防衛省は、国以外の者が所有している土地を、自衛隊及び在日米軍の施設用地(以下「防衛施設用地」という。)として使用するために、当該土地の所有者と賃貸借契約を締結して賃借している。
そして、九州、沖縄両防衛局は、上記の賃貸借契約の締結に当たり、土地の所有者の同意を得るために契約条件等の説明を行ったり、賃借料の支払先を確認したりするなどの事務(以下「賃貸借契約事務」という。)を、随意契約により、土地の所有者で構成される社団法人等(以下「受託者」という。)に委託して、毎年度実施している。
支出負担行為(国の支出の原因となる契約その他の行為をいう。以下同じ。)は、会計法(昭和22年法律第35号)第11条の規定により、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならないとされている。また、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第39条の2第1項の規定により、支出負担行為担当官は、支出負担行為をなすには、各省各庁の長から示達された支出負担行為の計画の金額を超えてはならないとされている。すなわち、支出負担行為担当官は、各省各庁の長からの示達がなければ契約を締結することができないことになる。また、会計法第29条の8の規定により、契約を締結する場合には、原則として、契約書を作成しなければならないとされている。
そして、防衛省において地方防衛局長が支出負担行為担当官となる支出負担行為については、内部部局が取りまとめた上で、防衛大臣に対して示達の要求を行うこととなっており、防衛大臣は、この要求に基づいて地方防衛局長に対して支出負担行為の計画の金額を示達している。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性等の観点から、本件委託契約に係る会計処理が会計法令に基づき適正に行われているかなどに着眼して、九州、沖縄両防衛局が平成24、25両年度に締結した賃貸借契約事務の委託契約計8件(契約金額計1億2017万余円)を対象として、内部部局及び九州、沖縄両防衛局において、支出負担行為決議書、委託契約書等の内容及び示達の時期、金額等を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
防衛省は、防衛施設用地の安定的使用に支障が生じないように土地の所有者から防衛施設用地を円滑に賃借するためには、賃貸借契約事務を通年で実施する必要があるとしている。このため、九州、沖縄両防衛局は、賃貸借契約事務を、毎年度、年度当初から受託者に実施させていた。
しかし、内部部局は、支出負担行為の計画の示達に当たって、土地の所有者数が年度途中で変動することに伴って受託者に委託する賃貸借契約事務の業務量も変動するなどのため、業務量の見通しが立ち、本件委託契約に係る所要額が明らかになった時点で、防衛大臣に対して示達の要求を行うことにしていた。このため、本件委託契約に係る示達がされたのは、九州防衛局長に対しては24年4月25日(24年度)及び25年6月11日(25年度)、沖縄防衛局長に対しては25年3月8日(24年度)及び26年3月28日(25年度)となっていた。
前記のとおり、支出負担行為担当官は、各省各庁の長からの示達がなければ支出負担行為を行うことができないこととされている。このようなことから、九州防衛局では、契約書を作成するなどして本件委託契約を受託者と締結したのは、示達を受けた後の24年6月1日(24年度)及び25年7月19日(25年度)となっていた。また、沖縄防衛局では、同様に、25年3月13日(24年度)及び26年3月28日(25年度)となっていた。すなわち、九州防衛局は本件委託契約を締結した日の2か月以上前から、沖縄防衛局は本件委託契約を締結した日の11か月以上前から、いずれも支出負担行為の計画の金額の確認や契約書の作成を行わずに、受託者に賃貸借契約事務を実施させている状態となっていた。
このように、九州、沖縄両防衛局が委託する賃貸借契約事務の業務量が年度当初には見通せなかったことなどを理由として、会計法令に定められた手続にのっとることなく、受託者に賃貸借契約事務を実施させている状態となっている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、防衛省において、次のことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、防衛省は、賃貸借契約事務を委託して実施するに当たり、適正な会計処理が行われるよう、次のような処置を講じた。