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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果|第2節 団体別の検査結果|第18 日本年金機構|不当事項|役務

年金情報総合管理・照合システム(紙台帳検索システム)で使用する事務処理用の端末等について使用開始前に必要なソフトウェアのインストール等を行うキッティング作業等に係る委託契約において、キッティング作業を終えた端末等の保管場所の面積を誤ったため、契約額が過大となっていたもの[日本年金機構本部](384)


科目
業務経費
部局等
日本年金機構本部
契約名
年金情報総合管理・照合システム(紙台帳検索システム)に係る事務処理端末キッティング作業・設置工事
委託契約の概要
年金情報総合管理・照合システム(紙台帳検索システム)で使用する事務処理用の端末等について使用開始前に必要なソフトウェアのインストール等を行うキッティング作業を行わせた上で端末等を設置させるもの
契約の相手方
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
契約
平成22年4月 随意契約
契約額
468,607,429円(平成22年8月変更後)
過大となっていた契約額
5,642,910円

1 委託契約の概要

日本年金機構(以下「機構」という。)は、紙台帳により管理されてきた年金記録と、システム上に電子データとして管理されている年金記録とを突き合わせる作業(以下「突合せ作業」という。)を効率的に行うことを目的として、平成22年4月、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下「NTTデータ」という。)との間で「年金情報総合管理・照合システム(紙台帳検索システム)に係る事務処理端末キッティング作業・設置工事」に係る委託契約を随意契約により449,975,809円で締結している。

本件委託契約によれば、NTTデータは、突合せ作業を行うために機構が構築した年金情報総合管理・照合システム(紙台帳検索システム)において使用する事務処理用の端末(7,081台)及びプリンタ(1,300台)(以下「端末等」という。)について、キッティング作業(注)を行った上で突合せ作業の拠点に端末等を設置する業務を行うこととされている。そして、上記の契約額は、キッティング作業に要する経費、キッティング作業を終えた端末等の保管場所に要する経費、端末等の設置に要する経費の合計となっている。また、本件委託契約の仕様書によれば、委託する業務の具体的な条件の一部については受託後に決定される場合があり、条件が変更となる場合には、NTTデータと機構で協議するものとされている。

機構は、本件委託契約の契約期間について、突合せ作業の本格的な開始を予定していた22年10月までに端末等の設置を完了させる必要があることから、同年4月8日から同年10月31日までとしていた。しかし、突合せ作業を委託する業者の決定が予定より遅れたことに伴って、突合せ作業の拠点の設置が予定よりも遅れることになったことから、同年8月に、本件委託契約の契約期間を同年12月31日まで延長するとともに、契約額を468,607,429円に増額する変更を行っていた。

なお、契約額を増額したのは、契約期間の延長に伴って、端末等の保管場所を継続して確保するためであり、キッティング作業及び端末等の設置によるものではない。

(注)
キッティング作業  情報システムの新規導入や事務室の開設等に際して、端末、周辺機器等の組立て、必要となるソフトウェア等のインストール、各種の設定等を行う導入作業

2 検査の結果

本院は、経済性等の観点から、契約額の算定が適切なものとなっているかなどに着眼して、本件委託契約を対象として、機構本部において、契約書等の関係書類の内容を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

機構は、本件委託契約の締結に当たり、端末等の想定される大きさなどから、端末等を保管するために必要な保管場所の面積(以下「保管面積」という。)を1か月当たり720坪(ただし、8月は端末等が設置のために搬出されて保管面積が減少するため331坪)として、5月から8月までの間の総保管面積を延べ2,491坪とし、これに1坪当たりの月額単価(以下「単価」という。)を乗ずるなどして保管場所に係る経費を27,724,830円とするなどして、前記の当初の契約額449,975,809円を算定していた。

上記の契約締結後、機構は、実際に納品された端末等の大きさなどに基づいて、保管面積を1か月当たり551坪(ただし、11月及び12月は同176坪)として、5月から12月までの間の総保管面積を延べ3,658坪とした上で、契約期間を12月末まで延長することに伴って追加する必要が生じる8月から12月までの間の保管面積を1,674坪であるとしていた。そして、この1,674坪に単価を乗ずるなどして算定した18,631,620円を新たに必要となる保管面積に係る経費として、当初の契約額に加算した468,607,429円で変更契約を締結していた。

しかし、機構は、のとおり、当初の契約額の算定に当たり、前記のとおり、1か月当たりの保管面積を720坪とするなどして総保管面積を延べ2,491坪としていたのに、契約変更に当たって、当初の契約額に、追加する必要が生じたとしていた1,674坪に対応する経費を加算したことから、変更後の契約額における保管面積は合計で延べ4,165坪となり、機構が1か月当たりの保管面積を551坪とするなどして算定した上記の契約変更後の総保管面積延べ3,658坪に対して、507坪過大となっていると認められた。そして、機構は、契約期間を延長する変更契約を締結する際に、1か月当たりの保管面積を当初想定していた720坪から551坪に条件を変更したことをNTTデータと協議していなかった。

表 総保管面積及び追加面積の算定

(単位:坪)
区分 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
当初契約における総保管面積 720 720 720 331 2,491
追加面積 0 0 0 220 551 551 176 176 1,674

(変更後の契約額における保管面積)
(a)
720 720 720 551 551 551 176 176 4,165
1か月当たりの保管面積を551坪とするなどした場合の総保管面積(b) 551 551 551 551 551 551 176 176 3,658
(a)-(b) 507

したがって、適切な保管面積により契約額を算定すると、契約額468,607,429円は462,964,519円となることから、5,642,910円が過大となっていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、機構において、契約の変更に当たり、契約額を算定する際に用いた当初の保管面積の取扱いについての検討が十分でなかったことなどによると認められる。