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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第1節 省庁別の検査結果 |
  • 第14 防衛省 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(7)備蓄している抗インフルエンザウイルス薬に関する最新の情報を迅速かつ確実に把握する態勢を整えるとともに、情報の内容について精査及び検討を行い、周知することなどにより、適切な管理を行うよう改善させたもの


会計名
一般会計
部局等
内部部局、陸上、海上、航空各幕僚監部、陸上自衛隊補給統制本部、海上、航空両自衛隊補給本部、陸上自衛隊1補給処、海上自衛隊5造修補給所、航空自衛隊17部隊、3自衛隊病院
物品の分類
(分類)防衛用品 (区分)消耗品
備蓄しているリレンザの概要
防衛省新型インフルエンザ対策計画等に基づき備蓄しているもの
平成20年度に調達されたリレンザの個数及び調達額
24,723個 8280万余円
上記のうち廃棄されたリレンザの個数及び調達額
15,548個 5207万円

1 リレンザの備蓄等の概要

(1)リレンザの備蓄の概要

防衛省は、新型インフルエンザ対策を的確かつ迅速に行うために、政府の新型インフルエンザ対策行動計画(平成21年2月改定)等を踏まえて、防衛省新型インフルエンザ対策計画(平成21年3月)(以下「対策計画」という。)を策定している。対策計画には、関係省庁との間で平素から密接な連携及び協力の実施に努めること、陸上、海上、航空各自衛隊(以下「各自衛隊」という。)等の関係部署間で新型インフルエンザ対策に関する情報及び知見の総合的な集約並びに交換を行うこと、抗インフルエンザウイルス薬を含む資器材等を計画的に整備し必要量を確保することなどが定められている。そして、防衛省は、平成20年度から24年度までの間に、対策計画等に基づいて抗インフルエンザウイルス薬リレンザ(以下「リレンザ」という。)を計84,672個(調達額計2億4772万余円)調達しており、各自衛隊の補給処等の薬品庫において備蓄している。

また、リレンザには、診療用として流通しているリレンザのほかに備蓄専用のリレンザがある。

(2)リレンザの有効期間の延長に関する通知の概要

厚生労働省は、都道府県等に対して抗インフルエンザウイルス薬の有効期間の延長に関する通知を適時に発出しており、21年6月に「抗インフルエンザウイルス薬リレンザの有効期間の延長について」(平成21年6月薬食審査発第0601001号。以下「21年通知」という。)を発出している。これによれば、21年6月以降に製造されるリレンザの有効期間が従前の5年間から7年間に延長されるとともに、既に国、都道府県により備蓄されているものについても、室温において適切に保管されているリレンザについては、製造後7年間は承認された規格を逸脱することはないと考えられるとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性、効率性等の観点から、備蓄されているリレンザについて、薬剤に関する最新の情報を反映して適切な管理が行われているかなどに着眼して、20年度に備蓄を目的として調達されて46補給処等において管理されているリレンザ(以下「20年度リレンザ」という。)計24,723個(調達額計8280万余円)を対象として、内部部局、陸上、海上、航空各幕僚監部(以下「各幕僚監部」という。)、陸上自衛隊補給統制本部、海上、航空両自衛隊補給本部、各自衛隊の補給処等において、リレンザの管理状況や契約書、物品管理簿等の書類を確認したり、21年通知に対する認識等について担当者から説明を聴取したりするなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

20年度リレンザの製造は19年9月であり、製造時の有効期間は製造後5年間であったことから、包装には使用期限が24年9月と表示されていた。このため、27補給処等(注1)は、26年3月までに、20年度リレンザ計15,548個(調達額計5207万余円)を廃棄していた。

(注1)
27補給処等  陸上自衛隊補給統制本部、同関東補給処、海上自衛隊横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊各造修補給所、航空自衛隊第2航空団、同第29警戒隊、同第36警戒隊、同第6航空団、同中部航空警戒管制団、同第5航空団、同第8航空団、同西部航空警戒管制団、同第1輸送航空隊、同第3輸送航空隊、同第1航空団、同第11飛行教育団、同幹部学校、同幹部候補生学校、同第3術科学校、同第4術科学校、同第4補給処木更津支処、自衛隊三沢、岐阜、那覇各病院

防衛省によれば、21年通知について、「承認された規格を逸脱することはないと考えられる」期間の延長の対象は国等により備蓄されている備蓄専用のリレンザであると認識し、診療用として流通しているリレンザを調達した20年度リレンザについては21年通知による期間の延長の対象にはならないと判断して、補給処等へ連絡するなど特段の対応を執らなかったとしている。そして、この判断を行う際に、製造販売業者に問い合わせるなどしていたものの、21年通知の発出元である厚生労働省に21年通知の趣旨等の確認を行っていなかった。

しかし、本院が厚生労働省に対して21年通知の趣旨等を確認したところ、次のとおりであった。

  • ア リレンザは、11年12月に我が国において製造販売が承認されて以来、製造方法が変更されておらず、21年5月以前に製造され既に国、都道府県により備蓄されているリレンザについても、室温において、適切に保管されているものについては、21年6月以降製造分と同様に製造後7年間は承認された規格を逸脱することはないと考えられる。
  • イ 現に、厚生労働省は、新型インフルエンザ対策として、21年通知等に基づいて、18年12月製造分のリレンザも備蓄している。
  • ウ 備蓄専用のリレンザと診療用として流通しているリレンザは、包装は異なるが、医薬品リレンザとしては同一であるので、成分に違いはない。

したがって、薬品庫で室温において適切に保管されていれば、19年9月製造の20年度リレンザも29年9月(注2)まで承認された規格を逸脱することはないと考えられることから、防衛省において、21年通知が発出されたことにより必要となる対応について十分な検討を行うことなく20年度リレンザ計15,548個(調達額計5207万余円)を廃棄した事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(注2)
29年9月  平成25年11月に、リレンザについて有効期間を10年間に延長するとした通知(平成25年11月薬食審査発1125第1号)が発出されたことにより、20年度リレンザの承認された規格を逸脱することはないと考えられる期間は、29年9月までとなる。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、防衛省において、21年通知が発出されたことにより必要となる対応の検討に当たり、発出元である厚生労働省に対して21年通知の趣旨等を確認すること及び実際に薬剤を管理している補給処等に対して情報を伝達して周知することの必要性に対する理解が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、防衛省は、リレンザを含む備蓄している抗インフルエンザウイルス薬の適切な管理を行うよう次のような処置を講じた。

  • ア 26年1月に、厚生労働省に対して、抗インフルエンザウイルス薬に関する情報提供を行うよう依頼して、最新の情報を迅速かつ確実に把握する態勢を整えるとともに、同年8月に、今後、上記の情報提供を受けた場合については内部部局及び各幕僚監部の衛生関係部署と調整した上で、その内容について精査及び検討を行い、内部部局から各幕僚監部への事務連絡により情報共有を図り、各幕僚監部から補給処等へ周知することとした。
  • イ 承認された規格を逸脱することはないと考えられるとされた期間を踏まえて、26年5月以降順次、20年度リレンザを診療用として使用したり、抗インフルエンザウイルス薬の保管及び調達に係る計画を見直して自衛隊間で管理換を行ったりした。