同じ。)に届け出なければならないとされている。また、各庁の長は、職員から届出を受けたときは、その届出に係る事実を確認して、その者に支給すべき手当の月額を決定等し(以下、これらの手続を「認定」という。)、その決定等に係る事項を単身赴任手当認定簿(以下「認定簿」という。)に記載するものとされている。

さらに、各庁の長は、手当の支給を受けている職員が支給要件を具備しているかどうかなどを随時確認することとされている(以下、この確認を「事後の確認」という。)。

そして、手当を受けている職員が各庁の長を異にして異動した場合には、異動前の各庁の長は当該職員に係る認定簿を当該職員から既に提出された単身赴任届及び証明書類と共に異動後の各庁の長に送付することとなっている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、手当の認定及び事後の確認が適切に行われているかなどに着眼して、航空自衛隊、情報本部及び技術研究本部において、認定簿、単身赴任届等の関係書類の提出を受け、これを確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

職員Aは、配偶者と婚姻後も同居することなく、別居を継続していた。そして、勤務する入間基地が埼玉県狭山市に所在しているにもかかわらず、本人の住民票を狭山市から配偶者の居住する愛知県B市に移転させた上で、その2か月後に狭山市に住民票を再度移転させていた。その後、職員Aは、平成10年7月に、異動の発令日を9年2月などと記載した単身赴任届を、住民票とともに、入間基地の俸給支給機関(注)である航空自衛隊中部航空警戒管制団に提出していた。

(注)
俸給支給機関  防衛省において、職員に対して俸給等を支給することとなっている機関

一方、職員Aから本件単身赴任届及び住民票の届出を受けた航空自衛隊中部航空警戒管制団は、支給要件である「官署を異にする異動に伴い、住居を移転した」事実がなく、かつ「官署を異にする異動に伴い、同居していた配偶者と別居した」事実がないにもかかわらず、これを看過し、支給要件に該当するものとして手当に係る認定を行っていた。

その後、職員Aは、人事異動に伴い、技術研究本部、航空幕僚監部、航空自衛隊第2補給処及び情報本部にそれぞれ単身赴任届を届け出ている。そして、届出を受けた俸給支給機関は、異動前の俸給支給機関から認定簿、単身赴任届及び住民票の送付を受けるとともに、職員Aから前記の転入や転出の記録が記載された配偶者の住民票も提出されており、その時点で事実の確認が十分であれば支給要件を具備していないことが認識できたにもかかわらず、これを看過し、支給要件に該当するものとして手当に係る認定を行っていた。

また、航空自衛隊中部航空警戒管制団、技術研究本部、航空幕僚監部及び航空自衛隊第2補給処は、手当の支給を受けている職員が支給要件を具備しているかどうかなどを随時確認することとなっているにもかかわらず、事後の確認を十分に行わなかったため、いずれも、認定を取り消すことなく支給を継続していた。

その後、情報本部において、当該手当に関し26年2月に事後の確認を行うなどした結果、支給要件を具備していないものとして同年3月に認定を取り消した。そして、職員Aに対して、各機関が支給した手当のうち、認定の取消時点で国の債権として時効が成立していない21年3月分以降の支給額2,094,000円を、不当利得として26年3月に返納させていた。したがって、26年2月までに職員Aに支給された手当計6,353,000円のうち、上記の返納額2,094,000円を除く4,259,000円は、国庫に返納されておらず、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、当該職員において、事実と異なる単身赴任届を提出するなど、手当の適正な受給についての認識が欠けていたことにもよるが、次のことなどによると認められる。

  • ア 航空自衛隊中部航空警戒管制団、技術研究本部、航空幕僚監部、航空自衛隊第2補給処及び情報本部において、手当の認定時における事実の確認が十分でなかったこと
  • イ 航空自衛隊中部航空警戒管制団、技術研究本部、航空幕僚監部及び航空自衛隊第2補給処において、事後の確認が十分でなかったこと

これを俸給支給機関別に示すと次のとおりである。

  俸給支給機関名 手当を支給していた期間 支給額
     
(377) 航空自衛隊中部航空警戒管制団 10.8~13.3 1,120,000
(378) 技術研究本部 13.4~16.6 1,365,000
(379) 航空幕僚監部 16.7~18.7 875,000
(380) 航空自衛隊第2補給処 18.8~21.2 899,000
(377)―(380)の計   4,259,000