防衛省は、防衛省に所属する職員に貸与する目的で設置された国家公務員宿舎を統合幕僚監部、陸上、海上、航空各自衛隊の各部隊、技術研究本部等の各機関(以下、これらを合わせて「部隊等」という。)ごとに維持管理している。そして、国家公務員宿舎には、国が建設等により設置した宿舎(以下「国設宿舎」という。)のほか、国設宿舎の不足を補うなどのために、民間の賃貸住宅を借り受けることにより設置した宿舎(以下「一般借受宿舎」という。)等がある。
一般借受宿舎の設置及び廃止に係る手続は、おおむね、次のとおりとなっている。
財務省が設置した「国家公務員宿舎の削減のあり方についての検討会」は、平成23年12月に、国家公務員宿舎は真に公務に必要なものに限定し、今後5年を目途に5.6万戸程度の宿舎の削減を行うこととした「国家公務員宿舎の削減計画」を公表した。その後、財務省は、24年11月に、上記の削減幅を達成するなどとした「「国家公務員宿舎の削減計画」(平成23年12月1日公表)に基づくコスト比較等による個別検討結果及び宿舎使用料の見直しについて」(以下、これらをまとめて「削減計画等」という。)を公表した。
防衛省は、削減計画等に基づき、部隊等が維持管理している一般借受宿舎約5,100戸のうち約1,600戸を、それぞれ廃止の期限を定めて削減することとしている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
一般借受宿舎は、前記のとおり、民間の賃貸住宅を借り受けることにより設置されたものであることから、未入居となる期間についても、家主との賃貸借契約が解除されるまでは、借上費が発生することになる。
そこで、本院は、経済性等の観点から、一般借受宿舎の廃止に係る手続が適切に行われているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、23年度から25年度までに廃止されるなどした一般借受宿舎を対象として、宿舎を維持管理している部隊等のうち、統合幕僚監部、陸上、海上、航空各自衛隊の基地等18か所(注1)及び技術研究本部において、職員の入退去状況等が記録された宿舎現況記録等を確認するなどして会計実地検査を行った。また、防衛省における宿舎制度を所掌している内部部局において、一般借受宿舎の廃止に係る手続等について見解を徴するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
削減計画等に基づき廃止されるなどした一般借受宿舎について、職員が退去してから廃止されるまで、3か月から22か月までの間未入居のまま借り続けていた事態が、9部隊等(注2)で計104戸(未入居の期間に係る借上費計6168万余円)見受けられた。
これらの一般借受宿舎を未入居のまま借り続けていたのは、部隊等において、次回の人事異動の際に入居する可能性があるなどのためとしていたが、これらの宿舎には、設置期限が定められているため、新たに職員が入居することはなかった。したがって、部隊等は、職員の退去時点で新たな入居者が見込めない場合は、速やかに各戸ごとに廃止に係る手続を開始し、未入居となる期間を短縮すべきであったと認められた。そして、前記のとおり、賃貸借契約の解除についての依頼書等の提出は原則として廃止の40日前までに行うこととなっていることなどから、廃止に係る手続に要する期間として2か月程度を考慮しても、上記の104戸に係る借上費を計4733万余円節減できたと認められた。
<事例>
航空自衛隊入間基地は、民間の賃貸住宅4戸を北関東防衛局に依頼して一般借受宿舎として設置していた。そして、削減計画等に基づきこれらの宿舎は平成26年度中に廃止されることとなっていた。その廃止に係る手続等について検査したところ、職員が退去した後も、26年7月に廃止されるまで、15か月から19か月までの間未入居のまま借り続けていた。しかし、職員の退去後、これらの宿舎について速やかに廃止の手続をとっていれば、この手続に要する期間として2か月程度を考慮しても、借上費を計4,560,000円節減できていた。
国設宿舎の建替えに伴う一時的な不足分を補うなどのために設置した一般借受宿舎について、職員が退去してから廃止されるまで、3か月から10か月までの間未入居のまま宿舎を借り続けていた事態が、4部隊等(注3)で計24戸(未入居の期間に係る借上費計1090万余円)見受けられた。
これらの一般借受宿舎についても、(1)と同様に速やかに廃止に係る手続を開始し、未入居となる期間を短縮すべきであったと認められ、この手続に要する期間として2か月程度を考慮しても、上記の24戸に係る借上費を計732万余円節減できたと認められた。
職員が退去してから速やかに廃止することとしていた一般借受宿舎について、家主が長期間入院するなどしていて解約の同意書が得られなかったことなどから、防衛局等への依頼書等の提出に期間を要し、その結果、職員が退去してから廃止されるまで、5か月から35か月までの間未入居のまま借り続けていた事態が、2部隊等(注4)で計14戸(未入居の期間に係る借上費計826万余円)見受けられた。
これらの一般借受宿舎の賃貸借契約書によれば、賃貸借期間中、賃貸借物件を使用する必要がなくなったときは、家主に対して、いつでも解約の申入れをすることができ、その場合において、賃貸借契約は、解約の申入れ後30日を経過した日に終了することとされている。したがって、部隊等が上級部隊や防衛局等と調整して廃止に係る手続を行う方策を検討して、速やかに廃止に係る手続を開始し、未入居となる期間を短縮すべきであったと認められ、この手続に要する期間として、(1)と同様に2か月程度を考慮しても、上記の14戸に係る借上費を計592万余円節減できたと認められた。
このように、一般借受宿舎について、設置期限が定められていて、新たな入居者が見込めないにもかかわらず職員の退去後も借り続けたり、廃止に係る手続に長期間を要したりしたため、未入居の期間に係る借上費を支払っている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、防衛省は、26年9月に一般借受宿舎の廃止に係る手続についての通知を発して、職員が退去してから廃止されるまでの未入居となる期間を短縮するよう、次のような処置を講じた。