本州四国連絡高速道路株式会社(以下「会社」という。)は、高速道路の安全な交通を確保等するために、通信用設備、照明設備等を多数設置して24時間運用している。そして、会社は、災害等によって商用電源が停電した際、自家発電設備から電気が供給されるまでの間等に、上記の設備に電気を供給するために、無停電電源装置等(以下「電源装置」という。)を設置している。電源装置は、電気を供給する負荷に見合った容量を持つ単電池を連結した蓄電池(以下「蓄電池」という。)等で構成されており、容量が大きい蓄電池は専用の収容架(以下「蓄電池盤」という。)に、容量が小さい蓄電池は他の機器との共用の収容架にそれぞれ収められている。
会社の鳴門、岡山、坂出、しまなみ尾道各管理センター(以下、これらの管理センターを総称して「4管理センター」という。)は、老朽化してきた電源装置の更新等を行うため、平成23年度から25年度までに、平成24年度鳴門管内無停電・直流電源設備更新工事等5工事を、サンケン電気株式会社等4会社に計4億5785万余円で、それぞれ請け負わせて実施している。
上記の5工事は、電源装置68台の更新及び2台の新設を行うものであり、蓄電池及び蓄電池盤については、それぞれ68基の更新及び2基の新設、22面の更新及び2面の新設を行うものとなっている。
そして、これら電源装置の製造費等の積算額は、蓄電池70基及び蓄電池盤24面の価格計1億4395万余円にその他の装置等を含めて、計4億4961万余円となっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性、有効性等の観点から、電源装置に係る蓄電池の更新の時期は適切か、また、管理は適切に行われているかなどに着眼して、会社が23年度から25年度までに締結した前記の5工事を検査の対象として、会社本社及び4管理センターにおいて、契約書、設計書、作業報告書等の関係書類により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
本件工事で更新のために撤去された蓄電池68基のうち、52基は期待寿命が13年間の長寿命型の蓄電池で、平成13年から23年までの間に設置されていた。
蓄電池メーカーは、蓄電池の性能劣化の指標として、単電池の内部抵抗の値について警告値(注1)及び寿命値(注2)を示しており、通常、警告値を超えると短期間で寿命値に達するとされている。
そこで、4管理センターは点検管理要領(平成11年3月制定)に基づき内部抵抗の値を定期的に測定しており、その測定値をみると、前記52基の蓄電池の更新工事直前の内部抵抗の値は警告値を下回っていて性能劣化が認められず、健全性は十分保たれていたと認められた。
さらに、前記52基の蓄電池を設置する際に、蓄電池メーカーは、次回の蓄電池の交換推奨時期を設置から13年後としており、この52基のうち更新に合わせて容量を大きくしなければならないなどの15基を除く37基の蓄電池は、その交換推奨時期が平成30年から36年までと相当程度先となっていることから更新の必要がなかったと認められた。また、これに伴い、13面の蓄電池盤についても更新の必要がなかったと認められた。
したがって、上記37基の蓄電池及び13面の蓄電池盤の更新を行わないこととして電源装置の製造費等を計算すると、前記の積算額4億4961万余円は3億8081万余円となり、6880万余円低減できたと認められた。
本件工事で更新のために撤去された蓄電池68基のうち、前記の52基を除く16基は期待寿命が5年間から8年間程度と短い従来型の蓄電池で、平成10年から25年までの間に設置されていたものであり、このうちの10基については、交換推奨時期が本件工事施工前の18年から23年までとなっていた。そこで、これら10基の蓄電池の内部抵抗の測定値をみると、内部抵抗の値が警告値を上回った単電池を有する蓄電池が平成21年に1基、22年に1基、23年に2基、24年に2基、計6基見受けられた。これらのうち、21年から23年にかけて警告値を上回った4基(これらに係る電源装置の取得価格は計1億2274万余円)については、その後、更新するまでに単電池の内部抵抗の値が寿命値を上回っていて健全性が保たれていなかった。
このように、上記4基の蓄電池は、性能劣化が明らかであり、所要の容量が得られず電気の供給時間が短縮して、電源装置の機能を損なうなどのおそれがある状況となっているのに、更新が行われておらず管理が適切でなかったと認められた。
以上のとおり、電源装置に係る蓄電池について、交換推奨時期が相当程度先となっていて、内部抵抗の値によれば性能劣化が認められないなど健全性が十分保たれているのに更新を行ったり、交換推奨時期が過ぎていて内部抵抗の値が寿命値を上回っていて性能劣化が明らかであるのに更新を行っていなかったりしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、点検管理要領が電源装置の点検項目、点検周期等を記載しているのみであり、蓄電池を適時に更新するための内部抵抗の測定値等を踏まえた蓄電池の管理方法が定められていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、会社は、26年8月に、性能劣化を示す内部抵抗の測定値等を踏まえた蓄電池の管理方法に関する「蓄電池管理マニュアル」を制定し、同年9月からこれを適用することとし、電源装置に係る蓄電池を適時に更新して、蓄電池の更新に係る費用の低減と適切な管理を図る処置を講じた。