陸上自衛隊は、野外における訓練等において指揮連絡を行うために、携帯無線機等の多種多様な通信器材を使用している。このうち、携帯無線機には、85式野外無線機、新野外無線機等があり、これらは、その形状等に合わせた専用の電池を電源として使用している。電池には、使い捨ての電池(以下「1次電池」という。)のほか、経費節減の観点から導入された、充電器で充電して繰り返し使用できる電池(以下「2次電池」という。)があり、携帯無線機1台を使用するためには1次電池又は2次電池のいずれか1個が必要となる。また、2次電池はいずれの携帯無線機に使用する場合にも通常300回程度充電器で充電して繰り返し使用できるとされている。
1次電池については、携帯無線機を使用する各部隊(以下「使用部隊」という。)が必要な1次電池の数量を算定して各補給処に請求し、補給統制本部がこれを取りまとめて、その請求数量に基づき調達している。そして、調達された1次電池は、保管されている各補給処から、使用部隊の請求に応じて使用部隊に補給されている。
一方、2次電池及び充電器については、1次電池と異なり、陸上幕僚監部が、携帯無線機の数量から2次電池及び充電器の調達数量を算定し、補給先及び補給数量を決定して、補給統制本部が陸上幕僚監部の算定した数量を基に調達している。そして、調達された2次電池及び充電器は、陸上幕僚監部が決定した補給先及び補給数量に基づくなどして、2次電池及び充電器を管理している部隊に補給され、同部隊の担当者等が運用に応じて使用部隊に配布するなどしている。
上記のとおり、陸上自衛隊は、2次電池及び充電器を毎年度順次調達しており、平成26年5月末時点において保有している数量は、2次電池48,491個、充電器2,001個(調達価格相当額2次電池16億4007万余円、充電器9億7493万余円、計26億1500万余円)となっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、効率性、有効性等の観点から、陸上自衛隊が携帯無線機で使用する2次電池及び充電器を活用しているかなどに着眼して、陸上幕僚監部、装備施設本部、補給統制本部、関東、関西両補給処、陸上自衛隊22駐屯地等(注)において、使用部隊が保有している2次電池及び充電器を対象として、同駐屯地等に所在する使用部隊から調書を徴したり、携帯無線機等の使用実績が記載されている履歴簿等の関係書類を確認したりするなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、携帯無線機の使用に当たって1次電池又は2次電池のどちらを使用するかなどについては、使用部隊に適用される共通的な取扱方法が明確に定められておらず、使用部隊の判断によるものなどとなっていた。
そして、調書、履歴簿等により、2次電池及び充電器の活用状況を把握して分類したところ、1次電池及び2次電池の両方を訓練等で携行していて2次電池を優先して使用するなど、2次電池及び充電器を活用している使用部隊がある一方で、一部の2次電池を使用していなかったり、使用頻度が少なかったりしているなど、2次電池及び充電器を十分に活用していない使用部隊が見受けられた。これらを原因別に示すと次のとおりである。
14駐屯地等の27使用部隊では、使用部隊によって、2次電池又は充電器のいずれか一方を保有していなかったり、充電器の保有数量に比べて2次電池を多く保有していたりなどしていた。
3駐屯地の4使用部隊では、使用部隊の主要な任務が長時間連続する野外での行動であり、充電器で充電するための電源が確保できなかったり、主要な任務が装備品の整備等であり、携帯無線機を使用する訓練等が少なかったりなどしていた。
16駐屯地等の35使用部隊では、1次電池及び2次電池の両方を訓練等で携行していても、2次電池を1次電池の予備としたり、2次電池を駐屯地内の記念行事、短時間の訓練等に限定して使用したりなどしていた。
以上のとおり、使用部隊における2次電池及び充電器の保有状況、活用状況並びに任務の特性等が十分考慮されていないため、2次電池及び充電器が適切に配分されていなかったり、2次電池の使用を限定したりなどしていて、2次電池4,799個及び充電器197個(調達価格相当額2次電池1億6027万余円、充電器9272万余円、計2億5300万余円)が十分に活用されていなかったと認められた。
このように、携帯無線機で使用する2次電池及び充電器の使用部隊への配分及び取扱いが適切でなかったことなどから、使用部隊における使用が区々となっていて、経費節減の観点から導入された2次電池及び充電器を十分に活用していない事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、陸上幕僚監部において、使用部隊における2次電池及び充電器の保有状況並びに活用状況等を適切に把握していなかったこと、使用部隊に対して、2次電池の活用に関する具体的な取扱方法を明確に示していなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、陸上幕僚監部は、各部隊等に対して、26年3月及び8月に2次電池の活用促進に関する通達等を発するとともに、同年5月に関係者を集めた会議を開くなどして、1次電池の請求に当たっては、経済的な調達を図るために2次電池の活用を考慮することなど2次電池を積極的に活用するよう周知徹底した。また、同年7月に各部隊等に対して、2次電池及び充電器の適切な配分を目的とした管理換の指示を行うなどの処置を講じた。