全国健康保険協会(以下「協会」という。)は、40歳から74歳までの医療保険加入者に対して糖尿病等の生活習慣病に着目した特定保健指導を行う業務(以下「指導業務」という。)を実施している。
協会は、指導業務や指導データの管理等の効率化を図ることを目的として保健指導支援システムを整備しており、各都道府県に設置している支部において指導業務に従事している保健師及び管理栄養士(以下「保健師等」という。)に対して、各支部からの申請に基づいて、同システム用の端末(以下「指導用端末」という。)として、ノート型パーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)と通信カード(以下「カード」といい、PCとカードを合わせて「PC等」という。)とを組み合わせて1セットずつ貸与している。そして、保健師等は、それぞれ貸与された指導用端末を携行して事業所に赴くなどして、医療保険加入者に対して、個別に特定保健指導を実施するなどしている。
協会は、平成21年11月にPC等613セット(うち1セットについては東日本大震災で被災したため、後に契約解除。リース期間22年2月から25年3月まで)、及び22年4月にPC等125セット(リース期間同年5月から25年3月まで)について、KDDI株式会社及びNTTファイナンス株式会社との間で、リース契約を締結して調達している。
また、協会は、23年10月、保健師等の増員計画等に対応するために、PC80台を新たに調達することにして、富士電機ITソリューション株式会社及び東京センチュリーリース株式会社との間で、リース期間を同年11月から25年3月までとするリース契約を締結して調達している。そして、カードについては、21年11月にKDDI株式会社及びNTTファイナンス株式会社との間で締結した上記のリース契約に80個を追加することにして、23年10月に、PC等612セット及びカード80個について変更契約(カード80個のリース期間同年11月から25年3月まで)を締結している。
さらに、協会は、25年4月に、富士電機ITソリューション株式会社及び東京センチュリーリース株式会社との間でPC80台について、リース期間を同月から27年2月までとする再リース契約を締結し、また、KDDI株式会社及びNTTファイナンス株式会社との間でPC等737セット及びカード80個について、リース期間を25年4月から27年2月までとする再リース契約を締結している。
協会は、保健指導支援システムを利用するために、22年4月及び8月に、株式会社日立製作所及び日立キャピタル株式会社との間で、「保健指導支援システムの賃貸借及び関連するサービスに関する契約」を締結し、保健指導支援システムを使用する権利、データ転送サービス等の各種サービスの提供及びこれらのサービスに係るプログラムのサポートに対する対価として、PC1台につき月額14,742円(26年4月からは15,163円)のサービス使用料(以下「使用料」という。)を支払っている。
協会は、保健師等が使用するPCと保健指導支援システムとの間で指導データ等の送受信を行うために、22年1月にKDDI株式会社との間で通信サービス契約を締結し、同年4月からカード1個につき月額2,352円(26年4月からは2,419円)の基本使用料及びパケット通信料(以下「通信料」という。)を支払っている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性等の観点から、指導用端末に係る各契約の支払額は実際の使用状況に応じた適切なものとなっているかなどに着眼して、指導用端末のリース契約等8契約に係る支払額計8億3270万余円(うち、23年11月に調達したPC80台及びカード80個に係る同月から26年6月までの間の使用料計3666万余円、賃借料計1157万余円、通信料計603万余円、使用料等合計5427万余円)を対象として、協会本部において、契約書、PC等の管理記録等の内容を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
協会は、23年9月に、指導業務に従事している保健師等の数を750名とし、これに新たに23年度中に55名を増員して805名にする計画を策定し、この増員分に、故障等に対応するために必要なPC等の数量を考慮して、前記のとおり、同年11月に指導用端末としてPC80台及びカード80個を一括して調達していた。そして、これにより、同月には、協会が保有するPC等は、既調達分の737セットと合わせて817セットとなった。
増員計画の策定前の23年7月から増員計画の策定後の同年11月までの間の保健師等の現員数をみると、754名から761名の間で推移していた。また、新規にPC等を調達した直後の同年12月から26年6月までの間の保健師等の現員数についてみると、前記の増員計画どおりに805名の保健師等を確保することができず、744名から774名の間で推移していた。そして、協会が保有する817セットのうち、同期間に故障等への対応のため代替機として貸与されたPC等を含め保健師等に貸与されるなどしていたPC等の最大数は774セットとなっており、その結果協会本部において保管されたままとなっていたPC等は43セットとなっていた。
以上のことから、23年11月から26年6月までの間において、故障等に対応するために代替機として貸与されるなどしたPC等を考慮しても少なくとも43セット分のPC等が常時保管され使用されていない状況となっていた。
しかし、協会は、このような状況であるにもかかわらず、これらの43セット分について、23年11月から26年6月までの間に、使用料及び通信料計2295万余円を支払っていた。
さらに、協会は、PC等の台数等の見直しを行うことなく25年4月に再リース契約を締結したため、同月から26年6月までの間に協会本部において保管されたままとなっていたPC等43セット分に係る賃借料計60万余円を支払っていた。
このように、PC等の実際の貸与数等を考慮することなく、保管されたままとなっているPC等について、使用料及び通信料を支払っていたり、再リース契約を締結して賃借料を支払っていたりしている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(節減できた使用料等)
23年11月に調達したPC等80セットについて、PC等の実際の貸与数等を考慮して使用料及び通信料を支払うこととし、かつ、再リース契約の締結に際して台数等の見直しを行っていたとすれば、PC等43セット分に係る使用料等を計2355万円節減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、協会において、保健師等の実際の採用に併せて、順次、使用料及び通信料の対象とするPC等の台数等を見直したり、相当期間にわたって常時保管され保健師等に貸与されていない状況となっているPC等について、将来の使用見込みに基づいて保有する台数等を見直したりすることなどについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、協会は、26年8月及び9月に、指導用端末に関して、次のような処置を講じた。