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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
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  • 第14 防衛省 |
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(5)住宅防音事業における契約手続等について、公正性、透明性、競争性、中立性等を確保するために、防音工事に係る工事契約の金額等の決定過程を確認等したり、複数見積徴取等を実施した上で工事契約を締結させるための体制等を整備したりするとともに、支援契約に係る入札参加資格を見直したり、入札参加資格を確認する体制を強化したりするよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)防衛施設安定運用関連諸費
部局等
内部部局、9防衛局等
住宅防音事業の概要
自衛隊等の航空機の離着陸等の頻繁な実施により生ずる音響に起因する障害を防止又は軽減するために、住宅の所有者等が実施する防音工事等に対してその費用を補助するもの
支援契約の概要
補助事業者が実施する防音工事等に係る補助金交付申請書の作成等の事務手続を支援する業務を委託するもの
検査の対象とした防音工事の件数及びこれに係る国庫補助金額
494件 84億6941万余円(平成23、24両年度)
契約金額等が公正に決定されているかを確認等していない防音工事の件数及びこれに係る国庫補助金額(1)
445件 37億0967万円(平成23、24両年度)
共同住宅で複数世帯を同一時期に発注する場合に複数見積徴取等を実施していない防音工事の件数及びこれに係る国庫補助金額(2)
80件 16億9285万円(平成23、24両年度)
最低制限価格の設定状況等を確認していない防音工事の件数及びこれに係る国庫補助金額(3)
9件 32億6548万円(平成23、24両年度)
(1)から(3)までの純計
454件 69億7516万円(背景金額)
検査の対象とした支援契約の件数及び金額
34件 1億9009万余円(平成23、24両年度)
具体的な入札参加資格を定めていなかったため人事面において関連があると疑われる者と締結した支援契約の件数及び金額
9件 1388万円(平成24年度)

【改善の処置を要求したものの全文】

住宅防音事業における契約手続等の公正性等の確保について

(平成26年10月30日付け 防衛大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 住宅防音事業の概要

(1)住宅防音事業の概要

貴省は、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」(昭和49年法律第101号)、「防衛施設周辺における住宅防音事業及び空気調和機器稼働事業に関する補助金交付要綱」(平成22年防衛省訓令第10号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、自衛隊等の航空機の離着陸等の頻繁な実施により生ずる音響に起因する障害が著しいと認め、防衛大臣が指定する飛行場等の周辺の区域において住宅防音事業を実施している。この事業は、上記の区域に指定される以前から所在する住宅の所有者等が、上記の障害を防止し、又は軽減するために、住宅に遮音、吸音等の機能を付加する住宅防音工事や同工事の完了後に劣化した防音建具の機能を復旧する機能復旧工事(以下、これらを合わせて「防音工事」という。)等を実施する場合に、その費用を補助するものである。

防音工事における補助金の交付対象とする経費は、交付要綱によれば、設計監理費(防音工事の設計図書の作成等に必要な経費)及び防音工事に必要な工事費(防音工事に必要な本工事費等)とされ、これらの合算額に10分の10を乗じて得た額が補助の額とされている。

(2)住宅防音事業の事務手続等

住宅防音事業の事務手続は、交付要綱等に基づきおおむね次のとおり行われる。

  • 〔1〕 防音工事等の補助を希望する者(以下「工事希望者」という。)は交付申込書を防衛局等に提出し、防衛局等は交付申込書の内容を確認するため現地調査を実施して補助金交付内定通知書を工事希望者に送付する。
  • 〔2〕 工事希望者は、設計業者に防音工事等の設計図書の作成、補助金交付申請額の積算等を依頼して、これらの設計図書等を補助金交付申請書とともに防衛局等に提出し、防衛局等は、内容を審査した後に、補助金等交付決定通知書(以下「交付決定書」という。)を工事希望者に送付する。
  • 〔3〕 交付決定書を受領した工事希望者は補助事業者となり、交付決定額の範囲内で予定価格を設定した上で、設計業者と設計監理委託契約(以下「設計契約」という。)を、工事業者と工事請負契約(以下「工事契約」という。)をそれぞれ締結して防音工事等を実施し、工事が完了した後に、完了検査を実施して補助事業等実績報告書を提出する。
  • 〔4〕 防衛局等は、工事の完了確認を行い、補助事業等実績報告書の内容を審査して、補助金等金額確定通知書を補助事業者に送付し、補助金の支払を行い、補助事業者は、設計業者及び工事業者に対して契約金額を支払う。

そして、貴省は、補助事業者に対して、交付決定書等において、次のような補助金の交付条件を遵守することを求めて、住宅防音事業における契約手続等の公正性、透明性、競争性等を確保するとしている。

  • ア 補助事業者は、設計契約及び工事契約を、それぞれ「別の者」(資本又は人事面において関連がなく、補助事業等の公正な遂行に支障を及ぼすおそれのない者。以下同じ。)と締結することとして、契約締結予定者に口頭又は書面で確認すること
  • イ 設計契約及び工事契約の締結に際しては、公正に契約金額を決定しなければならないことから、交付決定額及び予定価格を提示せずに設計業者及び工事業者から見積書を徴取した上で、それぞれ契約を締結すること、また、共同住宅(注1)の複数世帯に係る防音工事を同一時期に発注する場合において、原則として競争入札又は複数の工事業者からの見積書の徴取(以下、競争入札と合わせて「複数見積徴取等」という。)を実施した上で工事契約を締結すること
(注1)
共同住宅  同一建物又は同一敷地内に所在する複数の住居の集合体

(3)住宅防音事業の支援業務の概要等

貴省は、上記の事務手続に不慣れな工事希望者を支援することで住宅防音事業を円滑に実施することを目的として、内部部局において、「住宅防音事業に係る業務委託について」(平成23年8月地防第10396号)、「住宅防音事業業務委託仕様書案について(通知)」(平成24年3月地防第2886号)(以下、これらを合わせて「委託要領」という。)等を定めて、防衛局等において、委託要領に基づき、管内で実施される住宅防音事業を対象として、補助金交付申請書の作成等の事務手続を支援する業務(以下「支援業務」という。)を外部業者に委託している。

そして、委託要領において、住宅防音事業における契約手続等の公正性、透明性、中立性等を確保することを目的として、支援業務に係る委託の契約(以下「支援契約」という。)の入札参加資格として、「防衛省が行う住宅防音事業に係る設計業務又は工事の請負者(本件委託業務期間中に請負を予定している者を含む。)でないこと及び当該請負者と資本又は人事面において関連がある者でないこと」を定めて、これを誓約した自己申告の中立性等証明書を入札参加時に入札参加者から提出させることとしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、防音工事及び支援契約に係る契約手続等が適切に実施されているかなどに着眼して、23、24両年度に9防衛局等(注2)において実施された防音工事のうち計494件、国庫補助金計84億6941万余円を対象として、9防衛局等において、補助金関係手続書類を確認したり、補助事業者から設計契約及び工事契約の契約方式等を聴取したりして会計実地検査を行った。また、23、24両年度に北関東、南関東両防衛局が締結した支援契約計34件、契約金額計1億9009万余円を対象として、支援契約書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注2)
9防衛局等  北海道、東北、北関東、南関東、近畿中部、中国四国、九州、沖縄各防衛局、東海防衛支局

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)工事契約の金額等の決定過程等

貴省は、前記のとおり、設計契約及び工事契約を締結するに当たり、それぞれ別の者と締結しなければならないとして、契約締結予定者から口頭又は書面で確認することを求めている。また、工事業者等に交付決定額及び予定価格を提示せずに見積書を徴取した上で、契約を締結することを求めている。

しかし、9防衛局等は、補助事業者に対して、口頭又は書面で確認したかどうかを報告させていなかったり、補助事業者が徴取した見積書を提出させるなどしていなかったりしていて、契約金額等が公正に決定されているかを確認しないまま補助金を交付していた。そして、本院が補助事業者から聴取した範囲においても、口頭又は書面で確認したことなどの事実を確認できなかった。

また、前記494件の補助事業について、交付決定額又は予定価格と契約金額をそれぞれ突合して確認したところ、494件の約90%である445件(国庫補助金計37億0967万余円)において、両者はそれぞれ同額となっていた。

(2)共同住宅の複数世帯に係る防音工事を同一時期に発注する場合における工事契約の方式

ア 複数見積徴取等の実施状況

貴省は、前記のとおり、補助金の交付条件として、共同住宅の複数世帯に係る防音工事を同一時期に発注する補助事業者に対して、原則として複数見積徴取等を実施した上で工事業者と工事契約を締結することなどを求めている。

しかし、上記の補助事業者が実施した110件の補助事業のうち、80件(国庫補助金計16億9285万余円)において、複数見積徴取等が実施されておらず、交付決定額又は予定価格のうちの工事費相当分と工事契約金額が、それぞれ同額となっていた。他方で、残りの30件において、競争性の確保に対応した複数見積徴取等が実施されており、このうち18件の補助事業の予定価格に対する工事契約の金額の割合は、2件が85%未満、10件が85%から95%未満までとなっていた。

イ 工事契約の金額等の決定過程等

494件の補助事業のうち、3防衛局(注3)に係る13件(国庫補助金計34億6942万余円)は、地方公共団体等が補助事業者となって実施されていた。そして、13件の工事契約に係る入札実施要綱、入札結果調書等によれば、事前に経営状況等を確認するなどして契約の内容に適合した履行が期待できる工事業者を入札の参加者として指名する希望制指名競争入札等の契約方式が採用されていた。

前記のとおり、9防衛局等は工事契約の金額等の決定過程を十分に確認していなかったことから、上記補助事業13件の工事契約の入札についてみたところ、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)等に基づき、契約の履行を確保するために特に必要がある場合において例外的に認められている最低制限価格が設定されていた。このため、最低制限価格を下回って入札した者が無条件に失格となり当該入札から排除されることとなっていて、13件のうち9件(国庫補助金計32億6548万余円)において、入札の参加者が契約の履行が期待できる工事業者であることが確認されているにもかかわらず、予定価格の90%の最低制限価格が設定されるなどしていた。そして、この結果、最も低い価格で入札した者が排除されていたり、中には最低制限価格と落札額との差が約5100万円となっていたりする契約も見受けられた。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

平成24年度に、南関東防衛局においてAが補助事業者となって実施した防音工事(国庫補助金2億2999万余円)の工事契約について、Aの入札結果調書等を徴収して確認したところ、事前に経営状況等を確認するなどして契約の内容に適合した履行が期待できる工事業者を入札の参加者とする条件付一般競争入札が採用されていた。そして、最低制限価格の割合を予定価格の90.0%と定めて入札を実施した結果、最低制限価格を上回る業者を落札者とし、最低制限価格を下回る価格(予定価格の83.7%)で入札した業者が失格となり排除されていて、2者の価格差は約1600万円となっていた。

(注3)
3防衛局  北関東、南関東、近畿中部各防衛局

(3)支援契約に係る入札参加資格

貴省は、支援契約に係る入札参加資格について、前記のとおり、委託要領において、設計業者及び工事業者と資本又は人事面において関連がある者でないことを求めているが、委託要領においては、上記関連がある者の範囲等の具体的な入札参加資格の内容まで定められていない。

そこで、支援契約に係る入札参加資格の確認の状況についてみたところ、9防衛局等は委託要領に基づき入札参加者から自己申告の中立性等証明書を提出させた上で入札を実施していたが、法人登記簿等の提出等を求めておらず、支援契約に係る入札参加者としての適格性を確認できていない状況となっていた。そして、9防衛局等のうち南関東防衛局が24年度に締結した支援契約計9件(契約金額計1388万余円)について、契約の相手方が過去に人事面において関連があると疑われる者である状況となっていた。

(改善を必要とする事態)

防音工事について、工事契約の金額等が公正に決定されているかを確認等していない事態、共同住宅の複数世帯に係る防音工事を同一時期に発注する場合において複数見積徴取等の実施が徹底されていない事態及び最低制限価格の設定状況等を具体的に確認していない事態並びに支援契約について、具体的な入札参加資格を定めていなかったため人事面において関連があると疑われる者と支援契約を締結して防音工事等の支援業務を実施させていた事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴省において、次のことなどによると認められる。

  • ア 工事契約の金額等の決定過程について、公正に契約金額等を決定することなどの重要性に関する説明が補助事業者に対して十分に行われていなかったり、補助事業者から見積書を提出させるなどし、工事契約の金額等の決定過程に関して確認することの重要性について理解が十分でなかったりしていること
  • イ 共同住宅の複数世帯に係る防音工事を同一時期に発注する場合において、複数見積徴取等を実施した上で工事契約を締結させるための具体的な方策が十分でないこと。工事契約の入札の際に最低制限価格を設定している地方公共団体等に対して、設定の必要性や最低制限価格の妥当性を報告させるなどの仕組みがなく、工事契約の金額等の決定過程及び妥当性を確認する体制が十分でないこと
  • ウ 支援契約における透明性及び中立性を確保するための入札参加資格に関する検討が十分でないこと。入札参加資格を満たしているかを確認する体制が十分でないこと

3 本院が要求する改善の処置

住宅防音事業における契約手続等については、公正性、透明性、競争性、中立性等の確保が求められており、今後も引き続き住宅防音事業の実施が見込まれる一方、多くの場合は事務手続に不慣れな住民が補助事業者となっている。

ついては、貴省において、補助事業者が補助事業の執行を適正に行うことが可能となるよう、次のとおり改善の処置を要求する。

  • ア 工事契約の金額等を公正に決定することができるように、契約手続の実施手順、方法及び留意事項を具体的に明示するなどした上で、補助事業者に対する説明を徹底したり、補助事業者から見積書を提出させるなどして工事契約の金額等の決定過程を確認したりすること
  • イ 共同住宅の複数世帯に係る防音工事を同一時期に発注する場合において、複数見積徴取等を実施した上で工事契約を締結させるために、契約手続の実施手順、方法及び留意事項を具体的に明示したり、支援契約に基づく支援業務の一つとして複数見積徴取等に係る業務を加えるなどの支援体制を整備したりすること。工事契約の入札の際に最低制限価格を設定する地方公共団体等に対して、設定の必要性や最低制限価格の妥当性の報告を求めるなどして、工事契約の金額等の決定過程及び妥当性を確認する体制を整備すること
  • ウ 支援契約の入札参加資格を見直すとともに、中立性等証明書に加えて、法人登記簿等の資本及び人事面に関する書類等を併せて提出させるなどして入札参加資格を確認する体制を強化すること