技術研究本部艦艇装備研究所川崎支所(以下「川崎支所」という。)は、水中電界(Underwater Electric Potential。以下「UEP」という。)技術によるセンサを活用して探知機及び機雷に対処するための技術研究及び基礎的研究を行っており、その一環として必要となる〔1〕 可搬式UEPセンサ及び〔2〕 UEP水槽実験装置用側方UEPセンサについて、技術研究本部に対して平成21年1月20日に調達要求を行っている。そして、技術研究本部は、株式会社島津製作所(以下「会社」という。)との間で、〔1〕 については21年2月9日に15,750,000円で、〔2〕 については同月16日に13,860,000円で、それぞれ製造請負契約を締結しており、納期については、両契約ともに同年3月31日としている(以下、〔1〕 及び〔2〕 を合わせて「契約物品」という。)。
契約担当官等は、会計法(昭和22年法律第35号)に基づき、請負契約又は物件の買入れその他の契約については、政令の定めるところにより、自ら又は補助者に命じて、その受ける給付の完了の確認をするため必要な検査をしなければならないこととなっている。そして、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)に基づき、製造請負契約についての必要な検査は自ら又は補助者に命じて、契約書、仕様書及び設計書その他の関係書類に基づいて行い、検査を完了した場合においては検査調書を作成しなければならないこととなっている。また、この場合においては、当該検査調書に基づかなければ支払をすることができないこととなっている。
本院は、合規性等の観点から、物品の調達が会計法令に基づき適正に行われているかなどに着眼して、前記の2契約を対象として、技術研究本部及び会社において、契約書、仕様書、検査調書、支払関係書類等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
会社は、納期までに契約物品を納入することができないことから、契約物品とは異なる機器を21年3月30日に川崎支所に納入し、その際、契約物品を納入したこととする虚偽の納品書を提出していた。
そして、契約担当官等の補助者として検査を命ぜられた川崎支所の受領検査官は、当該機器について、契約物品であることを確認しないまま、同日に契約物品が納入されたとする虚偽の検査調書を作成し、技術研究本部は、同年4月7日に会社から請求書の送付を受けて同日に支出決定を行い、これに基づき、同月10日に会社に対して計29,610,000円を支払っていた。
なお、会社は、当該機器を納入後に回収するとともに、同年6月30日に契約物品を納入していた。
このように、本件2契約に係る契約金額計29,610,000円は、虚偽の検査調書を作成するなどの不適正な会計経理により支払われており、会計法令に違背していて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、受領検査官において会計法令を遵守することの認識が欠けていたこと、技術研究本部において受領検査官に対する教育や指導等が十分でなかったことなどによると認められる。