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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • 第12 日本郵政株式会社、第13 日本郵便株式会社、第14 株式会社ゆうちょ銀行、第15 株式会社かんぽ生命保険 |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)―(4)固定電話の利用に当たり、4会社が連携して継続的に回線を管理する体制を整備するなどして、光IP電話への切替えを進めることにより、電話料金の節減を図るよう改善させたもの


会社名
(1)日本郵政株式会社
(2)日本郵便株式会社
(3)株式会社ゆうちょ銀行
(4)株式会社かんぽ生命保険
科目
(1)国内通信料及び国際通信料
(2)国内通信料及び国際通信料
(3)通信費
(4)通信費
部局等
(1)本社、81局所
(2)本社、1,371局所
(3)本社、285局所
(4)本社、98局所
契約の概要
顧客へのサービス提供、業務連絡等のために固定電話を利用するもの
光IP電話に適さない回線を除いた各回線の通話チャネル数の合計が4以上となる1,839局所等の電話料金の支払額
(1)9436万余円(平成25年度)
(2)25億6861万余円(平成25年度)
(3)4億9940万余円(平成25年度)
(4)2億0307万余円(平成25年度)
上記のうち光IP電話を利用した場合に節減できた支払額
(1)1683万円
(2)4945万円
(3)4309万円
(4)3716万円

1 固定電話等の概要

(1)4会社の概要

日本郵政株式会社(以下「日本郵政」という。)、日本郵便株式会社(以下「日本郵便」という。)、株式会社ゆうちょ銀行(以下「ゆうちょ銀行」という。)及び株式会社かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命」という。また、以下、これらの会社を総称して「4会社」という。)は、郵政民営化法(平成17年法律第97号)等に基づいて設立され、日本郵政公社(平成19年10月1日解散)から、それぞれ、同公社の業務その他の機能及び資産等の一部を承継している。このうち、電話加入権については、各施設を承継する会社が承継したとされている。

そして、承継した業務を実施するために、日本郵政は宿泊施設、病院等を、日本郵便は支社、郵便局等を、ゆうちょ銀行はエリア本部、支店、地域センター等を、かんぽ生命はエリア本部、支店、サービスセンター等を、それぞれ設置している(以下、4会社が設置するこれらの宿泊施設等を「局所」という。)。

(2)4会社における固定電話の利用等の概要

4会社は、本社及び局所(以下「局所等」という。)において、顧客へのサービス提供、業務連絡等のために固定電話を利用している。このうち、多くの固定電話を必要とする局所等においては、構内交換機(以下「PBX」という。)を設置していて、民営・分社化以降も引き続き4会社間で建物やPBX等を共同利用している局所等がある。

そして、4会社は、毎月、基本料金、通話料金等で構成される電話料金を、一部を除き、公共料金の支払事務を委託している会社(以下「支払代行会社」という。)を通じて、それぞれ一括して支払っている。この場合、電話会社からの電話料金の請求書は、各局所等内の固定電話を利用する部署(以下「利用部署」という。)に送付されず、直接支払代行会社に送付されており、支払代行会社は、4会社の本社に対して電話料金を支払った回線に関する情報を報告している。

(3)光IP電話の概要

近年、加入電話等の従来型の固定電話に代わって、光ファイバケーブルを使用し、インターネット技術を応用した固定電話(以下「光IP電話」という。)が普及している。加入電話は、1回線で同時に通話することができる外線数(以下「通話チャネル数」という。)が1であるのに対して、光IP電話は、通話チャネル数を数百程度確保することができる。また、光IP電話の料金についてみると、基本料金等の固定料金については、加入電話等の通話チャネル数の合計がおおむね4以上となる事業所等において、加入電話等に比べて一般的に安価になり、通話料金についても、通話先までの距離に関係なく全国一律で市内通話と同額となるサービス(以下「全国一律料金サービス」という。)や同一の回線契約者の事業所等間の通話料金が無料となるサービスが提供されることから、加入電話等に比べて一般的に安価になる。

そして、光IP電話に切り替える手続の際に、電話加入権を有する回線契約者(以下「名義人」という。)が加入電話等について休止又は解約の手続をとることにより、それまで加入電話等で利用していた電話番号を光IP電話で利用(以下「同番移行」という。)することができるなど、光IP電話は顧客の利便性にも配慮されている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、固定電話の利用に当たり、光IP電話への切替えを進めるなどして電話料金の節減が図られているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、25年度に電話料金を支払っている固定電話の回線のうち、日本郵政の87局所等の895回線(同年度の電話料金の支払額計1億0072万余円)、日本郵便の20,203局所等の66,968回線(同45億2705万余円)、ゆうちょ銀行の311局所等の6,756回線(同5億8502万余円)、かんぽ生命の101局所等の1,306回線(同2億0602万余円)、計20,702局所等の計75,925回線を対象として、電話料金の内訳に関するデータの提出を求めるなどして検査するとともに、このうち4会社の計129局所等において、局所等内の電話番号一覧等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

4会社における光IP電話の利用状況についてみたところ、各回線の利用部署及び名義人を把握するための調査等(以下「回線の棚卸し」という。)が十分に行われていないなど、回線の管理が適切に行われていなかったため、多数の回線の名義人が不明なままとなっていて、同番移行に必要な加入電話等の休止又は解約の手続をとることが困難となっていた。このため、一部の局所を除いて光IP電話は利用されていなかった。

しかし、前記20,702局所等のうち、光IP電話に適さない回線を除いた各回線の通話チャネル数の合計が4以上となり、基本料金等の固定料金について光IP電話の方が加入電話等に比べて一般的に安価になる局所等数は、1,839局所等となっていた。また、前記75,925回線の通話料金について距離区分別にみたところ、4会社では、県外通話及び市外通話が当該通話料金全体の38.6%から70.7%を占めており、光IP電話の全国一律料金サービスを利用することにより、通話料金の節減を図ることができると認められた。

このように、4会社において、回線の管理が適切に行われておらず、同番移行に必要な前記の手続をとることが困難となっているなどのため、より経済的な光IP電話への切替えが進んでいない事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(節減できた電話料金の支払額)

前記の1,839局所等について、光IP電話の固定料金及び全国一律料金サービスを利用した場合の通話料金により25年度の電話料金を試算すると、計30億0039万余円となり、同年度の電話料金の支払額計33億6546万余円との差額は3億6506万余円となる。したがって、これに光IP電話の利用開始時に必要となる初期費用2億1851万余円(試算額)を考慮しても、初年度である同年度に支払額を1億4654万余円節減できたと認められた(4会社の内訳はのとおり)。

表 節減できた電話料金の支払額

(単位:局所等、回線、千円)
会社 局所等数 回線数 平成25年度の電話料金の支払額 光IP電話を利用した場合の電話料金(試算額) 差額 初期費用(試算額) 節減額
(A) (B) (C=A-B) (D) (E=C-D)
日本郵政 82 804 94,360 68,235 26,124 9,286 16,837
日本郵便 1,372 23,396 2,568,619 2,359,564 209,055 159,603 49,451
ゆうちょ銀行 286 4,618 499,408 421,402 78,005 34,914 43,091
かんぽ生命 99 1,303 203,075 151,192 51,882 14,715 37,166
計 4会社 1,839 30,121 3,365,462 3,000,395 365,067 218,519 146,547

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、民営・分社化以降、4会社において、建物やPBX等を共同利用している局所等について、4会社が連携して回線の棚卸しを行い、継続的に回線を管理することの重要性の認識が欠けていて、回線の管理を適切に行う体制となっていなかったこと、支払代行会社から4会社の本社に報告される回線に関する情報を本社と利用部署との間で共有していなかったため、利用部署が回線の見直し等を行うことができない状況となっていたこと、光IP電話への切替えを進めるための具体的な検討等を十分に行っていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、4会社は、26年9月までに、次のような処置を講じた。

  • ア 4会社間で合意書を締結して、4会社が連携して回線の棚卸しを行うとともに、定期的な会合を開催することとするなどして、組織変更があった場合でも継続的に回線を管理することができる体制を整備した。
  • イ 回線に関する情報を4会社各社の社内用のポータルサイトに掲載するなどして、本社と利用部署との間で当該情報を共有する体制を整備した。
  • ウ 早期に光IP電話への切替えを進めるための具体的な計画を策定した。