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  • 平成25年度 |
  • 第3章 個別の検査結果 |
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  • 第19 独立行政法人国立科学博物館、第20 独立行政法人労働安全衛生総合研究所、第21 独立行政法人海上技術安全研究所、第22 独立行政法人海技教育機構、第23 独立行政法人日本スポーツ振興センター、第24 独立行政法人日本芸術文化振興会 |
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(1)―(6) 電気及びガスの調達契約を締結するに当たり、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、一般競争に付するなどの協定等に基づく契約手続を実施することにより、内外無差別原則の確立と手続の透明性等を確保するよう是正改善の処置を求めたもの


部局等
(1)独立行政法人国立科学博物館本部
(2)独立行政法人労働安全衛生総合研究所本部
(3)独立行政法人海上技術安全研究所本部
(4)独立行政法人海技教育機構海技大学校
(5)独立行政法人日本スポーツ振興センター本部
(6)独立行政法人日本芸術文化振興会本部
科目
(1)経常費用 博物館業務費、受託研究費、博物館業務経費、博物館受託研究経費、水道光熱費
(2)(一般勘定) 経常費用 一般管理費
(社会復帰促進等事業勘定) 経常費用 研究業務費、一般管理費
(3)経常費用 研究業務費、一般管理費
(4)経常費用 業務費、一般管理費
(5)(一般勘定) 経常費用 業務経費、一般管理費
(投票勘定) 経常費用 業務経費、一般管理費
(6)経常費用 国立劇場公演等事業費、基金助成事業費、一般管理費 水道光熱費
契約の概要
事務所、施設等で使用する電気及びガスの調達を行うもの
件数及び支払額
(1)ガス 2件 3302万円(平成24、25両年度)
(2)ガス 2件 2699万円(平成24、25両年度)
(3)電気 2件 2億5579万円(平成24、25両年度)
(4)電気 2件 2168万円(平成24、25両年度)
(5)電気 2件 4億9967万円(平成24年度)
ガス 6件 2億9065万円(平成24、25両年度)
計 8件 7億9033万円
(6)ガス 2件 3080万円(平成24、25両年度)

本院は、政府出資が行われている株式会社、独立行政法人等が締結している特定調達に係る電気及びガスの契約の状況について、検査対象機関の絞り込みを行った上で、35機関(注1)において会計実地検査を行った。

(注1)
35機関  株式会社日本政策金融公庫、日本中央競馬会、東京地下鉄株式会社、成田国際空港株式会社、日本年金機構、独立行政法人国立女性教育会館、独立行政法人国立科学博物館、独立行政法人物質・材料研究機構、独立行政法人労働安全衛生総合研究所、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構、独立行政法人森林総合研究所、独立行政法人水産総合研究センター、独立行政法人産業技術総合研究所、独立行政法人海上技術安全研究所、独立行政法人港湾空港技術研究所、独立行政法人海技教育機構、独立行政法人国立環境研究所、独立行政法人教員研修センター、独立行政法人造幣局、独立行政法人日本スポーツ振興センター、独立行政法人日本芸術文化振興会、北海道大学、東北大学、東京大学、東京医科歯科大学、東京工業大学、金沢大学、大阪大学、九州大学の各国立大学法人、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構、放送大学学園、日本たばこ産業株式会社、北海道、四国、九州各旅客鉄道株式会社

その結果、平成26年10月30日に、日本中央競馬会、成田国際空港株式会社、日本年金機構、独立行政法人国立科学博物館、独立行政法人労働安全衛生総合研究所、独立行政法人海上技術安全研究所、独立行政法人海技教育機構、独立行政法人日本スポーツ振興センター及び独立行政法人日本芸術文化振興会(以下、これらの機関を合わせて「9機関」という。)のそれぞれの長に対して、各機関の事態に応じ「特定調達に係る電気及びガスの契約事務の実施について」、「特定調達に係る電気の契約事務の実施について」又は「特定調達に係るガスの契約事務の実施について」として、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した。

なお、上記のほか、独立行政法人造幣局及び放送大学学園における特定調達に係る電気及びガスの契約事務の実施について、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項がある(本院の指摘及び独立行政法人造幣局が講じた処置の内容については、0821リンク参照の「ガスの調達契約を締結するに当たり、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、一般競争に付するなどの協定等に基づく契約手続を実施することにより、内外無差別原則の確立と手続の透明性等を確保するよう改善させたもの」、また、本院の指摘及び放送大学学園が講じた処置の内容については、0953リンク参照の「電気及びガスの調達契約を締結するに当たり、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、一般競争に付するなどの協定等に基づく契約手続を実施することにより、内外無差別原則の確立と手続の透明性等を確保するよう改善させたもの」をそれぞれ参照)。

前記の是正改善の処置を求めたものの内容は、9機関のそれぞれの検査結果に応じたものとなっているが、このうち、独立行政法人国立科学博物館、独立行政法人労働安全衛生総合研究所、独立行政法人海上技術安全研究所、独立行政法人海技教育機構、独立行政法人日本スポーツ振興センター及び独立行政法人日本芸術文化振興会(以下、これらの機関を合わせて「6機関」という。)のそれぞれの長に対するものの内容を総括的に示すと以下のとおりである。

1 特定調達に係る契約手続の概要等

(1)6機関における契約事務等の概要

6機関は、各種業務の実施の際に生ずる各般の需要を満たすために、売買、貸借、請負その他の契約を多数締結しており、これらの契約の締結に当たっては、6機関が定めた会計規程、契約規程等の内部規程等に基づいて契約事務を実施している。

そして、6機関は、上記契約事務の一環として、これらが保有する事務所、施設等で使用する電気及びガスの調達契約に係る事務を行っている。

(2)電気及びガスの小売市場の自由化

近年、我が国の電気及びガスの小売市場は自由化が進められている。このうち、電気については、16年4月に、契約電力が原則として500kW以上の使用者は、一般の需要に応じて電気を供給する事業者(以下「一般電気事業者」という。)以外の事業者からも供給を受けられるようになり、17年4月に、このような取扱いが、契約電力が原則として50kW以上の使用者まで拡大されている。また、ガスについては、19年4月に、年間ガス使用量が10万m3以上の使用者は、一般の需要者に導管を敷設してガスを供給する事業者(以下「一般ガス事業者」という。)以外の事業者からも供給を受けられるようになっている。このように、電気及びガスについては、制度上、国内外の事業者が広く小売市場に参入できるような状況となっている。

(3)政府調達に関する協定等の概要

政府調達に関する協定(平成7年条約第23号(平成26年条約第4号による改正前のもの)。以下「協定」という。)は、世界貿易機関(WTO)の下で運用されている協定の一つで、各加盟国の中央政府、地方政府及び協定が定める機関による調達の分野における、国内外のいかなる事業者でも参入を可能なものとする内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保を目的として、各国が遵守すべき調達手続上の義務等を規定している。そして、我が国政府は、調達手続を更に透明性、公正性及び競争性の高いものとするなどのために、「物品に係る政府調達手続について(運用指針)」(平成6年アクション・プログラム実行推進委員会)等を我が国の自主的措置として決定している(以下、協定及び我が国の自主的措置を合わせて「協定等」という。)。

協定等の対象となる機関が、協定等の対象となる調達契約を締結する場合には、内部規程等に加えて、協定等に基づき事務を行う必要がある。

(4)協定等の適用対象

ア 適用対象となる機関

協定によれば、適用対象となる機関は、中央政府の機関、地方政府の機関及びその他の機関に区分され、それぞれ具体的な機関名が明示されていて、6機関は、その他の機関の区分に記載されており、協定の適用対象とされている。

イ 適用対象となる調達

(ア)適用対象となる調達の概要

協定によれば、産品及びサービスの調達が適用対象とされている。このうち、産品については、全ての産品の調達を適用対象とすることとされていて、適用対象となる産品の品目は具体的に示されていないが、協定その他の国際約束を実施するために制定された「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令」(昭和55年政令第300号)においても、現金及び有価証券を除く動産等の調達が適用対象とされており、電気及びガスについては適用対象となる産品の例外ではないとされている。

(イ)適用対象となる調達額

協定等によれば、機関の区分、調達する産品及びサービス、契約締結時期等ごとに、それぞれ基準額が定められており、当該基準額以上の価額の産品及びサービスの調達契約が協定等の適用対象とされている。そして、例えば、24年4月1日から26年3月31日までの間に締結される産品の調達契約については、評価の基礎となる額(予定価格等)が10万SDR(注2)(邦貨換算額は1200万円)以上の場合が協定等の適用対象とされている(以下、協定等の適用対象となる調達を「特定調達」という。)。

(注2)
SDR  IMF(国際通貨基金)の特別引出権(Special Drawing Rights)。その邦貨換算額は2年ごとに見直されている。

(5)特定調達に係る契約手続

協定の適用対象となる機関は、特定調達を行うに当たり、協定等に基づき、原則として一般競争に付することとなっており、緊急の必要により競争に付することができないなどの場合に限って随意契約によることができることとなっている。そして、一般競争に付する際には、協定等で定める公告期間を設け、また、契約期間等に関する情報等を官報に公告することとなっており、随意契約の際には、契約前に契約相手方等を官報に公示することとなっている。さらに、いずれの場合も、契約の相手方を決定したときは、契約の相手方、契約額等を官報で公示することとなっている。

そして、特定調達を行うに当たり、6機関においては、協定等を遵守した契約事務を行うために、特定調達手続に関する規程等(以下「特定調達手続規程等」という。)を定めている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、従来、特定調達に係る検査を行い、特定調達に該当する調達契約を締結しているにもかかわらず、協定等に基づいた契約手続を実施していないなど適切でない事態について検査報告に掲記している。また、前記のとおり、近年、我が国の電気及びガスの小売市場は自由化が進められている。

そこで、本院は、合規性等の観点から、6機関が電気及びガスの調達契約の事務を行うに当たり、特定調達に係る契約手続を適正かつ適切に実施しているかに着眼して、24、25両年度に締結するなどした電気及びガスの調達契約を対象として、6機関の本部等において、入札書、契約書、請求書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、調書の作成及び提出を求めるなどして検査した。

(検査の結果)

検査したところ、6機関において、24、25両年度に締結するなどした電気及びガスの調達契約は、電気について計15件(支払額計11億7084万余円)、ガスについて計19件(支払額計3億9533万余円)、合計34件(支払額計15億6617万余円)となっていた。そして、これら34件の中には、当該契約に係る支払額が基準額である1200万円以上のものが、電気について計13件(支払額計11億5977万余円)、ガスについて計12件(支払額計3億8147万余円)、合計25件(支払額計15億4124万余円)見受けられた。しかし、6機関は、これらの調達契約のうち電気について計6件(支払額計7億7716万余円)、ガスについて計12件(支払額計3億8147万余円)、合計18件(支払額計11億5863万余円)について、当該契約の評価の基礎となる額を算定する際に用いる前年度(23年度又は24年度)の電気料金又はガス料金の支払額が基準額である1200万円を上回っているにもかかわらず、特定調達に係る契約手続を実施していなかった(参照)。

表 特定調達に係る契約手続を実施していなかったもの

(単位:件、千円)
機関名 品目 平成24年度契約分 25年度契約分
契約件数 支払額 契約件数 支払額 契約件数 支払額
独立行政法人国立科学博物館 電気
ガス 1 29,813 1 3,206 2 33,020
1 29,813 1 3,206 2 33,020
独立行政法人労働安全衛生総合研究所 電気
ガス 1 26,992 1 2 26,992
1 26,992 1 2 26,992
独立行政法人海上技術安全研究所 電気 1 126,726 1 129,071 2 255,797
ガス
1 126,726 1 129,071 2 255,797
独立行政法人海技教育機構 電気 1 20,343 1 1,343 2 21,687
ガス
1 20,343 1 1,343 2 21,687
独立行政法人日本スポーツ振興センター 電気 2 499,678 2 499,678
ガス 3 149,758 3 140,897 6 290,656
5 649,436 3 140,897 8 790,334
独立行政法人日本芸術文化振興会 電気
ガス 1 21,452 1 9,350 2 30,802
1 21,452 1 9,350 2 30,802
合計 電気 4 646,748 2 130,414 6 777,163
ガス 6 228,016 6 153,455 12 381,471
10 874,764 8 283,869 18 1,158,634
(注1)
平成25年度分の支払額は、26年5月までの分を集計している。これは、25年度分の契約の履行期間が、25、26両年度の2か年度にわたっているものを含むためである。
(注2)
独立行政法人労働安全衛生総合研究所の平成25年度分は、26年5月までに支払が発生していない。

上記の事態について、ガスにおける支払額が多額となっている機関の事例を示すと次のとおりである。

<事例>

独立行政法人日本スポーツ振興センター本部は、施設等で使用するガスについて、随意契約により調達しており、平成24、25両年度の前年度分の履行期間に係るガス料金の支払額は、いずれも基準額である1200万円以上となっていた。

しかし、同センター本部は、小売市場で自由化の対象となっているガスの調達契約については一般競争入札に付するべきものであり、かつ、特定調達の要件を満たしていたにもかかわらず、24、25両年度において、特定調達に係る契約手続を実施せずに随意契約を更新していて、計2億9065万余円を支払っていた。

(是正改善を必要とする事態)

6機関における電気及びガスの調達契約について、特定調達の対象となる要件を満たしているにもかかわらず、一般競争に付するなどの特定調達に係る契約手続が実施されていない事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、6機関において、電気及びガスの調達に際し、電気については、競争入札に付すると従前適用されていた一般電気事業者の料金種別が変更されるなどして契約額が割高になる可能性があると考えていること、供給可能な事業者に対して独自の調査を実施し、その結果から応札業者がいないと考えていること、ガスの供給が可能な事業者は1者のみであると考えていることなどにもよるが、次のことなどによると認められる。

  • ア 6機関において、電気及びガスの調達契約に関し、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保という協定の趣旨を踏まえて、特定調達に係る契約手続を協定等及び特定調達手続規程等に基づいて実施することの重要性に対する理解が十分でないこと
  • イ 4機関(注3)において、ガスの小売市場の自由化が進展したことにより一般ガス事業者以外の国内外の事業者による新規参入が可能な制度になっていることの理解が十分でないこと
(注3)
4機関  独立行政法人国立科学博物館、独立行政法人労働安全衛生総合研究所、独立行政法人日本スポーツ振興センター、独立行政法人日本芸術文化振興会

3 本院が求める是正改善の処置

6機関においては、今後も引き続き電気及びガスの調達契約を締結していくことが見込まれている。一方、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保という協定の趣旨を踏まえて、特定調達に係る契約手続を協定等及び特定調達手続規程等に基づいて実施していくことが引き続き求められている。

ついては、6機関において、協定の趣旨を十分に理解した上で、これを関係部局に周知徹底し、電気及びガスの調達契約について、特定調達の対象となる要件を満たす場合には、特定調達に係る契約手続を協定等及び特定調達手続規程等に基づいて実施するよう、是正改善の処置を求める。