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  • 第1 沖縄振興開発金融公庫 |
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

情報システムの運用保守業務契約の締結に当たり、作業種別ごとの技術者数や作業時間等の実績が確認できる書類を提出させて、運用保守業務の実態を踏まえるなどして、予定価格の積算を適切なものとするよう是正改善の処置を求めたもの


科目
業務諸費
部局等
沖縄振興開発金融公庫本店
契約の概要
公庫の業務に係る各種の情報システムを円滑かつ安定的に運用するために、情報システムの運用業務及び保守業務を実施させるもの
契約の相手方
2会社
契約
平成24年4月、25年4月 一般競争契約
積算額
5億2921万余円(平成24、25両年度)
低減できた積算額
1億9960万円(平成24、25両年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

情報システムに係る運用保守業務契約の予定価格の積算について

(平成26年10月30日付け 沖縄振興開発金融公庫理事長宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 運用保守業務契約等の概要

(1)運用保守業務契約の概要

貴公庫は、沖縄振興開発金融公庫法(昭和47年法律第31号)に基づき、沖縄県内における経済の振興及び社会の開発に資することを目的として、同県内において、産業の振興開発に寄与する事業に必要な長期資金の貸付け等の業務を行っており、これらの業務における業務処理の効率化、迅速化等を目的として、「直貸システム」「経理システム」といった各種の情報システムを構築して運用している。そして、貴公庫は、情報システムを円滑かつ安定的に運用するために、一般競争契約により、平成24、25両年度において、表1のとおり、富士通株式会社沖縄支店及び株式会社クレスト(以下、これらを合わせて「2会社」という。)と情報システムの運用業務及び保守業務(以下、運用業務と保守業務を合わせて「運用保守業務」という。)に係る4件の契約を締結して、運用保守業務を2会社に実施させている(以下、運用保守業務に係る契約を「運用保守業務契約」という。)。

表1 平成24、25両年度に締結した運用保守業務契約

(単位:千円)
契約相手方 契約件名 契約期間 予定価格 契約金額 業務内容
富士通株式会社沖縄支店 公庫情報システムに係る運用・保守等統括管理に関する業務及びインフラに係る運用・保守業務委託契約 平成
24年4月~25年3月
167,314 166,320 運用業務:システム全体管理、システム運用、ヘルプデスク等
 
保守業務:改良作業、予防保守作業、インシデント解決対応、業務臨時処理
25年4月~26年3月 170,458 170,100
株式会社クレスト 公庫直貸システム等に係る運用・保守業務委託契約 24年4月~25年3月 101,380 96,768
25年4月~26年3月 90,065 76,104
529,218 509,292  
(注)
単位未満を切り捨てているため、各項目を集計しても計と一致しないものがある。

「公庫情報システムに係る運用・保守等統括管理に関する業務及びインフラに係る運用・保守業務委託契約」(以下「統括管理契約」という。)及び「公庫直貸システム等に係る運用・保守業務委託契約」(以下「直貸契約」という。)の仕様書によれば、情報システム全体(直貸契約において一部除く。)がそれぞれの運用保守業務の対象とされており、運用業務では、システム全体管理、システム運用、ヘルプデスク等の業務を、保守業務では、改良作業、予防保守作業、インシデント(注)解決対応及び業務臨時処理の業務をそれぞれ行うこととされている。

また、上記の仕様書によれば、2会社は、毎月の業務内容等を記載したサービス実施報告書を作成して、貴公庫に提出することとされている。

(注)
インシデント  システムの稼働において発生する不測の事態

(2)予定価格の積算等

貴公庫が定める経理規程(昭和47年規程(経)第1号)によれば、予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡等を考慮して適正に定めなければならないとされている。そして、貴公庫は、運用保守業務契約の予定価格を、次のとおり積算している。

  • 〔1〕 過去の実績を基にした1月当たりの作業回数に、1回当たりの作業時間を乗じて作業種別ごとの工数を求めるなどして人月数を算出し、これらを積み上げて運用業務の積算工数とする。
  • 〔2〕 貴公庫が運用する情報システム全体のプログラムを対象として保守業務を行うために必要となる技術者数から人月数を算出し、これを保守業務の積算工数とする。
  • 〔3〕 〔1〕 と〔2〕 の積算工数に、市販の積算参考資料に掲載されている技術者1人当たりの月額単価をそれぞれ乗じ、これらを年額に換算した上で合算するなどして得た額を予定価格とする。
    また、前記の仕様書によれば、運用保守業務契約に従事する技術者数は、統括管理契約で24年度9人程度、25年度10人程度、直貸契約で24年度12人程度、25年度10人程度とされている。また、技術者は、貴公庫本店に9時から18時までを基本に常駐して運用保守業務に従事することとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、貴公庫が24、25両年度に2会社と締結した前記の運用保守業務契約4件(契約金額(支払金額)計5億0929万余円、予定価格の積算額計5億2921万余円)を対象として、貴公庫本店において、契約書、仕様書、予定価格調書、サービス実施報告書等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

貴公庫は、前記のとおり、運用保守業務契約の予定価格を積算するに当たり、運用業務と保守業務のそれぞれについて積算工数を算出している。そして、運用保守業務契約ごとにそれぞれの積算工数を合計すると(以下、合計した後の積算工数を「合計積算工数」という。)、統括管理契約で24年度19.6人月、25年度21.0人月、直貸契約で24年度18.8人月、25年度17.4人月となっていた。

そして、積算工数の詳細を確認したところ、統括管理契約と直貸契約の仕様書では、前記のとおり、いずれも情報システム全体を対象として運用保守業務を行うこととなっていて、それぞれの運用保守業務の対象となる範囲が明確に区分されていなかったり、運用業務において、積算工数の算出基礎となる1回当たりの作業時間数に、保守業務に係る作業時間を含めたりしていたため、積算工数が重複して計上されるなどしていた。

また、運用保守業務契約は、契約相手方の技術者が実施した業務に応じた対価を支払うべき性格のものであることから、作業種別ごとの技術者数や作業時間等の実績が確認できる書類を契約相手方から提出させて、貴公庫においてこれらの実績を確認して運用保守業務の実態を把握するとともに、これを次年度以降の予定価格の積算に反映させることが重要である。

しかし、貴公庫は、従前から2会社に情報システムの運用保守業務を委託していたものの、仕様書に基づき2会社に提出させているサービス実施報告書には、単に業務内容等のみが記載されていて、作業種別ごとの技術者数や作業時間等の実績を記載するように定められていないことから、運用保守業務の実態を把握することができない状況となっていた。

このため、運用保守業務に実際に従事した技術者数等の実績について、貴公庫が技術者の管理のために備えている出勤管理表を確認したところ、統括管理契約で24年度9人、25年度10人、直貸契約で24年度12人、25年度10人となっていた。また、いずれの技術者も、貴公庫本店に9時から18時までを基本に常駐して運用保守業務に従事していて、これらの者以外に、運用保守業務契約に基づく運用保守業務に従事している技術者は見受けられなかった。そこで、出勤管理表に記載されている勤務時間数を基に1月当たりの実工数を試算したところ、統括管理契約で24年度9.4人月、25年度10.8人月、直貸契約で24年度11.9人月、25年度10.1人月となり、前記の合計積算工数とこの実工数とを比較すると、表2のとおり、いずれの運用保守業務契約においても、合計積算工数が実工数の1.5倍から2倍程度過大となっており、実態に対して大きくかい離して積算されていた。

表2 平成24、25両年度の運用保守業務契約の実工数と合計積算工

契約件名 年度 勤務時間数からの実工数
(人月)
(A)
予定価格調書の積算工数 合計積算工数/実工数
(倍)
(B)/(A)
運用業務積算工数
(人月)
保守業務積算工数
(人月)
合計積算工数
(人月)
(B)
統括管理契約 平成
24
9.4 9.3 10.3 19.6 2.0
25 10.8 11.7 9.3 21.0 1.9
直貸契約 24 11.9 4.4 14.4 18.8 1.5
25 10.1 4.3 13.0 17.4 1.7
(注)
小数点第2位以下を切り捨てているため、各項目を集計しても計と一致しないものがある。

以上のことから、実工数を基に、前記の運用保守業務契約4件の予定価格を修正計算すると、24、25両年度で計3億2960万余円となり、前記の予定価格計5億2921万余円を、約1億9960万円低減できたと認められる。

(是正改善を必要とする事態)

このように、運用保守業務契約において、作業種別ごとの技術者数や作業時間等の実績が報告されず、貴公庫において運用保守業務の実態を把握できない状況となっているなどしていて、予定価格が過大に積算されている事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴公庫において、運用保守業務の実態を踏まえるなどして予定価格を適正に定めることの重要性に対する認識が欠けていることなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

貴公庫は、今後も運用保守業務契約を締結していくものと見込まれる。

ついては、貴公庫において、作業種別ごとの技術者数や作業時間等の実績が確認できる書類を提出させて、当該実績により把握した運用保守業務の実態を踏まえるなどして、予定価格の積算を適切なものとするよう是正改善の処置を求める。