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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
  • 第2節 団体別の検査結果 |
  • 第16 日本司法支援センター |
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

民事法律扶助業務の実施に当たり、被援助者が民事裁判等の相手方から金銭を得ることになっている場合等において、当該金銭を立替金の償還に適切に充当させるための基準等を整備し、立替金の早期かつ確実な償還が行われるよう改善させたもの


科目
(一般勘定) 民事法律扶助立替金
部局等
日本司法支援センター
民事法律扶助業務の概要
民事裁判等の手続において自己の権利を実現するための準備等に必要な費用を支払う資力がない者を援助するために、民事裁判等に関する手続等を行う弁護士及び司法書士に係る費用の立替え等を行うもの
平成24年度に終結決定を行った援助のうち被援助者が免責決定を受けるなどした件数を除き民事裁判等の相手方から金銭を得た被援助者に係る件数及び要償還残高
1,194件 1億1217万余円(平成25年度末)
上記のうち当該金銭を償還に充当させることが可能な件数及び充当額(試算額)
653件 6818万円(平成24、25両年度)

1 民事法律扶助業務の概要等

(1)民事法律扶助業務の概要

日本司法支援センター(以下「センター」という。)は、総合法律支援法(平成16年法律第74号)に基づき、民事裁判や家事調停等の手続において自己の権利を実現するための準備等に必要な費用を支払う資力がない者を援助するために、民事裁判等に関する手続等を行う弁護士及び司法書士(以下「弁護士等」という。)に係る費用の立替え等(以下「民事法律扶助業務」という。)を行っており、平成25年度末の立替金の残高は385億3979万余円となっている。

民事法律扶助業務の立替金は、被援助者からの償還金(以下「償還金収入」という。)や国からの運営費交付金等が原資となっており、償還金収入を将来の立替金の原資にするという相互扶助の見地から、立替金の償還については、民事法律扶助業務の重要な要素であるとされている。そして、25年度における償還金収入は99億5864万余円となっている。

(2)民事法律扶助業務の実施

民事法律扶助業務は、日本司法支援センター業務方法書(平成18年5月法務大臣認可。以下「業務方法書」という。)等に基づいて実施されており、主な手続は次のとおりとなっている。

  • ア 援助を必要とする者は、センターの地方事務所、弁護士等の事務所等で法律相談を受けた後、民事裁判等に関する手続等を行う弁護士等に係る費用の立替え等が必要な場合は援助の申込みを行い、地方事務所法律扶助審査委員(以下「審査委員」という。)は、資力が一定額以下であるなどの援助の要件を満たしている者(以下「被援助者」という。)か否かを審査する。地方事務所長(地方事務所支部長を含む。以下同じ。)は、審査の結果に基づき、被援助者に対して援助の開始と弁護士等に支払う着手金、実費等の額を決定し、センターはその費用を立て替える。被援助者は、当該決定後、原則として、毎月定額で立替金の償還を行う。
  • イ 弁護士等は、民事裁判等の終了後、事件処理の概要、被援助者が事件の相手方等(以下「相手方」という。)から得る金銭等の有無等を記載した終結報告書を地方事務所長に提出する。審査委員は、終結報告書等に基づき、弁護士等に支払う報酬金の額等について審査を行う。地方事務所長は、被援助者から生活状況を聴取するなどした後に、審査委員の審査の結果に基づき援助の終結決定(以下「終結決定」という。)を行い、立替金の総額を確定し、立替金の償還方法等を決定する。

(3)相手方から金銭等を得ている場合の立替金の償還額、償還方法の決定等

地方事務所長は、被援助者が民事裁判等によって相手方から金銭等を得ることがあることから、相手方からの金銭等の取得状況を確認することとなっている。そして、被援助者が相手方から金銭等を得ている場合には、原則として、被援助者は、報酬金の全部又は一部を直接弁護士等に支払い、当該金銭等の額から報酬金の額を差し引いた残額を立替金の償還に充てなければならないこととなっている(以下、この償還を「即時償還」という。)。また、地方事務所長は、被援助者に対して即時償還を求めることが相当でない事情があると認めるときは、当該償還に充当する額を適宜減額することができるが、この場合であっても、扶養料、医療費等のやむを得ない支出を要するなど特別の事情がない限り、即時償還に充当する額は相手方から得た金銭等の額の100分の25を下回ることはできないこととなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、効率性等の観点から、被援助者が相手方から得た金銭を立替金の償還に充当させ立替金の早期かつ確実な償還を図っているかに着眼して、24年度に4地方事務所(注)の地方事務所長が終結決定を行った援助の件数計33,347件のうち、終結決定時に被援助者が自己破産により免責決定を受けたなどの件数を除き、相手方から金銭を得ていた被援助者に係る計1,194件、要償還残高計1億1217万余円(25年度末現在。以下同じ。)を対象として、4地方事務所において終結決定書等を確認するとともに、センター本部において業務方法書の解釈等を聴取するなどして会計実地検査を行った。

(注)
4地方事務所  東京、神奈川、埼玉、千葉各地方事務所

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)終結決定時に相手方から金銭を分割で得ることになっている場合の立替金の償還状況

被援助者が相手方から金銭を分割で得ることになっている場合には、賠償金等を数回に分けて得ることや、養育費等を月額で一定期間得ることがあり、4地方事務所は、被援助者が相手方から金銭を分割で得ることができるかどうか、少なくとも初回の履行状況を弁護士等に確認した上で審査に付するようにしていた。

そして、4地方事務所において、被援助者が相手方から金銭を分割で得ることになっている場合に、終結決定時にいまだ得ていない金銭が立替金の償還に充当されていなかったなどの援助の件数が計565件、要償還残高計7457万余円見受けられた。

これは、センターが、業務方法書上、立替金の償還に充当しなければならないとされている被援助者が相手方から金銭等を得ている場合の金銭を、被援助者が終結決定時までに得ていた金銭としていることなどによる。

しかし、終結決定後に相手方から得ることになっている金銭も、終結決定時までに得ていた金銭と同様に事件の終結の結果として得る金銭であることから、実際に被援助者に金銭が入金された場合には、終結決定時までに金銭を得ていた場合に準じて、立替金の償還に充当させる取扱いとすべきであると認められた。

(2)終結決定時までに相手方から金銭を一括で得ていた場合の立替金の償還状況

4地方事務所において、終結決定時までに被援助者が相手方から金銭を一括で得ていたのに、即時償還を行っていなかった援助の件数が計88件、要償還残高計827万余円見受けられた。

4地方事務所はこれらの終結決定に当たり、被援助者の現在の生活状況等に関する具体的な資料を被援助者から提出させておらず、終結決定書には即時償還を行わない具体的な根拠が記載されていなかった。このため、上記の88件については、即時償還が行われていないことの妥当性が検証できない状況となっていた。

そこで、業務方法書が定める前記の即時償還を求めることが相当でない事情、やむを得ない支出を要するなどの特別の事情について、考慮すべき具体的な基準等をセンター本部に確認したところ、センター本部は、被援助者の生活状況や相手方から得た金銭の額等に応じて、どの程度立替金の償還に充当させるかの具体的な基準等を定めていなかった。また、即時償還を行わなかった根拠を終結決定書等に記載することとしていなかった。

このように、終結決定後に得ることになっている金銭が立替金の償還に充当されていなかった事態並びに償還に充当させる額の基準及び必要な資料の整備について定めがないまま相手方から得た金銭が立替金の償還に充当されていなかった事態は、回収された立替金を将来の立替金の原資にするという相互扶助の見地から、立替金の早期かつ確実な償還を図る上で適切ではなく、改善の必要があると認められた。

前記の被援助者が相手方から金銭を分割で得ることになっている565件及び金銭を一括で得ていた88件、計653件、要償還残高計8285万余円について、24年度から25年度までの間に、被援助者が相手方から民事裁判等で確定したとおりに金銭を得たとして、当該金銭の100分の25を立替金の償還に充当させるなどした場合、償還金の額は計6818万余円と試算される。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、センターにおいて、被援助者が相手方から得た金銭を立替金の償還に充当させることについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、センターは、立替金の早期かつ確実な償還が行われるよう、26年9月に各地方事務所に通知を発して次のような処置を講じ、同年12月に開始決定を行う援助から適用することとした。

  • ア 被援助者が相手方から得た金銭を立替金の償還に充当させる場合の基準等を整備して、地方事務所長が終結決定を行う際に、新たに被援助者の収入金額、最低生活費等を考慮した金額を算出し、当該金額に応じて償還に充当させる額及び償還方法を決定することとした。
  • イ 地方事務所は、終結決定時に被援助者の生活状況を把握するとともに、把握した被援助者の生活状況及び終結決定時に考慮した事情について記録することとした。