東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)及び西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。また、以下、これらの会社を総称して「3会社」という。)は、高速道路の建設、改築等事業の一環として、土工、橋りょう工、トンネル工等の土木工事を毎年度多数実施している。そして、3会社は、これら土木工事の実施に当たり、ダンプトラック等の工事用車両を通行させる工事用道路や河川内に橋脚を施工する際の重機の作業ヤードとして、H形鋼や山形鋼等の鋼材及び覆工板等の鋼製品(以下、これらを合わせて「鋼製材料」という。)を組み合わせて工事用仮橋や工事用仮桟橋(以下、これらを合わせて「工事用仮橋」という。)を設置している。
工事用仮橋は、工事期間中一時的に設置されるもので、工事完了の際には撤去されるものである。
3会社は、工事用仮橋等の仮設工については、公共工事標準請負契約約款(昭和25年中央建設業審議会)に基づき、請負者の責任において当該工事の中で設置する任意仮設としており、その費用は当該工事費に含めて積算することとしている。
3会社は、それぞれが制定している土木工事積算要領(以下「積算要領」という。)に基づき、一つの工事で工事用仮橋を設置して使用し、撤去まで行う場合の鋼製材料費については、設置期間に応じたリース品の賃料等と中古品の購入費とを比較して安価な方を採用するなどして積算している。また、3会社は、鋼製材料について新品か否かなどは指定しておらず、材料確認及び工事用仮橋の出来形の検測(以下、総称して「検測」という。)も行わないこととしている。
一方、工事用仮橋を設置した工事において、当該工事用仮橋を使用後に撤去せずに現場に存置して、次の工事に引き継いで使用させる場合(以下、この場合の工事用仮橋を設置した工事を「先行工事」という。)については、積算要領において、発注者が設計図書等に形状、材質等を具体的に明示する指定仮設とするとともに、鋼製材料は全て新品を使用することを特記仕様書に明記して、鋼製材料費は新品の購入価格により積算することとしている。そして、先行工事の完了に当たっては、検測を行った上で次の工事に引き継いで使用させることとしている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
近年、震災復興に伴う鋼製材料等の需要の増加により、鋼製材料は新品、中古品を問わず全般的に不足気味であることから、鋼製材料を有効に活用していく必要があり、また、3会社は、事業活動により発生する副産物を有効活用するなど環境保全の面から3R(注)の推進に貢献することとしている。このため、鋼製材料については、新品ではなくリース品又は中古品を使用することが鋼製材料の有効活用、ひいては3Rの推進や経費の節減に寄与することになる。
そこで、本院は、経済性等の観点から、先行工事においてもリース品又は中古品を使用することにより、工事費の低減を図ることができないかなどに着眼して、平成24、25両年度に契約した先行工事、東会社計6件(契約金額計142億3819万余円)、中会社計11件(同計143億0091万円)、西会社計4件(同計129億4693万余円)、合計21件(同合計414億8603万余円)を対象として、3会社本社及び各支社において契約書、設計書、特記仕様書等の書類を確認するとともに、現地を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
3会社は、先行工事21件における工事用仮橋の鋼製材料を、積算要領に基づいて全て新品と指定しており、その材料費を東会社計9億2299万余円、中会社計5億3296万余円、西会社計8869万余円と積算していた。
そして、鋼製材料を全て新品と指定している理由について、3会社は、工事用仮橋を先行工事から次の工事に引き継ぐ場合には、請負者が異なるため、形状、材質等について指定仮設として管理する必要があり、リース品又は中古品を用いた場合には鋼製材料の材質を確認するための材料検査証明書が添付されないことがあるため、新品を用いた場合と比較して形状、材質等の確認を十分に行うことができないおそれがあるなどとしていた。
しかし、指定仮設として管理するとしても、次の理由から、鋼製材料を新品に指定する必要はなくリース品又は中古品を使用することが可能であると認められた。
このように、先行工事で使用する鋼製材料について、リース品又は中古品の使用が可能であるのに新品と指定している事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(低減できた積算額)
先行工事21件で設置した工事用仮橋の鋼製材料費について、リース品又は中古品の流通が確認されないなどの一部の鋼製材料を除き、リース品又は中古品を使用することとして、工事用仮橋の設置期間全体に係る鋼製材料費を算定すると、東会社が8億2824万余円、中会社が4億2464万余円、西会社が6568万余円となり、前記の東会社の積算額9億2299万余円、中会社の積算額5億3296万余円、西会社の積算額8869万余円は、それぞれ約9470万円、約1億0830万円、約2300万円低減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、3会社において、先行工事の実施に当たり、工事用仮橋について、環境への配慮や経済的な設計、積算を行うことに対する認識が欠けていたことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、3会社は、26年8月に、積算要領を改訂し、先行工事で設置して次の工事に引き継ぐこととなる工事用仮橋の鋼製材料については、一部の鋼製材料等を除いてリース品又は中古品を使用することとして、同年9月からこれを適用することとする処置を講じた。